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吸血鬼転生記  作者: 龍
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「やあ、気が付いた?」


(誰だ? いや、ここはどこだ? 俺は一体……。)


「あまり思い出そうとしない方がいいよ。無理すると君は消えてしまう」


(なんだと? 状況が分からんな。)


「君はこれから別の世界に行くんだ。まるでゲームの様な世界にね。魂を別の器に入れる為に今は精神体なんだ。だから精神に負荷をかけるとそのまま消えてしまう」



 真っ白な空間にいるような視界でどこにいるかも、声の主も分からない。自分のことも思い出せない。



「君の望んだ器は出来た。さぁ、約束だ。後は頼んだよ」



 声が遠くなっていく……。俺が望んだ、か。嘘か誠か、俺が望んで今の状況か。ならそんなに悪くはならないかな……。





 目が覚めた。知らない天井だ。てか天井近すぎない?


(棺桶の中で寝てますから当然です)


 おっと、また別の声か。え?棺桶?


(私はナビゲーションシステムです。マスターに望まれて生まれました。マスターの器は吸血鬼ですので棺桶の中に寝かせられています)


 ほう、ナビに吸血鬼ね。俺が望んだんだし当然だが俺好みの設定だ。

 棺桶の蓋を押し開けるが外も暗い、と言うか洞窟?の中らしい。種族的な理由か、よく見えるが。


(ナビさんよ、俺のステータス的な物って出せるかい?)


(手の平を上にしてステータスと念じてください)


(「ステータス」)


(名無し)レベル1

種族 吸血鬼

HP 100 MP 600

力 60 魔力 120

スキル

 魔力操作 真祖

称号

 異世界神の加護 真祖吸血鬼



(おぉ……。なんか凄いんじゃね?レベルとかあるのはゲームっぽいな。でもステータスが簡素過ぎないか?)


(マスターの考えるステータスは主に力と魔力に集約されます。敏捷や頑強などもその二つから算出されますので)


 なるほど、言われてみればそうかもな。というか、魔力操作は分かるが「真祖」ってなんじゃい。


(マスクデータがスキルに表示されているようなものです。「真祖」は吸血鬼の弱点無効、特殊眷族作成、闇系統魔法適正などが統合されています)


 なるほどねぇ。さりげなく思考読まれてるなぁ……。まぁ便利だしいいけど。空気の読めるナビさんだしね。


(ナビさんよ、ところで俺らの名前は?)


(まだ有りません。魔力を使って名付けることを推奨します。)


(魔力の使い方とか知らんのだが?)


(魔力操作、及び魔法はイメージです。人によって扱い方は変わるので試行錯誤してください)


 ふむふむ。ならまずは体内の…これか。心臓の辺りから勝手に流れてる血の様な感じだな。吸血鬼だからか血をイメージすると動かしやすいとか?


 魔力を指先に溜めながら空中に文字を描いていく。血をイメージしたからか濃い紅で描かれた。


「我が名はヴァン。真祖吸血鬼のヴァンだ」


 続けてもう一つ。


「我に眠る其の名はヘルメス。知の化身也」


 体から力が抜けるようだ……。うぇ、ステータス見たらMP空っぽじゃん。


(私にまで名前を付けるからです。仰々しくしただけあって格のある名前になりましたね。私も自我が生まれましたよ。これからもよろしくお願いします、マスター)


 ナビさん、ヘルメスには名付ける必要なかったのね。まぁ結果的に良い方向に向かったみたいだしいいか。


(ところでヘルメス、MPの回復はどうしたらいいの?)


(休息や食事、薬によって回復します。マスターの場合は生き物の血が手っ取り早いでしょう)


 なるほどね。魔物を狩って血を吸えと。レベル1にはハードかもな。


 洞窟の中を歩いていくと外に近い辺りから声のようなものが聞こえてきた。どうやら浅い洞窟だったようだ。


「グギャギャ、グギャ」

「グギャギャギャ」


(わーお、定番のゴブリンさんだね。これなら何とかなるかね、ヘルメス?)


(ゴブリンなら成人男性なら殴り勝てるレベルです。ちなみにマスターは吸血鬼としてそれなりに力が強いです)


 ヘルメスの言葉に安心して近寄る。勿論背後から。一体に向かって後頭部を思い切り殴りつけると、首が折れる音がした。


「いやー、思ったより力強いね。楽勝ってやつ?」


 慌てて他のゴブリンも気付いて棍棒を振り回し襲いかかってくる。残り二匹。


「うーん、遅いかな?かなり俺の目もいいみたいだな」


 観察しながら余裕で躱していく。体捌きとステップで十分翻弄した後に、倒した一匹の棍棒を拾う。

 武器を持たれたことでゴブリン達も少し距離を取るがそんなことはお構いなしに力強く踏み込み、振り下ろす。棍棒とゴブリンの頭蓋骨が同時に割れた。


「うーむ、グロい。でもグロ耐性もある感じ?殺しもいけるしサイコなのかな俺」


 呟きながら片足を下げつつ後ろのゴブリンの胸に肘打ちを当て吹き飛ばす。起き上がってくることはなかった。


「まぁこれから血も吸うんだし幸いと思っておくか」


 最後に吹き飛ばしたゴブリンの頭を持ち上げ、首に噛み付く。これが正しい飲み方だと本能的に分かった。


「いや、まずいっつーか臭いな。安酒と一緒なら飲めるかって感じだな」


 それでも持ったゴブリンが干からびるまで吸った。そのまま胃に行くというより身体に吸収していく感覚だった。


「血を飲むだけならいくらでもいけるな。五臓六腑に染み渡る感じ?」


 残る二匹の血も吸い切ったところでステータス確認。


「ふむ、回復量は三割程度か。多分これ割合じゃないよなぁ」


(対象の保有魔力に左右されます。ゴブリンは少ないですがマスターもレベル1ですから)


 そんなもんかと思いつつ洞窟の外に出る。


「森の中……か。ここは崖肌にある洞窟、と。まずは人里に行きたいところだけどな」


(ヘルメス、現在地とか地図とかそういうのないの?)


(マスターが通った道をマッピングは出来ますがこの世界の地図情報はありません)


 楽が出来ないと分かったところで少し落胆しつつ歩き出した。崖に垂直に進めば森を抜けると信じて。

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