第4章~違和感の正体~最終章
所謂「ゾーン」に入っているのに、強い霊気を感じるだけで、いくら見回しても何も見えない…。
いくら警戒しても何も現れない…。
いやいや、別に無理に探さなくてもいいのではないか?
頑張って探したところで、1円にもならない事を続けるのはいかがなものか…。
今日は違和感だけでも感じ取れたので、あとはゾーンから抜けたら帰ろう。
そう思い、その場で何度か深呼吸をしました。
気分を落ち着かせたところで、ふと顔を上げて、ロータリー側の景色をぼーっと見ていたら、正面に黒い外壁のビルがありました。
そのビルの窓ガラスには、自分のいるホーム上が映り込んでいました。
「あんなに先にあるビルでも、ホーム上がはっきりと映るんだな…」
「それにしても、何であのビルの右側には黒い靄みたいなのがかかっているのだろうか?」
「いや、待てよ…、これは何かおかしい!」
そこで、一気に緊張感が高まりました。
そのビルの窓ガラスに反射して、だいたい30人位のスーツ姿の方々が、忙しく行き交っているのが見えたのです。
「この人達はどこから映っているのだろう?」
後ろを振り返りましたが、そこには誰もいないのです…。
そのうち、ビルの窓ガラスには自分の姿が映っていない事に気が付きました。
「いやいや、あの黒い外壁のビルの窓ガラスには、こことは離れた場所のホームを映しているんだろう」
と、勝手に思っていましたが、自分以外にホーム上にいる方々も映っていないのです…。
ここでやっと、ピンときました。
「あのビルの窓ガラスに反射して映っている、忙しく行き交っているスーツ姿の方々が、今回の違和感じゃないのか!」
「パッと見で30人位だけど、右からも左からも次々に行き交っているから、映っている方々はかなりの大人数か?」
「でも、ホームが映っているのに、どうして自分の姿が映らないんだろう?」
「若しくは、あのビルに反射して見える方々は、違う場所から映りこんでいるのか…?」
短時間でいろいろと思考を巡らせていると、ビルの窓ガラスの右側から電車が進入してくるのが映りました。
「シュゥゥゥ、ガタッ、ゴトッ、ガタッ、ゴトッ…」
今までが何事も無かったかのように、自分の後ろに千葉行きの電車が到着しました。
その電車に乗らずに、さっきまで見ていたビルをもう1回見てみる事にしました。
すると、ビルの窓ガラスに反射して映っていた30人位の方々は、もう誰もいませんでした。
下り電車が通過した事により、どうやらやっと元の世界に戻れたようでした。
ホっとしたのも束の間、ロータリー側の正面に見えていたビルが何か違うのです…。
それは、先程まで見えていた黒い外壁のビルは、実際は白い外壁のビルだったのです。
ゾッとしながらも、自分はこんな事を思いました。
ビルの窓ガラスに映っていた、忙しく行き交っているかなりの数のスーツ姿の方々を見た時、景気がいい時代の企業戦士みたいで、何か懐かしい感じがしました。
ホームドアの設置により、人身事故の件数が落ち着いた新小岩駅でしたが、何故このような事が見えたのだろうか?
かつては自殺のメッカだという事を、ビルに映った方々は主張したかったのだろうか?
ビルに反射して映っていた方々は、多くが男性のようでした。
最終的に違和感を確信したのは、ビルに映り込んでいた方のうち左から見えた方が、暫くして同じ人がまた左から見えた時でした。
そこでやっと、ここに映っている方々はおかしい!
と、認識する事が出来たのです。
あの黒い外壁のビルの窓ガラスに、何で自分やホーム上の方々が映らなかったのだろう?
と、思いましたが、もしかしたらそこに映ってしまった時には、もうこっちの世界にはいないのかも知れません。
新小岩駅各停のホームから、もう一度白い外壁のビルを見てから快速線のホームの方を見ると、かつて快速線ホームにあった売店と白い外壁のビルは直線上に位置していました。
それが、ここで見えた出来事に関係があるかどうかは分かりませんが、前に自分が聞いた話と偶然の一致でした。
坂崎さんから言われた事が、自分なりに把握出来たと思いましたが、現場の方にはこの事について話す気にはなれませんでした。
以上が、新小岩駅のホームドア設置後に見えた事になります。
最後までご拝読頂きまして誠にありがとうございました。
今回のお話はいかがだったでしょうか。
一時期、自殺のメッカだった新小岩駅にはいくつか都市伝説があって、投身自殺をした方がどう飛び込んだのか、線路上からその様子を見ているという話を聞いた事があります。
自分はそれを見た事はありませんが、新小岩駅から通勤していないと見る事はないと思います。
それに、普段あんまりまじまじと線路って見ないですよね。
あなたは、通勤で利用する電車が、人身事故で停まったらどう思うでしょうか?
ついていないとか、この先どう乗り継いで行くかと考えるのが大半だと思います。
朝の忙しい時間が奪われると、やり切れないですよね。
駅のホームから投身自殺があると、現場検証と遺体等の撤去が行われた後は、また電車が動き出しますね。
乗客としては安心ですが、駅のホームから投身自殺した遺族は多額の賠償金が請求されるので、二重の悲劇でしかありませんね。
世界で自殺が多い国という点では日本はそれ程上位ではありませんが、上位にきている国はほとんど発展途上国であり、先進国という観点から見ると日本はかなり上位に位置します。
自殺の原因はいろいろとあるものの、それだけ日本という国は生きにくいのかも知れません。
駅のホームから投身自殺する人は、死ねば楽になると思って飛び込みますが、電車の運転手からしたら、人身事故を間近で目撃した事によるトラウマを抱えてしまう人も少なくありません。
最近見た新小岩駅では、ホームの両端にLEDで青い光が照らされていました。
かつての強烈な青い光よりはかなり弱くなりましたが、その真下に行くと結構明るいなと感じました。
今後、鉄道での人身事故が少しでも減り、生きやすい社会になる事を祈りつつ、この辺で終わりたいと思います。




