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第二章

ひとしきり泣いた少年がスンスンと鼻を鳴らして満足した頃、日は傾いて辺りは茜色に染まっていた。

彼の肩に躊躇いながらソッと触れて「落ち着いた?遅くなって来たから家まで送るよ」と亮護が提案すれば「いえ……、一人で帰れます」と少年は遠慮なのか伏し目がちに呟く。


「君の母親に関して私は引っ掛かってる事があるから遠慮しなくていい。それに黄昏刻だから気を付けて損はないよ」


パシらせて買わせたジュースを二人に渡して自らも酒を呷る。ふと空を見れば公園の魑魅魍魎達が「黄昏刻だ、祭りが始まる」と口々に囁き、列を成して空へと飛んでいく。今宵の百鬼夜行に加わるつもりなのだろう。

その様子が視えたのか、今度は素直に頷いた少年は亮護に借りたハンカチで目元を拭い立ち上がる。


「ハンカチ、ありがとうございます。洗ってお返しします」


「気にしなくてもいいのに。ありがとうね」


亮護が毒気なく笑うと少しは安心したのだろう、彼は赤くなった目を細めた。短くなった煙草を膨らんだ携帯灰皿に入れて「さて、行こーか」と二人を促す。公園から出ると、三歩後ろを彼らは連れだって歩いた。


「お姉さんは、いつから視えるんですか?」


チラチラと視線を感じていたが無視をして暫く歩いていたが、堪えきれなくなったのか、少年は私に問う。


「君と同じだよ」


生まれつきだ、と言外に伝えて、手に持った鬼殺しをストローで飲む。歩きながらなので煙草は吸えないが酒は飲める。一日アルコールを摂取しているので頭の芯がフワフワして、いつもより饒舌だ。


「霊感って基本遺伝が多い。私の場合は突然変異」


公園を出てから左に曲がりひたすら直進していると「そこの横断歩道を渡って右に曲がります」と後ろから告げられる。「んー」と酒を持った手を軽く上げ答え、赤信号で止まれば自然と三人横並びとなった。

ふと道路を挟んだ向かいを見ればガードレールが大きくひしゃげている。添えられた花と飲み物をジッと見つめるスーツの男は頭から夥しい血が流して生者ではないと遠目でも分かった。

視るものが視れば悲鳴を上げそうなモノだ。チラと少年を横目で見れば男が視界に入っているが至って冷静だ。その様子が生来【視える】能力があるという事が真実であると物語る。

視える事は騒ぎ立てないが、聞かれれば素直に答えるタイプなのだろう。彼くらいの年齢は人と違う性質を排斥する傾向がある。子供という生き物は無邪気なのだ。良くも悪くも不器用で自分が正しいという思考が強い。

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