第2部~新小岩駅のホームドア設置後に見えた事、第1章~2018年12月以降は
2018年(平成30年)12月8日に、新小岩駅総武快速線ホームに念願のホームドアが設置されました。
これで、大幅に投身自殺が抑制され、人身事故による遅延も解消されると期待されました。
それまでは、快速線ホームの通勤時間帯には、8~10人くらいの警備員がいて、ホームの端の方はトラロープが張ってありました。
確か、一時期快速線ホームには、支柱に鏡が設置されていましたが、効果があまりなかったのか、知らぬ間に撤去されていました。
ホームドアはそれほど高さがないので、鉄棒の前転の要領で投身自殺をする人がいるのではないかと心配されましたが、それは杞憂に終わりました。
ホッとしたのも束の間、ホームドアが設置されてから1週間後に、総武線各停ホームで深夜の転落事故が起こりました。
線路に転落した方は、酒に酔って線路に落ちたところをホーム上の乗客が発見して、駅員に救助されたので大事には至りませんでしたが、自分がそれを聞いた時は、かつて総武快速線ホームで見た白い服の6人を思い出しました。
でも、あれは快速線のホームだったからな…。
総武線快速ホームで人身事故が激減したとはいえ、今度は総武線各停ホームで何かが起きているのは感じましたが、極力関わらないようにしていました。
2018年までは、新小岩駅は人身事故ランキング上位に入っていましたが、同年の12月にホームドアの設置してからガラリと様相が変わりました。
2019年の鉄道の人身事故は、中央・総武線に限ると、新小岩駅で激減した影響なのか市川駅と船橋駅で増えていきました。
2020年になると、鉄道の人身事故の多い駅一位は川崎駅になり、二位以下は品川駅、下赤塚駅、日暮里駅、東武練馬駅と続きました。
2019年以降、新小岩駅ではホームドアの設置が功を奏し、平穏な年月が経過していました。
実際に、新小岩駅総武快速線ホームでは、ホームドアが設置されてから2年間人身事故が0件になりました。
2020年3月頃になると、新型コロナウイルスが世界中に拡散したので、東京オリンピックが1年延期になり、同年4月から第1回目の緊急事態宣言が発令されました。
コロナ禍で、全世界的に非常に大変である昨今、否応無しに新しい生活様式に変わりました。
お店にはお客さんが来なくなり、精神的にも金銭的にも追い込まれている方々が多くおられました。
しかし、国民は未知の感染症拡大防止の為、多くの人が犠牲を受け入れ外出を控えました。
5月に緊急事態宣言が解除するまで、休業するお店が相次ぎ国民は不便を強いられました。
緊急事態宣言が明けると、開店休業の業界は次々と淘汰されていきました。
自分は宿泊業の設備管理をしていたのですが、そのビルの中ではコロナ禍で甚大な影響を受けた為、各社リストララッシュでした。
この頃は、65才以上の契約社員が全員解雇になりました。
その後のリストラ候補は誰になるのか、どこの職場も戦々恐々でした。
2020年7月の長い雨が抜けたら、8月は連日猛暑が続いていました。
職場で重い雰囲気が漂っていた中、現場の同僚の坂崎さんからこんな事を言われました。
「昨日、葬儀場に行くのに新小岩駅を降りたんだけどさ…」
「ふーん、それがどうかしたの?」
「あそこは何かおかしい!何か居るような気がする…」
「えっ、そうなの、新小岩駅にって事?」
「そうそう、降りた瞬間に気分が悪くなって、行こうかどうか迷ったくらいだよ…」
「それで、葬儀場には行ったの?」
「うん、ベンチで暫く休んでから行ったよ」
「ちなみに、新小岩駅のどの辺で降りたの?」
「いや、それは覚えていないよ…」
「そこで、何か変な物が見えたりはした?」
すると、坂崎さんは顔を顰めて言いました。
「いやいや、見えはしないんだけど、葬儀場に向かったせいなのかな?」
「でも、葬儀場に向かう人は他にもいたでしょう」
「でも、あの時の感覚は普通じゃなかったんだよ」
「それさぁ、コロナ禍で疲れていただけって事はないよね」
「嘘だと思ったら新小岩駅に行ってみてよ、それで何も無ければ問題ないと思うから!」
坂崎さんの気迫に押されて、引っ込みがつかなくなったので、
「ふ―ん、じゃあ、今度の宿直明けにでも行ってみるかな…」
と、自分はボソッと言い返しました。