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希死念慮  作者: 葉月
1/1

迫る

私は倒れた。


寝る間も寝ず働き、汗は流さないが眼を広げ、

零さんとし画面を見つつ、話さずとも拘束される。


そんな生活を少し続け、また次の会議がある、

その合間に小便でもしようと厠に赴いた。


その日天気は悪く、曇天であり、

感じぬはずの圧迫感を、どこかで予感していたと思う。


陰部から、悪い色の小便がチョロチョロと流れると、

泡を立てながら流れて行った。

特に最近はそうだった、手だけは綺麗にする。


ぶるっと身をよじらせ、清めた手で扉を開けると、

ふと視界が下った。

気になったものは無い、靴にも、帯革(おびかわ)にも。

ただ眼球のみが、警告を報せている。


強制的に目を見張る。

なぜか、私の目だけが、下に向かっていく。

前に戻せども戻せども、どうしようもなく下っていくのだ。


尋常ではないと、たちまち平衡感覚を失い四足になる。

とてもでは無いが立っていられない、全てが落ちていくような感覚なのだ。


這いながらなんとか業務所に戻る、この際誰でも良かった、誰か私を助けてくれとも思えないほど困惑していた。


すると気づいたのであろうか、私のもはや何も認識できない眼球の隅に映った人影が、せかせかと駆けつけると、

横になるよう働きかけた。


自分は自分のことではないかのように、冷静だった。

ああ、何だこれはとばかり思った。

するとたちまち口から言葉が出てくる、矢継ぎ早に自分はどういった状態であるかと横にいる介護人に伝え始めたのだ。


なぜか今でも分からない、ただ、喋らない方がよろしいと言われたことは覚えている。

それでも私は状況を把握するために喋り続けたのだ。


すると、ふと、喉が閉められていく。

締められたのではなく、閉まっていくのだ。

圧迫感や閉塞感を感じる、眼球は勝手に動き、

先程から役に立たないのは一緒だ。


徐々に朦朧としてくる、意識は暗くなる訳では無い。

記憶が曖昧になってくるのだ、自分が何をしているのか、

喋っているのか、息をしているのかも分からない。


そのまま声も出なくなったかと思う、分からない。

ただ、思った。


ああ、死ぬ、と。




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