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風船娘  作者: 白龍
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謎の空間での風船娘対決

その男、ヨウスケは突如目を覚ました。

周囲に真っ黒な闇が広がる謎の空間で。


「…え、ここどこだ?」

ヨウスケは先程まで自室で眠っていた。という事は、この奇妙な空間は夢の世界か何かだろうか?

夢にしては現実味のある感覚が、彼の身を覆っていた。

空間全体にも妙に暖かく、ヨウスケの肌も脳も眠っているとは思えないほどハッキリとした感覚を感じていた。


「やっと目を覚ましたね」

突如空間に響いた大きな声に、ヨウスケは飛び上がる。

声は上から聞こえていた。


ヨウスケが声のした方向を見ると…そこには何と、巨大な女の子がヨウスケを見下ろしていた。

美しい金髪に色とりどりな服を着ている。

整った容姿だが、何より目を引くのはそのお腹。

彼女のお腹は、まるで妊娠しているかのように膨れ上がっていた。

彼女の体全体の比率としては、そこまで膨れてはいない。

しかし彼女より小さなヨウスケからして見れば、そのお腹はまるで巨大な風船だ。

状況がよく分からない事もあり、巨大なお腹を前に、ヨウスケはぽかんと口を開いていた。


この空間が現実と同じ時間軸ならば、巨大なお腹を見つめ続けて約十分後、女の子はようやく話しだした。

「いつまで見てるの?」

ヨウスケは思わず声をあげて後退った。

あまりに見事な膨れぶりに、つい目を奪われていた。

女の子は語りだした。

「ここは私の力で生み出した空間。どんな物でも私の意のままに生み出せるのよ」

女の子が右手を掲げると…空中から青いブロックが出現、ヨウスケの横に落ちてきた。

何と奇想天外な出来事だ。ヨウスケはこの出来事を他人にどう話すのか脳の整理を始めていた。


が、そんな暇はない事にすぐに気づく。


「勿論、こんな物も」

女の子が左手を掲げると…空中からエアポンプが出現した。

エアポンプはホースを射出し、しばらく鞭のようにホースを振り回し…女の子の腰の辺りにホースを伸ばした。


しゅううううう…!

空気の音が聞こえてくる。


同時に、彼女の膨れ上がったお腹は更に大きくなり始めた。

どうすれば良いのか分からず、ヨウスケは不自然な程に足踏みをしてしまう。

「え?お、俺何すれば良いの!?」

「ふふ、あれ、危ないんじゃない?」

ここで彼女は初めて悪戯な笑みを見せた。

彼女の大きな手が指差す先には、先程召喚されたブロックが。

「え?…あっ!」

不思議と察しがついたヨウスケは、ブロックに走り寄り、持ち上げる。

そして、全力を込めて暗闇の向こうへと投げ飛ばした!

「正解♪」

ブロックという事で、角が尖っているのだ。

もし膨張している彼女のお腹がブロックにぶつかれば、破裂していただろう。

女の子はヨウスケを試したいのか、更に色々と召喚していく。

先程のブロックを更に多く召喚したり、極小の針を落としたり、サボテンを生やしたり…ヨウスケは物が召喚される度に対処していく。

投げたり、走ったり…はじめこそ調子は良かったが、体力は徐々に減ってきていた。

そして、時間が経つにつれて女の子のお腹もどんどん大きくなる。



「はあ…はあ…」

肌色の巨大風船…及び女の子のお腹に寄りかかり、ヨウスケはついに息を切らした。

ここまでの運動は久々だ。最近体を動かしていなかった自分への当てつけか何かかと思ってしまう気分だ。

「ふふふ、やるわね。ここまで動き回った男の子は今までいなかったわ」

お腹が大きすぎて彼女がどんな顔をしているのかほとんど見えないが、恐らく邪悪な笑みを浮かべてるのだろう。

そう思うほど、ヨウスケはこの女の子が恐ろしい物に見えていた。まあ突然現れてこんな事をさせるなど、恐ろしい以外の何でもないが…。

ここまで頑張ってきたヨウスケだが、女の子はそろそろ本気を出そうと思ったらしい。

両手を掲げ、何かを集中するように目を閉じ、髪を美しくなびかせる。

何が起きるのかと、ヨウスケは身震いがするような思いで彼女のお腹を見上げる。



…直後、無数の音が聞こえてきた。

振り返ると、そこには二十個ものブロックが落ちてきていた!

「げ、げええ!こんなに!?」

「それだけじゃないわよ?」

女の子は低い声でヨウスケを威圧した。

左手の指を鳴らし、また何かを召喚する。





…それは何と、さらにもう一つのエアポンプだった。

ホースを振り回すエアポンプを見て、ヨウスケは悲鳴をあげたくなるような思いだ。

勿論慈悲はなく、エアポンプは女の子のヘソ目掛けてホースを差し込む!

「んんっ!さあ、終わりよぉ…」

女の子は両手をあげ、よりお腹を強調するようなポーズを取る。


しゅうううううううっ!!

シュウウウウウウウウッ!!

二つの音が響き、女の子のお腹はそれまでにない速度で膨張を開始した!

ヨウスケはお腹に突き飛ばされながら、急いでブロックへ飛び出していく!

持ち上げて、投げて、持ち上げて、投げて…三個投げた頃にはお腹はもう5メートル以内の距離にまで進行していた。

上下に揺れる、6メートル以上もある巨大風船…ヨウスケを嘲笑うように、どんどんどんどん膨らんでいく。

半泣きのヨウスケ。

「く、くそーっ!!なんでこんな事に!」

ブロックを持ち上げ続けるヨウスケだが、もはや時はない。

お腹はすぐそこまで迫ってきていた。張り詰めてパンパンに膨らんだ巨大なお腹は、今や7メートルもある。

ブロックはあと7個。

…もはや、諦めるしかなかった。

「ああ…ちくしょー!」

ヨウスケは膝を付き、耳を塞ぐ。

「あら…諦めちゃうの?ふふふ…あはははは!し、所詮はこの程度ね!ま、まあ少しは楽しませてもらったけどぉ…!」

甲高い声が空間に響く。

女の子のお腹はヨウスケに接触しようとしていた。

影がかかったお腹は正に圧巻。怪物のようだ。

「さ、さあ…覚悟しなさい!あーははははは!!」

狂ったような笑い声をあげながら、女の子は顔を赤くしながら内側から迫りくる圧力に身を預ける。


ぐぐぐっ!!ミチミチミチ〜〜〜!!!


ヨウスケは、目をつぶった。











パァァァァァァァァァン!!!!








ブロックが刺さると同時に、空間を吹き飛ばさんばかりの暴風、そして破裂音が響き渡った…。




「っ!」


直後、ヨウスケは自宅のベッドで目を覚ましたのだった。


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