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1-4 魔力を流す実験

本日3話目の投稿です。

「ロッケリーニ………美味しかったな……」


「ロッケ?何??」


レミィが不思議な顔で問いかけてきた。

隣りに座って教科書を取り出している。


「あぁ、ごめん、お酒の話。昨日教授とミーちゃんとルヴァイと飲んだの」


「ふぅん、相変わらず仲いいね?」


「まぁ、そうね?同じ研究棟だし」


レミィがキョロキョロ見渡して、いたいた!と私を立ち上がらせる。


「そのルヴァイがあっちで一人で座ろうとしてるよ!行こうよ」


「えっでも」


ルヴァイはミーちゃんじゃないときはあんまり近くに寄ってこないのだ。

……といってもミーちゃん以外だとレミィぐらいしかいないんだけど。

そもそも授業自体殆どないから、総合科目となると週に数回しかない。


若干困惑しつつもレミィに引っ張られながらルヴァイの所へ行く。


「おはよう!昨日エリィと美味しいお酒飲んだんだって?」


「……あぁ、うん。そうだね」


なんだかちょっと困ったようにルヴァイが笑う。

そのまま流されるようにルヴァイの席の前にレミィと並んで座る。

嫌だったかな?

ルヴァイの様子を伺うと、私の顔を見てちょっといたずらっぽく笑った。

うん、なんか、大丈夫みたい?

よかった。


「仲いいね、二人とも。私もちゃんと仲間にいれてよー!」


「ご、ごめん。そうだよね」


「ふふ、大丈夫。これから仲良しになるから。ね、ルヴァイ」


「……元気だね、レイミリア」


「元気がないとやってけないわよ!元気が取り柄のレイミリアちゃんだからね。ルヴァイは元気ないの?」


「そんなことないよ」


「ほんとにー?元気づけて欲しかったらいつでも言ってよね!」


太陽みたいな笑顔で笑うレミィは、やっぱり本当に可愛い。

二人のやり取りを見ていて、何となく羨ましいような、変な気持ちになるのはなんでだろう。

なんとも言えない自分の心に首を傾げていたあたりで、講師がやって来た。

そのまま講義を受ける。


途中でトントンと肩を叩かれて、ルヴァイに何か手渡された。


ノートの切れ端だ。


何だろうと思って開いたら『この講師の洋服、エリィがメスで切断した川芋みたいじゃない?』って書いてあった。

講師を見る。

薄茶色の少し毛羽立った感じがまさに川芋のようでプルプル笑いを堪える。

講師の体型も相まってもう川芋にしか見えない。

『メス投げないように気をつけるわ』って書き足してルヴァイに返した。

その後の講義は笑いを耐えるのに必死だった。



「ちょっとー!二人して講義中なんかやってたでしょ!」


講義が終わるとレミィがなんだかニヤニヤして私を小突いてきた。


「この間実験で使った材料の話してたんだよ」


私が答える前に、ルヴァイが答えた。

なんだか微妙に面倒くさそうだけど、大丈夫だろうか。


「ふーん?実験の話ね?魔術棟医学棟って、不思議なもの沢山ありそうだよね」


「うん、私も自分の領域から離れると何がなんだか分からないものもよくある」


「へぇ、そうなんだ。今度遊びに行こうかな?」


レミィがルヴァイを見上げる。


「あんまり血とかそういうの苦手だから、魔術棟がいいよね?」


「魔術棟こそ血みどろだよ」


「え、そうなの?」


「医療用の魔道具も多いからね。そうだ、エリィ、あれ様子見ないと」


「え、なんだっけ?」


「この間壊して部品交換した魔道具。ちょっとあんま時間無いからちゃちゃっと一緒に来てくれる?じゃあ、レイミリア、またね」


そう言うと、ルヴァイは私をぐいっと引っ張ると、レイミリアを席に残して、私と一緒にそのままスタスタ講義室を出て行く。

慌ててレミィに手をふって別れを告げると、レミィは少ししょうがないなというような……若干不満そうな顔でひらひらと手を振り返してくれた。

なんだか申し訳ない。


「えぇと、ルヴァイ?」


「なに」


ルヴァイも微妙に不満そうだ。

よく状況が読めなくて首を傾げる。

とりあえず、疑問に思っていることをひとつ聞いておく。


「魔道具、完璧になおってなかったっけ」


ルヴァイは私をちらっと見ると、ニヤリと笑った。


「あぁ、そうだったっけ?」


「え、忘れちゃったの?」


「まぁ、そういう事もあるよ。とにかく見に行こう」


「うん……?まぁ、いいけど」


良くわからないが、部品交換したばかりだと事後のチェックも必要ということだろうか。

どちらにしろ別に悪いことじゃないしいいかなと、そのまま自分の研究室に向かう。


案の定、魔道具はバッチリ完璧だった。


「メンテナンスありがとうございました」


御礼申し上げると、ルヴァイはなんだか困ったように笑った。


「ちょっとだけ、エリィが心配になってきた」


「え、なんで?」


「素直だから」


「???……どういうこと?」


「わかんなくていいよ」


謎が謎を呼んでまた首を傾げる。

最近分からないことばっかりな気がしてきた。

まだまだ勉強が足りないかもしれない。

なんだろう、人付き合いっぽい気がするから、心理学とかそういうの勉強したらいいかな。


頭を巡らせている間に、ルヴァイは机にあった魔道具を見ていたようで、1つ手に取っていた。


「あれ、この間のメスと違うね?」


「うん、やっぱり私の腕だと安定して魔力を通せなくて。もうちょい苦労せず一定の魔力流せたら良いんだけどさ。もし私レベルでもできるようになったら、今より色んな人ができるようになって執刀医増やせるんじゃないかなって、教授とミーちゃんと研究してる」


「なるほどね……」


ルヴァイはメスを手に取って少し何か考えているようだった。


「ねぇエリィ。魔道具の開発だけじゃなくて、魔力を魔道具に流す訓練方法も開発してみるのはどう?」


「訓練方法?」


「うん。通常、魔術師になる人達って元々素養があって簡単にできちゃう人が多いし、そうじゃない人は魔術師にはならないし。そこまで精密な訓練しなくても日常生活で苦労しないから、そういう方法ってあまり確立されてないんだ」


「……なるほど、確かに……」


そう言われてみればそうだ。

執刀医は医療魔術が得意な人しかならないし、そうでない医者は簡単な医療魔術で済む科目の医者になることが多いから、現状そんな訓練をするような人自体あまりいなかったかもしれない。


「試してみる?」


「え、何か方法あるの?」


「うん。原始的だけど、魔術が得意な人が流す魔力の流れを直接感じ取って、体で覚える感じ。魔力の相性悪いと気持ち悪くなるけど……まぁ、多分、エリィなら大丈夫だと思う」


「いいね!やってみよう!!」


今まで試したことのなかった手法に心が躍る。

これで上手くいくなら、その手法を開発するのは簡単かもしれない。

多少の魔力の相性の悪さぐらい、我慢することもできるだろうし。

そんなことより、ワクワクが勝って早く試したくなってしまった。

やっぱり、新しいことを思いつくこの瞬間は、最高に楽しい。

新しい未来が描けて、満面の笑みでルヴァイを見上げる。

ルヴァイはなんだか面白そうな、でも優しい顔で笑っていた。


「じゃあ、そのメス持って」


「了解です!これでいい?」


「うん、大丈夫。じゃあ、これからマリエルの手に触れながらその魔道具のメスに俺の魔力流すから。もし気持ち悪くなったら教えて」


「はーい!」


私の背後にルヴァイが回って、私の右手とルヴァイの右手が重なる。


「……うまく流れるように、こっちも握るね」


左手も握られる。

背中がトンっとルヴァイの胸に当たって、どきりとする。


ルヴァイの、自分のとは違う、少し硬い質感の手。

自分の顔の横に、ルヴァイの顔の気配を感じてそちらが見れない。

なんか、まるで……後ろから抱きかかえられてるみたいだ。


「流すよ」


耳元でルヴァイの声が柔らかく低く響いて心臓が跳ねた。

ちょ、ちょっとまって……


予想外に近い距離に固まっていたら、なんだか身体が芯から熱くなって、ほわりとした気分になった。

それから、その熱が手に持つメスの方に流れていく。


穏やかで、静かな。

緩やかに流れる温かい小川。

そんなイメージだった。


「………気持ち、悪くない?」


「うん……どっちかっていうと、気持ちいい、かな……」


なんだかほわほわする。

それから、良くわからないけど、妙に懐かしい気持ちになって。

もっとずっとこうしてたいって、思ってしまった。


「どうかな、わかる?」


「うん、なんか……穏やかな流れみたいな……」


「そうそう、そのまま自分の魔力も流してみて。ちょっと俺の方にも流れちゃうけど、気にしなくていいから」


「わかった……ええと、気持悪くなったら言ってね」


私も同じように魔力を流してみる。

温かい小川のように、ゆったりと。

それはルヴァイの魔力と一緒に流れて、時々どこかで優しく混ざり合う。

ルヴァイの手が少しピクッとして、私の手を、少し躊躇うように、キュッと握った。


「ご、ごめん……私の魔力、気持ち悪かった?」


「いや……大丈夫」


「ほんとに?」


「…………エリィの魔力、柔らかくて気持ちよくて、やばい」


「ちょっと、なんか変な言い方しないでよ!」


「っふふ、でも、ほんとだよ」


思わずルヴァイのほうをちらりと見た。

近い距離で合ったルヴァイの目は思っていたより優しげで、なんだか甘く、とろりとしていた。


ルヴァイの熱を持つ視線が、私のことを絡め取っていく。


吸い込まれそうな、ほんのり紅い、綺麗な目。



トントン、と部屋をノックされて我に返った。

え、私、今……なにしてた……?

我ながらビックリな状況にあわあわする。

一方のルヴァイは、なんだか不満そうにはぁとため息をついて、私の手を離した。

ルヴァイがガチャリとドアを開く。

ニコニコのミーちゃんが、ルヴァイを見て笑顔を引きつらせた。


「……あれ、ごめん、お邪魔だった?」


「…………いや?」


「ご、ごめんて、ルヴァイ」


ルヴァイの表情は見えないけど、なんか見えなくて良かったかもしれない。

というか、ちょっとすぐ顔を見れない。


ミーちゃんが、私の様子をちらちら見ながら頭をポリポリかいた。


「えぇと、教授がさ、この間のロッケリーニのお酒のお礼に、いい飲み屋さん連れて行ってくれるってさ。この間のルヴァイのやつよりグレードは低いけど、ロッケリーニがあるお店で、安い分たくさん飲んでいいって」


「ほんとに!?やったー!!」


「え、俺もいいの?」


「むしろこの間のお礼をうけとるのはルヴァイでしょうよ」


ウインクするミーちゃんが最高にかわいい。

私は嬉しくなってミーちゃんにギュッと抱きついた。


……実は白衣の下が巨乳なミーちゃんを羨ましく思ったのは、ここだけの話にしておこう。


そうしてわたし達はちょび髭教授を伴って、夜の街に繰り出したのだった。


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