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第46話

2時間程プールで遊んだ一同は、飲み物を飲んで少し休憩して、何となく共通の話題であるゼミでの話になった。


椎名 「それでねぇ、なんかインスタのストーリーかなんかであることないこと言われたって言っててさ、それが限定された人にしか見れないようにされてた~とか・・・揉め事に発展してたんだよねぇ。」


翔 「ほえ~・・・女子ってそういう些細なことでギスギスするよな。」


椎名 「ん~・・・まぁ基本的に女子って、悪口に花咲かして話すの好きだからなのかなぁ?私は状況よくわかんないし、どうでもいいなぁと思って聞き流してたけど。」


佐伯 「ふふ・・・私もインスタやってないからわかんないや・・・」


翔 「え、佐伯さんめっちゃやってる感じに見えた。おしゃれな料理とか作ってアップしてそうだなぁって。」


佐伯 「ん~・・・難しいメニューを上手く作れたら写真撮ることはあるけど・・・個人的に撮ってるだけで、発信したりはしてないね。」


椎名 「・・・リサはSNSやったらそれこそトラブルに巻き込まれそうだから・・・心配事増えちゃうしやらないでほしいかな!」


佐伯 「ふふ、前も言ってたね。」


翔 「西田もSNSやってないんだっけ?」


「ん・・・あ~・・・アカウント自体はあるものもあるけど、使ってないね。ニュース系とか動画サイトとかはよく見るけど。」


翔 「てか西田はゼミのグループメッセもほとんど既読スルーだもんな。」


「ふ・・・だって・・・俺に関係ないことは関係ないんだから・・・返信しようがないじゃん。」


椎名 「西田くんって結構実は冷めてるとこあるよねぇ。あんまりグループの中にいるの好きじゃなかったりする?」


「あ~・・・まぁ・・・好きじゃないというより、あんまりこの人と合わないなぁって人がいると、一緒に盛り上がれないってのはあるかな。」


佐伯 「あぁ・・・でもわかるかも・・・。ちょっと空気感が違うと話合わせづらかったり、遊びに行きたいとは思えないなぁっていうのある。」


「ね。俺基本的にインドアだからさぁ・・・」


椎名 「え~そうなんだ、全然そんな感じじゃないと思ってた!バーベキューとか海とか好きでめっちゃ行くのかと思ってた。」


翔 「西田家でゲームしてんの好きだもんな。」


「そだな。ゲームもだし、漫画読んだり・・・普通にネットサーフィンしたりとか・・・。」


椎名さんと佐伯さんはそんな俺を物珍しそうに、「へぇ~」という顔を向ける。


椎名 「西田くんってさ・・・カッコイイのに全然鼻にかけない上に、イメージと違うって思われても気にしない人だよね。」


「ん~・・・全然違うイメージ持たれるなぁとは思うけど、最近はあんまり気にしないかな。でもそれを何とも思わないのは、自分の事ちゃんとわかってくれてる友達がいるからだけどね。いつもつるんでる3人とか。」


翔 「おい~!褒めんなよ~♪」


「褒めてはねぇよ?感謝してるけどね。」


いい意味でも悪い意味でも、周りに感化されて少しずつ、自分の内面も変化していっている気がした。

何も正解がわからないまま、やみくもに生きてる気もするけど、今自分が本当に大事にしていたいなと思える確かなものがあるとすれば、こうやって一緒に遊びに行って、笑い合える友達だろうなと思えた。


散々遊び倒して日も傾きだしてきた頃、4人で夕飯の下ごしらえを済ませ、翔は少し二人きりで散歩もしたいと言って、椎名さんを連れて近所のコンビニまで歩いて行った。

2人残された佐伯さんと俺は、なるべく別荘内を綺麗に使おうと、掃除するところがないか見て回った。

ところがプールの側の庭木辺りも、寝室も、水回りも、ありとあらゆる場所が完璧にピカピカに掃除されていて、玄関先ですら掃き掃除が必要なさそうだった。

意気込んで二人でウロウロ別荘内を歩き回ったものの、拍子抜けして結局ソファに戻って休憩することにした。


「な~んか・・・のんびりしてて気が抜けちゃうなぁ・・・」


「ふふ、そうだね。ホントに束の間のバカンスに来たって感じ。」


「ね・・・。」


大きく開け放たれた窓の向こうで、だんだんと夕日が沈んできて、遠くの方で虫の声がする。

周りに建物が少ないからか、そよ風が入ると意外と涼しくて、夕飯前なのに眠たくなってくる始末。


「贅沢な時間だよね。」


同じく寛いでいた佐伯さんの声が隣からして、閉じそうになった瞼を起こす。


「・・・西田くん、もしかして眠い?」


お尻を摺り寄せてのぞき込む可愛らしい顔が目に入って、思わず視線を外して苦笑いを落とした。


「そうだねぇ・・・。外で遊び倒した後ゆっくりしてると・・・さすがに眠くなってきちゃうなぁ。」


「ふふ、そうだよねぇ、朝早かったのもあるし・・・。まだご飯まで時間あるし、無理しないで寝てもいいよ?」


「ん~・・・」


佐伯さんの優しい声が心地よくて、瞬きするたびに閉じそうになる瞼を、一生懸命開けようと保っちながら、そのうち真っすぐ座ってる感覚まで揺れ出して、傾いて彼女に頭を預けてしまう。

ハッとなって顔を上げると、佐伯さんはまた優しく微笑んで言った。


「ベッド行く?」


「・・・へっ!?」


「え?」


「・・・え!あ・・・いや、別に・・・。横になったら起きれなくなりそうだなぁ・・・」


しどろもどろして言葉を濁すと、彼女は小首を傾げて座りなおした。


「でもここで適当に寝ちゃうと体痛くしちゃいそうだよ。」


「確かに・・・」


「・・・膝枕しよっか?」


長い髪がサラっと揺れて、佐伯さんは何気なく言った。


「・・・・・いや・・・そ~・・・れは・・・ちょっとまずくない?」


「そう・・・?どうして?」


短めのキュロットパンツを履いた彼女の太ももを見つめて、何とも次に言葉にする苦言を考えあぐねた。


「・・・男に対してそういうことするのは、あんまりよろしくないかなぁって・・・」


「・・・そうなのかな。・・・でも別に・・・誰にでもするわけじゃないよ?」


真顔で言い放つ彼女を見つめて、追い詰められた気分で停止した。

けど彼女にどういう意図があれど、俺は自分自身が思っていることを、包み隠さず伝えるべきかなと思った。

それがそのままの自分であって、嫌がられるなら今のうちだから。


「あのさ・・・」


「・・・うん」


「俺さ・・・どちらかと言えば女の子が好きだし、同性愛に偏見は持たないけど、やっぱり着飾ってる可愛い子とか、綺麗な女性に惹かれるんだ。」


「うん。」


「ごくごく普通の男子大学生だからさ、可愛いなと思う女の子は見ちゃうし・・・下心を持って見ちゃうのはあれだけど、・・・別にあからさまにいやらしい目で見てるわけじゃないけどね?でも単純に刺激物だからさ・・・俺からしたら・・・」


「うふふ、うん」


「だからその・・・膝枕とか、普段される機会ないようなことを許されるとさ、甘えていいかどうか微妙だよね。」


「そっかぁ。・・・じゃあ別にしなくてもいいかな。」


「・・・まぁ・・・」


何も動じることなく答える彼女に、何か少し振り回されてる気がしないでもなかった。


「そやってすぐ取り下げられるとさ・・・・惜しい気持ちになるんだよ。」


「うふふ・・・そうなの?」


「・・・からかってるでしょ。」


そっと顔を近づけてサラサラな髪の毛に触れると、ふと思い出したように彼女は口を開いた。


「ね・・・西田くん巻いた髪の毛と、ストレートだったらどっちが好き?」


「え・・・ん~~・・・・どっちも好きだけど・・・・何で急に?」


佐伯さんは大きな茶色い瞳を動かして、長いまつげを伏せた。


「・・・西田くんが好きだなぁって思う方に、今度からしようかなって思って。」


彼女がまた大きな目を合わせて、思いのほか近距離で見つめ合って聞く台詞は、どんなに鈍くてもわかりやすい好意に思えた。

けど自分の中で、易々と目の前に吊り下げられたその餌に食いつきたくないという、妙な意地が生まれる。

冷静に笑みを返して、彼女の頭をそっと撫でた。


「俺はさ、好きになる人にあんまり共通点ないし、髪型がどうとか・・・あんまり意識してないよ。」


「そうなんだ。・・・そうだよね。西田くんはたぶん・・・好きになった相手の可愛いところを、全部受け止める人だよね。」


「あ~・・・ん~・・・まぁ、じゃあそういうことで。」


「ふふ・・・」


咲夜だったらこういう時、『可愛いこと言うね。』なんて・・・からかい返したりするんだろうか。

恥ずかしくてそんなイケメンのセリフ無理だけど・・・。



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