誕生日
フレーズ→苺
ミルティーユ→ブルーベリー
異世界転生に気づいて早3日過ぎ、今日はとうとう私の誕生日の日だ。
朝から周りの人達がバタバタと忙しなく動き、良く側にいてくれるメイドのリーシャンも今日は朝からドレスの用意にヘアメイク、食べる物から私の行動範囲までも制限したり調整したりとしていた。
かくいう私もアイリスになってから初めての誕生日なので内心ワクワクを隠せない。
貴族の誕生日とはどんなもので何をもらえるのだろうか。
なるべく自室で大人しくしていようと思うも何もないのに立ち上がったり部屋のなかをうろうろ歩いたり窓の外を見たりとリーシャンに笑われてしまう。
お昼になって大人達全員忙しかったのが落ち着いてきたのか祖母が部屋に来て相手をしてくれることになった。
リーシャンに頼み紙とペンを持ってきてもらいお婆様と絵を描いたり(ここで前世の時と同じく苦手なのが発覚!動物のデフォルメはまあまあ)、折り紙(この世界にはないようで2人に教えたり)したり、お昼寝の絵本を読んでもらったりした。
3時頃に目を覚ますと丁度良いタイミングだったようで、リーシャンにより普段とは違うドレスを着せてもらいヘアメイクもしてもらった。
水色の鮮やかなレースの可愛い胸元と裾に刺繍の入ったプリンセスドレスでシニョンだ。更にシルバーのリボンを付けてくれている。
「かわいいー!」
写真に撮って残して置きたいぐらい。
「渾身の出来です~。アイリスお嬢様は髪がさらさらすぎるから頑張りました~。」
「ありあとー、リーシャン。」
思わず抱きつきながら礼を言う。
前の時は髪を短くしていたので憧れだったことも今の私には分かるので嬉しさ倍増だ。
リーシャンに肩を叩かれ離すとそろそろ移動しようと言われ部屋から出る。
目が覚めた時には祖母はいなかったが珍しく会場の部屋である小広間まで誰にも会わなかった。
小広間に着くとリーシャンが扉を開けてくれた。
煌びやかな小広間の中には家族含め使用人達が勢揃いしていた。
「ハッピーバースデー!アイリス!!」
両親、祖父母が声を揃えて言ってくれる。
「お誕生日おめでとうございます!アイリスお嬢様。」
使用人達もそれに続いて祝ってくれる。
「……わぁっ。すごい!みんないるの?」
「勿論よ。可愛い娘のお誕生日だもの。」
「さあ、今日はお祝いだ。アイリス、名一杯楽しみなさい。」
そう言う父と母に手を引かれテーブルに並ぶ豪勢な食事を目の前にする。
野菜沢山のサラダ、フルーツサラダ、カルパッチョ、コンソメスープにミネストローネにクラムチャウダー、カレー、パエリアにピラフ、チキンドリア、シーフードドリア、ハンバーグ、エビフライ、唐揚げとサラダやスープ、米料理に肉料理に魚料理と様々な食事がビュッフェ形式で用意されていた。
その中からフルーツサラダ、カルパッチョ、ドリア、エビフライ等好きな物を少量ずつお願いしてテーブルに運んでもらい食べる。
「たくさんつくってくれてありあとーございましゅ。いただきまーす。」
皆に礼を言い早速と一口食べると口の中一杯に味が広がり食感の良い具材を噛む。
1皿食べ終えると母からクリームコロッケが美味しかったと教えてもらい今度はクリームコロッケを取ろうと思いながは向かうと祖父がいた。
「楽しんでるかい?」
「うん!たのしーしおいしーよ。」
「そうかそうか、それなら良かった。このローストビーフピザも美味しいぞ。」
「ならそれもたべるー!」
祖父にもオススメを教えてもらい食べることにする。
使用人達も立ってではあるが軽く摘みながら大人達と話しており楽しそうだ。
たまには身分等関係ないこういったものもアリだろう。
デザートもあるという言葉にお腹いっぱい食べそうなのを頑張って我慢し、普段あまり話せない料理人さんや庭師さん、厩務員さん達にうろちょろと近づいては挨拶をする。
料理人さんにはいつも美味しいご飯やおやつをありがとう、と。庭師さんにもいつも綺麗にしてくれてありがとう、今度お花の名前教えてね、と。厩務員さんにはどうやら大人達全員1頭ずつ馬を持ってるようで、乗りたい!と言うと父と今度乗れることになった。
そうこうしているとあっという間に時間がすぎるもので。母に連れられ椅子に座ると電気が消え、扉の奥から蝋燭に火が灯ったケーキが運ばれてきた。
勿論全員からの誕生日ソングもついて。
「さあ、アイリスちゃん。火を消してちょうだい。」
「うん!いくよー。」
祖母に促され息を吸いおもいっきり火を消す。
うまく全部消えると電気がつき皆が拍手してくれる。
「ねねっ。このぶぶんたべたい!」
照れてるのを誤魔化すようにおねだりすると料理長が見事に切り分けてくれ口一杯に頬張る。
キメの細かいふわふわでほんのりと甘いスポンジに滑らかな少しトロッとした甘いクリーム、間に挟んであるフレーズが甘酸っぱく、上に乗っているミルティーユとフランボワーズが甘さを増してくる。
ケーキを満足するまで食べ他のスイーツ(ゼリーを始め焼き菓子や半生菓子等沢山あった)を少しずつ食べお腹一杯になったところで何かを忘れていることに気づいた。
そしてその疑問にに大人達は敏感に動く。
「さて。そろそろ良い頃合いだね。」
「そうねぇ。それじゃあ先ずは私からね。」
そう言い祖母か近づいてくると一人のメイドもその後ろから寄ってくる。
「アイリスちゃん。改めたおめでとう。これがお婆様からのプレゼントよ。」
赤と黄色でラッピングされた自分程の大きさのしかし特に重くもない物を手渡してくれる。
「ありあとう、おばあさま。」
開けていいという意思も受け取りリボンをほどくと中には大きいクマのぬいぐるみが入ってあった。
ふわふわで目の色が私と同じ鮮やかな夜色で首もとのリボンは赤にネイビーの刺繍が入ったものだ。
「次は私ね。アイリスおめでとう。」
そう言って渡されたのは少し大きめなラッピングされた箱だ。丁寧に包装を破らないように開けると中には透明の球体が入っていた。
恐る恐る触ってみるとポヨンとしており取り出してもサッカーボールぐらいの大きさで風船のような軽さである。
「これはキャラバルというのよ。魔力を通すとその人の得意な魔法の色に変わるしイメージすると中に魔法が創れるの。」
そう言いながらツン、と人差し指で触りながら教えてくれる。
「おめでとう、アイリス。お父様からはこれだ。」
そう言い跪きながら手渡してくれたのは手のひらサイズの箱だ。これも破かないように丁寧に開けるとクマの形をした胸元に赤色の石の付いたロケットペンダントだ。中には家族写真が入っている。
「困ったことがあっても安心しろ。これがあれば何処でもアイリスの場所が分かるから直ぐに迎えに行けるぞ。」
「すごい!ありあとーおとーさま。」
キラキラした目でお父様を見るも何処でも分かるというのはGPS付きなのではないだろうか?
少し恐ろしい。
「最後はワシだな。ワシからはここから少し離れた所にあるセキホがプレゼントだ。」
セキホとは確かにここから少し離れた所にある町1つ分の大きさがある川も通ってる土地の名前だったはずだ。
「セキホ?セキホにあそびにつれてってくれるのー?」
「んー、ちと違うな。セキホ自体がアイリスの物になるんだよ。」
それはつまりどういうことだろう。
理解できず周りを見渡すと使用人達は一斉に視線を逸らすしリーシャンすら真顔で顔ごと背けるし大人達は頭を抱えている。
「…………え、とぉ。え?」
「これからはセキホでなら何をしても怒られんし好きな物を作ってもよいぞー。」
「あ、ありあとー?」
余りの規模に理解が追い付かない。
あのあとも暫く料理やケーキ、話を楽しんでから湯浴みをして布団に横になる。
眠りにつくその瞬間まで土地を貰ったことに呆然としていた。