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この恋の終わり方  作者: ロッドユール
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この恋の終わり方

 彼はいつものように、そのもじゃもじゃの頭をぽりぽりしきりにかきむしっていた。

「何か悩みごとですか」

「ん?」

 私が彼を覗き込むように話しかけると、彼は夢から覚めた子どもみたいに私を不思議そうに見た。

「悩み事ならおねえさんに言ってごらんなさい?」

「うん・・」

 私がふざけた口調で言うと、彼はそれには反応せず、その場に寝ころんで、天井を見た。

「ちょっと考えていたんだ」

「何を?」

「この恋の終わり方をね・・」

「恋の終わり方?」

「うん」

「なんでそんなこと言うの」

 私は少し興奮気して言った。

「いや、なんか、どんな恋もいずれは終わるだろ。僕たちのこの恋はどんな終わり方をするんだろうって、そんなことをふと、考えてね」

「終わんないかもしれないじゃない。結婚するかも」

 私はなんかむきになった。

「う~ん、まあ、そうなんだけど、でも、結婚したって、恋は冷めるだろ。夫婦としての愛情は続くかもしれないけどさ。恋って感じは終わるじゃない」

「でも、結婚してもずっと続く恋もあるかもしれないじゃない」

 私は言い返す。

「うん、でも、続いたとしても結局、いずれはどちらかは死ぬわけでさ。結局終わりはくるじゃない。だからさ、どんな終わりなのかなって」

「私たちの恋は永遠に不滅よ」

 私はむきになって言い返した。いつになく興奮して、無茶苦茶なことを言い切る私を、少し驚いて彼は、少し身を起こして見た。そして笑った。

「ほんとなんだから。永遠に不滅だよ」

「うん」

 彼は笑う。

「絶対終わらないわ」

「分かったよ」

 私の剣幕に彼は、少し困った顔をしながら笑う。

「ほんとだよ」

「うん」

 私の過去の恋愛は全部自然消滅だった。しかし、私の生来の鈍さ故、連絡来ない、連絡しても繋がらない、それでも気づかず、そして、彼の家に行き、「気づけよ」とキレられ、初めて終わったのだと知る。いつもそんな感じだった。普通なら家に行く前に態度でなんとなく察し、そのまま本当に自然な形の自然消滅なのだろうけど、私は本当にどうしようもなく鈍く、はっきり目の前で言われなければ理解できなかった。

「・・・」

 今回もそうなるのではと、私はいつもどこかにそんな不安を抱いていた。この恋の終わり方は、私の方がいつも考えてしまっていることだった。だから、だからこそ、彼の考えをどうしても受け入れられなかった。認められなかった。それは真実だったから・・。

「もしかしたら、僕たちが憎しみ会う時が来るかもしれない」

 彼がさらに言った。

「来ないわ」

 私はまたむきになって言い返した。

「ははは」

 彼は私の剣幕にまた笑った。

「絶対来ないから」

 私はさらに強い口調で言う。

「分かったよ」

 彼は笑った。

「僕たちの恋は永遠に不滅だよ」

 彼は私をなだめるように言う。

「そうよ、永遠に不滅なんだから」

 私は口を尖らせて言った。

「ほんとなんだから」

「分かったよ。もうこの話はやめだ。ごはんにしよう」

「うん・・」

 私は、なんだか納得いかなかったが、うなずいた。

「お腹が減ると、腹が立つんだ」

「うん」

「コロッケを買ってきたんだ。吉田屋さんのだよ。ここのコロッケはうまいんだ。それに安い」

 そう言って、彼は台所に立った。

「少し離れてみる?」

 彼は包丁を手に握りながら、また突然言った。

「はい?何を言っているの」

 私は驚いて彼を見る。

「いや」

「私のこと嫌いになったの」

 私は不安になった。

「違うよ」

「じゃあなんで」

「恋は逆境であればあるほど燃え上がるんだ」

「はい?」

「誰か、作家が言っていた。演出家だったかな?」

「?」

「だから、ちょっと距離をとってだね。その逆境を意図的に作ってみるってのはどうかな、なんてね」

「何を言っているの」

「はははっ、冗談だよ」

「冗談にもほどがあるわ」

 私は怒り口調で言った。

「まあ、そうだな」

 しかし、彼は笑っている。

「愛する者同士は、ずっと一緒にいるのよ。それだって誰かが言っていたわ」

「そうか」

 彼は笑った。

「ずっとずっと一緒にいるの」

「死が二人を別つまで?」

「死も二人を別てないわ」

 私は彼の傍に行って、彼の背中に思いっきり抱き着いた。

「ほんとだよ」

「そうか」

 彼は私に抱き着かれたまま笑っていた。

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