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第14話

 俺が悪狼(ワーグ)の死体を埋め戻し終わった時には、暗い雲が空に広がっていた。今にも雨が降りそうだ。

「風の流れから、雲はこちらまでは来ないだろう。降る前に山にはたどり着けるさ」 

 空を見ながら、ハンスは言う。

『うんうん、あめはまだふらないよー』

『ふるのは、よるだよー』

『まだだいじょーぶ』

 クーたちも太鼓判を押した。さすが、狩人歴の長いハンスだ。


「では、進むとするか」

 カランの号令の下、俺たちは再度出発する。森の更に奥へ進み、山への続く道なき道をゆく。

 だが、すぐに森の様子が変わってきた。

 倒木や立ち枯れた木々が増えてきている。そして、あれだけたくさんいた木々の精霊の気配が遠くなる。


 なんだこれ?


『ヨウヘイ様』

 ムギが眉を潜めながら俺に告げる。

『私が、この姿のままお供できるのはここまでです。ここから先は、精霊の力が弱まっております』

『十分に気をつけよ、ヨーヘイ殿』

 ムギとミーズの姿がふっと消えた。

「……お前の土と水の精霊、消えたか?」

 二体が消えたことに、ルイも気付いたようだ。

「うん、二体とも村の精霊だから、ここまでだって」

 と、ルイがジト目でこちらを見る。

「……まさかとは思うが、依り代はちゃんと持ってきてるだろうな?」

「大丈夫。ここにある」

 俺はポケットと腰の水筒を叩く。

「やれやれ、精霊使いとして、それぐらいの常識はあったか……」

 思いっきり馬鹿にされてる感じがあるが、昨晩ムギに教えられるまで依り代のことを知らなかった身としては、何も言えない……


「ところで、ルイはどんな精霊と契約してるんだ?」

 俺がなんの気なしに聞いた言葉に、ルイがにやりと笑う。

 あ、これずっと聞いてほしかったのか。

「俺は、北方ガデフ山脈において見出した、冬の精霊と契約している。位階は四位を認定されている」

 そういいながら右手を出して、中指にはめた指輪を誇示する。中央に白い石がはまっているが、あれが依り代なのだろうか?

 位階が四位ってことは、7段階の真ん中。そして、さっきの話だと、ムギよりも強いってことか!

 むむむ、ちょっと悔しい。だが、その分精霊喰いとの戦闘では有利になりそうなのは、ありがたい。素直に尊敬の視線を向けておこう。

「ふふん」

 ちょっと、ルイは得意げだった。


 そしてさらに進み、大地がやや上り勾配になり始めて山の斜面が見え始めた頃になると、周囲は枯れた木々がまばらに生えるばかりになっていた。

「いつの間にこんな……去年来た時にゃ、ここまで禿山じゃぁなかったぞ」

 ハンスが驚いた声を上げる。

「“精霊喰い”の影響だ。力が飛躍的に強まって、山に宿る土や木々の精霊を根こそぎ喰らっているんだろう。この規模、二位や三位じゃないぞ……」

 ルイも愕然とした顔であたりを見つめている。

(クーたち、“精霊喰い”がどこにいるか、わかる?)

『……わかんない、なんだか、こわいー』

『ほかのせいれいのこえ、きこえない……』

『しずかすぎて、いや……』

 俺の問いかけに応じるものの、クーたちも怯えているようだ。

(クロマルはどうだ?)

『きけんなかんじ、どんどんつよくなってる……やばいかも……』

 クロマルも怯えているようだが、察知能力は機能しているようだ。不意打ちは避けられそうだ。

 カランが剣を抜きながら言った。

「……予想より危険な状況のようだ。警戒しながら前進し、少しでも相手の情報を集める。そのうえで、私が手に負えないと判断したら、即時撤退する。いいな?」

 ルイ、ハンス、そして俺。3人とも、無言でうなずいた。


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