第二章
「本当に大丈夫……?」
荷物を纏めた少年に亮護が問いかける。
先程、貸した端末を通して祖父母に連絡した彼は両親と距離を置くために其方の家に暫く住む事にしたと言う。
夜が更け、まだ庇護が必要な彼をこのまま一人で歩かせれば補導の対象になる。祖父母の最寄りの駅まで同行したが、亮護は少年を案じる気持ちが晴れないようで念を押している。
「駅の入り口で待ってると電話で言っていましたから大丈夫です」
疲れた表情で彼は答えると背負っている荷物に力を入れて姿勢を正す。
「藤川さんも、ありがとうございました」
腰を折り私に感謝を告げる礼儀正しい少年に「ん。私が昔お世話になった人の連絡先。話通しとくから何かあったらこっちに連絡して」とその場で煙草の銀紙に連絡先を書いて渡す。彼は目を見開き恐る恐る紙を手に取り、ゆっくりと顔を上げてぎこちなく微笑んだ。
「……意外と優しいって本当なんですね」
面倒くさ、……困っている子供を放り出すほど鬼じゃない。
頭を掻いて「眼鏡、親戚が居るところまで送ってやりな」と亮護の背を押す。チラリと此方を見た彼は了承の意を告げ、素直に頷くと少年を促してホームから改札へと続く階段へ消えてゆく。
私は踵を返して逆方向の電車に乗った。そちらの方が繁華街に近いから。ゴタついた為、酒が切れている。煙草も吸いたい。憂鬱な気持ちを彼方へ飛ばしてくれるなら何処でもいい、適当な駅で降りて飲酒をしようとドアの窓越しに見えるネオンに思いを馳せた。




