表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

美少女はいつだって冷たい

革靴の音が遠くから聞こえる。コツ、コツ、コツ。その音が徐々に大きくなり、ついに来たかと思えば、ダンボールを持った私服の男性が通り過ぎていった。どうやら事務の人だったらしい。私服に革靴ってどういう組み合わせだよ。


この部屋に来て30分。先生はまだ来ない。少女からも反応がない。動かざることロボットの如し、まだペッパー君の方が愛嬌ある。


カリッ、カリッ、カリッ、カリッ


正確な打刻音が、教室の静けさを象徴する。

何度時計を見ても、短針は変わらない。

悠久に感じる時が精神を蝕む。

永遠の命とは、このような苦しみ味わうのだろう。終わりがあるから、良いのだと。


改めて、現状を俯瞰する。


俺の隣には美少女がいた。その距離およそ50センチ。フローラルな甘い香りが脳を刺激。電気信号は荒ぶり、脳の血流が暴走。心臓の鼓動はまるで地震のように激しい。

これが、高校生男子の性だ。

美少女を前にすれば、可能性が無くとも期待してしまう。あり得ないと分かっているのに、期待してしまう。高校生とチョコレート。バレンタインデーとカツカレー。


だが、冷静になると悲しいものだ。

なぜなら、俺が勝手に興奮してるだけなのだから。


事実、彼女からは、話しかけんなオーラがぷんぷん漂ってくる。

造形が整う美人であるが故、その無表情が怖い。リカちゃん人形から薄気味悪さを感じるのと似ている。だが幸い、日本人形の不気味さまでには至らない。あれはやばい。


カリッ、カリッ、カリッ、カリッ


乾いた機械音が時を刻む。あれから5分。

まだ先生は来ない。あとどれだけ耐えればいいのか


カリッ、カリッ、カリッ、カリッ


乾いた機械音が時を刻む。あれから2分。まだ先生は来ない。あとどれだけ耐えればいいのか


カリッ、カリッ、カリッ、カリッ


乾いた機械音が時を刻む。あれから1分。先生はまだ来ない。もう耐えられない。


「あのー、はじめまして。自分、宮島と言います」


カリッ、カリッ、カリッ、カリッ


乾いた機械音が時を刻む。あれから20秒。まだ返事は返ってこない。

あれ?


カリッ、カリッ、カリッ、カリッ


乾いた機械音が時を刻む。あれから1分。無視された。


清々しくも無視された。

華麗なるシカト。

ひょっとして、挨拶したのは、俺の脳内シュミレーションであって、現実でなかったかもしれない。

いかん、いかん。あまりに気まづくて、現実逃避していたようだ。

咳払いし、心を整える。


「はじめまして。僕、宮島って言います」


カリッ、カリッ、カリッ、カリッ


「あ、あのー、僕宮島って言うですけどー」


カリッ、カリッ、カリッ、カリッ


「ふっ、あの、えっと、え?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ