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吸血鬼転生記  作者: 龍
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「ん…おお……。久々にベッドで寝たからか身体が軽いな。それに…日が落ちるからか」


 開けたままだった窓から夕日がもうほとんど落ちるのが分かる。

 頭をガシガシと掻いて、階段を降りると少し客が入り始めたようだった。


「おう、兄ちゃん。これから出るのか?ならこの樽のエールを冷やしていってくれよ」


 呼ばれてカウンターの裏に入り、樽に手を当てて冷やしていく。ついでに…「氷柱」、側に氷を生やしておいた。


「おお、ありがとうな。これなら夜までは温くならなさそうだ。飯は食ってくか?」


「まぁ飯代に足しといてくれ。飯は…そうだな。腸詰だけ貰うか」


 茹で焼きにした腸詰を串に刺してもらって2本受け取り、宿を出る。今度は南門の方に向かうと大きな門を閉めるところだった。


「兵士さんよ、夜は街を出入り出来ないのかい?」


「ん?これから出るのか?夜間は端の詰所を通れば出入り出来るぞ。一応確認が必要だがな」


「そうか、ありがとう」


 言われた様に詰所を通り、冒険者証を見せて外に出る。


(ギルドの依頼票を見た通り南門からだと森がすぐ見えるな…。真っ直ぐ北に向かったから最短だったんだろうがこの森はやけに広いんだな)


 街の南側は特に道などなく、少しの草原とその先は森だった。そしてその先には高く聳え立つ山が見える。

(あの山の一部の崖にある洞窟で俺は眠ってたわけだ。意外と人里に近い感覚になるがよく見つからなかったものだな)


 森に近付いた辺りで視線を感じ、じっと森を見ると狼の群がこちらに近付いてきた。


「何が夜は狩りが楽だよ…。ガッツリ夜行性の動物がいるじゃねぇか」


(ちなみに人型の魔物も夜目が効くので一部は起きて行動している筈です)


「そうかいそうかい…。まぁ俺も好調だ。やろうか。「影縛り」」


 全部で12頭いた狼を全て縛りあげ、雑貨屋のナイフで首に傷つけていく。


「あ〜、いい匂いだ。他の魔物も寄ってくるかな?森に入ったらすぐに出会しそうだ」


 一頭、また一頭と力尽きていく狼に順番に近付き、自分の影に落としていく。最後の一頭だけは程々に血を飲ませてもらった。


「意外と薄味だな。なんつーか、希釈した果汁?みたいな」


 テイスティングを済ませて森へ分け行っていくと血のある方向に来たのかオークが3匹向かってきていた。


「よしよし、今日の狙いはお前らなんだ。狩らせてもらおう。ついでに新技を試そうかな?」


「氷槍」

 呪文を唱えると氷で出来た槍が3本浮かびオーク目掛けて飛んでいく。一本は頭に当たり即死、一本は腹を貫いて地面に縫われ、一本は腕に掠り抉り取った。


「わー、エグい。ていうかこれ、低レベルの魔法じゃないよな」


(マスターは真祖吸血鬼ですよ?レベルが1だろうがその辺の魔物など相手になりません。その上寿命がないため無限に強くなり、また眷族も増やすためその強さは比類ないと言っても過言ではありません)


 どうやら俺はチートな存在だったらしい。なんでこんなに力をくれたのかね、俺を転生させた奴は。

 腕を負傷したオークが逃げるのを見つつ腹に刺さったオークの首を捻り折り、2体を影に沈める。


「さてさて、あのオークは寝ている群れに案内してくれるかな?」


 走るオークの速度は然程速くなく、気配を抑えながらも追うことが出来た。やがて感じたのは複数の静かな気配、そして見えたのは村、と言っていいのか分からない程粗末な建物群だった。

 走るオークが群れに着く前に影で転ばせ、口を塞いだ後に首を裂いて血を吸った。


「見張りなんて上等なもんはさっき殺した奴らだったのか…。見張りが離れちゃダメだろうに」


 静かな気配を辿って眠るオークに近付き「睡眠(スリープ)」、深く眠らせてから口を塞ぎ首を切った。


「こうしてると俺は暗殺者か何かか…。まぁ適性はあるんだろうけど」


 最後に一際大きいオークも同じ様にしようとしたところ、建物に近付いただけで目を覚ました。


「ちっ。やっぱり訓練してない状態じゃあこんなもんか。いや出来すぎてたな。あとはこのナイフでどこまでやれるか」


「ブモオオォォォ!!」


 叫んでも誰も起きてこない事から全滅を悟ったらしいオークは鼻息荒く、側に置いてあった槍を掴みこちらに向かって来た。

 無詠唱で影で転ばせようとしたが引きちぎられてしまったことから瞬間的な魔力では足りないことが窺える。

 槍の間合いで片手突きを繰り出してくるのを内側に避けそのまま肉薄する。身体が開いているところに槍を持った手の方を斬りつけ、脇に転がり避ける。

 振り返ると槍を逆の手に持ち替えて此方へ突き刺そうとしているところだった。危うく当たりそうになりながらも倒れる様にオークの横側へと避けて脇腹にナイフを突き立てた。


「ブモォォ!」


「くそっ、抜けなかったか。そりゃあんだけ筋肉がありゃ当たり前か…。ヘルメス、オススメの戦い方とかあるか?」


(やはり血を使った攻撃でしょうか。血刃であればあの様に抜けなくなることはありません)


 なるほどと思いつつ使い方を考える。自分の血を思い通りに動く様に…この血袋から手首に吹き出す様に…。

 想像すればその通りに手首から血が吹き出して刃を形取った。既に固まり、切れ味もありそうだ。

 またしても突っ込んでくるオークの脇をすれ違い様に切り裂いた。容易く反対側に抜けた頃には臓物を地面に落としてオークは倒れた。


「ふー、なんとか倒せたな。何こいつ、上位種的なやつ?それとも正々堂々戦ったらこんなもんなのか?」


(恐らくハイオークでしょう。このハイオークを長に集落を作ろうとしていたと思われます。群れが増えて成長していたらオークキングにも成長し、街に被害が出ていたと推測します)


「なるほどね。俺は人知れず街を救ったかもしれないってか?他の冒険者は何をしてるのかね」


 誰にともなく文句を垂れつつハイオークの血を啜り、使った魔力を回復させてからナイフを回収し、影に沈める。


「結構な時間使ったけどかなりオークを狩れたな。最初のも合わせて…25匹か。金貨くらいになるんじゃないか?今日はもう十分だな」


 帰りはマップを見て来た道をそのまま戻っていった。森を出る頃には薄らと辺りが明るくなり始めていた。


「あーぁ、夜が明けちまう。でも金が入ったらもう少し装備を買えるかな?すぐには寝れんなぁ」


 門が開いてなかったので詰所から街に入り、ひとまず宿に戻ったがまだおっさんも起きていないようだ。


「起きてたら朝飯作って貰おうかと思ったんだけどな。裏借りて血抜きでもするか…」


 井戸のある宿の裏の端で1匹ずつ血を飲んでいく。宿側から物音が聞こえた頃には最後の1匹となって飲み終わるところだった。


「おっさん、ただいま。井戸借りてたぜ。このオーク、買うか?」


「……おう。兄ちゃん、おはよう。井戸はいいんだが、狩りってまさかオークか?てっきり夜目の効かない獲物を狩ってたんだと思ってたぜ…」


「いやぁ、オークの肉って旨いんだろ?なのに冒険者は普段大量には持ち帰れないって聞いてな。狩ってきた」


「まぁそれでいいならいいけどよ。じゃあ店で使わせてもらうわ。そうだな…銀貨4枚でどうだ?」


「解体してないのにそれでいいのか?あ、魔石はこれから抜くけど」


「血抜きがしっかりしてるからな。ギルドの中抜きが無い分それで十分だ。なんなら少し安いくらいだな。」


「解体料が掛からない分こっちも得か。よし売った!魔石抜いたらそのまま置いとくよ。ところで朝飯ある?」


「あぁ、一応出せるが…今日は昼は仕込みしなきゃな」


 悪いな、と謝りつつ手早く魔石を抉り出して宿に戻る。食事が出来るまで一杯貰うことにした。


「労働の後の一杯は格別だな。生きてるって感じがする」


「そらよかったな、お待ちどうさん。スープはこれからまとめて作るつもりだったからないがパンには肉の油を吸わせてやったから旨いぞ」


 出てきたのは切口から油を吸わせたパンとベーコンステーキだ。働いた後だから食えると思ったのだろう、ガッツリした内容だ。


「んー、このパンもいいツマミになるな。おっさん、もう一杯くれ」


「あいよ。こんだけ飲み食いさせるならオークの代金もっと減らせば良かったか?」


「それもそうだな。じゃああのオークは代金要らんから飯はお代わり自由にしてくれ」


「いいのかよ…。まぁ余程じゃなきゃこっちが得だしな、そうしよう」


 などと話しながら食事を終えて、ギルドへ金を作りに行くことにした。

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