昔の記憶と知らない記憶
あれは小6の時だった。
僕は外で男友達と一緒にサッカーをしていた。するとそこへ、
「誠二君。これ着てみない?」
俺に声をかけてきた女の子。その女の子は僕が好きだった子だ。胸がめちゃくちゃドキドキする。僕はその子が持っていたものを確認せず「はい!」っと言ってしまった。
女の子に連れてこられた場所は体育館の裏側。薄気味悪くてちょっと怖い。
「じゃあ早くここで着替えて。」
渡されたのは女の子用の服だった。
「これを?」
「うん、それを。」
ちょっと恥ずかしかったが僕はその子に言われたことを実行した。
着替えが終わりその子に見せると、
「う、うわ~!超可愛い!!」
僕はうれしかった。可愛いって言われたことなんて家族以外誰もいなかった。
「え、えへへ、ど、どうかな?」
もう一回言ってほしいため、僕は聞いた。
「う、うん!超可愛いよ!!」
僕はうれしくてうれしくて仕方がなかった。
「そのかわいさなら大丈夫だね?」
「なにが大丈夫なの?」
「いいからいいから!」
僕はその女の子に腕を引っ張られ、そのまま学校から抜け出してしまった。
「ね、ねぇ戻ろうよ!まだ休み時間なんだよ!学校から出ちゃったらやばいって!」
どんどん学校から遠ざかっていく。
「ねぇ!ねえってば!」
僕はあの時にこの服を着なければよかったのだ。この服のおかげで僕は・・・
「たっだいま~!」
ここはこの子の家?
「あらおかえりなさい〇〇〇ちゃん!ささ!2階に上がって!」
僕はこの子に対する感情以外のドキドキもあった。『好きな女の子の家に上がれるなんて嬉しい!』『学校大丈夫かな?』今はまだこの2つのドキドキだけ。
「誠二君、大人の遊びって知ってる?」
大人の遊び?僕はまだ小6。純粋な心を持っている。そんなもの分かるはずがない。
「なにそれ?ゲーム?」
「違うよ。それ以上にもっと楽しい遊び・・・」
女の子が服を脱ぎ始めた。僕は目をつむった。
「な、なにしてんの〇〇〇ちゃん!」
「これからが楽しみなのよ。」
何もわからないのに僕にはいやな感情があった。『やばい、このままじゃやばい!』恐怖だけが僕の心の中に残っていた。
「ちょっと上からどけて!今日は大事な日直の日なの!早く戻らなきゃ先生に怒られちゃう!」
必死に抜け出そうとするがなかなか抜け出せない。
「全く~。誠二君ったら、どんだけ私の〇〇〇がほしいの?」
もう嫌だ!怖い!助けて!
「い、嫌だ・・・!だ、誰か助けて・・・!」
大声で助けを呼んでも誰も来てくれない。
「全くそんなに大声出さないの。私の可愛い可愛い誠二君。」
ひ、ひぃ・・・!
僕は父母に言われていたことを思い出した。
『いい?いざとなったら超能力を使いなさい。いざという時だけよ。その時以外に使っちゃだめよ。』
今この瞬間がいざというとき。
「ご、ごめん〇〇〇ちゃん!」
僕は超能力の力を使い、女の子を空中にとどめた。その女の子は驚きもせず、あばれもせず、ただ空中で顔を下に向けたままなにかぼそぼそと言っていた。
僕はそのことなんか気にせずこの家から学校まで走っていった。
校門には先生が立っており、叱ろうと思ってた先生は僕の服装と泣いている顔を見て表情が変わった。
「ど、どうしたのその格好!なにがあったの!?」
僕は泣きながら答えた。
『〇〇〇ちゃんに変なことされそうになった』と。
その後先生と一緒に〇〇〇ちゃんの家に行った。だがチャイムを鳴らしても誰も降りてこない。
僕と先生は家の中に入った。中にも誰もいない。先生がしゃがみこんできて僕に言ってきた。
「誠二君、その女の子はね。5年前に死んじゃったのよ。で、その女の子はあなたのことが好きとか言ってたらしいのよ。人形にして置いときたいとか変なことを言ってたの。だけどその恋が行きすぎちゃってね。自殺したのよ。その時その女の子の体に数えきれないくらいの傷があったらしいの。ごめんね誠二君。変なこと言っちゃって。まだ12歳のあなたには早いわよね・・・」
僕の背筋がゾワッとした。あの女の子は死んでいた。ということは僕は霊に恋をしていた。学校のみんなはそれを知っていたのか?なぜそれを教えてくれなかった?何故そのことを僕はわからなかった?
それになぜだろう。その女の子に見られてるような気がする。
「これが僕が女のことが嫌いになった理由ですね。」
「なんであなたはこんなので女装することがトラウマになるのよ。」
確かにそうだな。
「なんでだろうな?僕にもわからん。」
「もしかして誠二君は女装がトラウマなんじゃなくって女の人がトラウマになっただけじゃないんですか?」
はぁ・・・あ。
「そうじゃん。」
「「馬鹿だな」」
「その子はどこへ行っちゃったんですか?」
「今僕の隣にいるよ。」
エルフはその場で腰を抜かしてしまった。だがめぐりは何も言ってこない。
「どうしたんだめぐりさん?」
僕が聞くと、
「私との記憶はどこへ行ったの?」
お前との記憶なんぞ最初っからないわい。
「そんなんねーよ。」
と言った瞬間にバッグからナイフを取りだしたかと思えばそのまま僕の首元に刺そうとしてきた。
「私と・・・!私と約束したことを忘れたって言うの!?」
「い、いやだから知らないんだって!いいから早くナイフをしまって!!」
エルフはいつの間にかその場からいなくなっていた。
「今!今ここで殺してやる!!殺してやる!!」
あ~もうだめ!死ぬ!死んじゃう!
ん?なんだこのいい香りは。あれ?なんだか心の中が落ち着く。
「へへ~。間に合ってよかったです。」
エルフが何かを手に持って戻ってきていた。
「あ、これはですね。癒し草といって心の中を癒してくれる草なんです。私の故郷だといっぱい取れるんでね。」
は、はぁ助かった~。
「その故郷はなんメートル先にあるの?」
「2キロさきですかね?」
早すぎるだろ!
おっとめぐりさんがぐったりしておりますね。
「おーいめぐりさーん起きてくださーい。」
心地よさそうに寝ている。
「あっちゃー、やっぱりですか。」
「どうしたの?」
「いやですね。この癒し草には難点があって、すっごい機嫌悪い人に嗅がせると寝ちゃうんですよね。」
なんだよそれ!
「んじゃどうすんだよこいつ!」
エルフは思いついたらしい。
「あなたがおんぶして家まで送ってあげればいいじゃないですか!」
「馬鹿じゃないのかお前!こいつの家なんかわかんね~ぞ!しかもこの格好で行くなんて・・・!」
僕は帰ろうとしたが止められた。
「なんですか!女の子には優しくしてあげてくださいよ!それでも男ですか!?」
僕はそういう言葉に弱い。
「でも僕は女が苦手なんだ!そんなのまっぴらごめんだ!」
そうだ、僕は女が苦手だ。
「あ~そうですかそうですか。だったらそのまま帰っちゃってくださいこのくそ男。」
「おい、最後なんつった?」
「くそ男といったんですが。なんか文句ありますか?」
もう無理!!限界!!
「あ~もう分ったよ!送ってけばいいんだろ!!」
わからない。
「そうですか。ならよかったです。ではさようなら~。」
分からない。
「はいはいじゃあね。」
何故僕はこんな行動をしたんだ。いつもだったら何も気にせず素通りするのに、しかも女だぞ。こんなクズな僕がこんなことするはずがない。あのやろうなんかしやがったな。
「は~。仕方がないか。」
僕はおんぶした。だが問題を思い出した。
「あれ?こいつの家、どこだっけ?」
仕方がないから公園のベンチにでも座ってこいつが起きるのをまつか・・・
私は目が覚めた。
「よ、起きたか。」
とても寝心地がよい。
「まさかあなた。私が許したとでも思ってるの?」
「そんなこと言って、お前顔笑ってるぞ。」
私は顔を伏せた。
「早く行くぞ。お前を送らないとエルフさんが怒っちゃうからな。」
私はこの人に甘えたくなった。
「起きたばっかりだからおんぶしてくれない?」
「はいはい。」
この子を背負っていると懐かしい感じがする。
「あなた、また泣いているわよ。」
後ろからめぐりが手鏡を見せてきた。
「な、泣いてないよ!」
涙を拭うため、めぐりには一度降りてもらった。
「あなたは昔っから変わらないはね。ほんと涙もろいんだから。」
「うるせぇ!僕はお前と会った記憶は一欠片もないんだよ。ほら、早く後ろに」
「いいわ、ここまで送ってくれたし、もう自力で帰れるから。」
ふぅ、これで僕の仕事は終了。
「分かった。じゃあな。」
「次、次私が昔の記憶のこと聞いたときに覚えてないとか言ったら本当に殺すから。」
「はいはい、分かりましたよ。」
僕が家に帰るともう21時を過ぎていた。
お母さんが僕のことを玄関まで迎えに来てくれた。
「誠二・・・」
「はい・・・」
「後でリビングきなさいね」
「・・・はい」
2時間怒られた。