豆腐のハンバーグ(あんかけ)
俺の名前は 鈴木五郎。 飯屋の店長だ。
「暑いな、スゲー暑い」
夕方の昼飯時が終わって客がみんな帰ったあと俺はつぶやいた。ずっと料理を作り続けて、火の前に立っていた俺はそんなことを言った。服の下は大洪水だ、びちょんびちょんのトロトロだ。まるで服を着たまま海に入ったようなそんな感じ、もしくは女戦士VS触手の戦った後のようだ。俺が女戦士だ。
「そんな気持ち悪い組み合わせ考えるのを止してください。思わずグーパン入れたくなるよ」
「この前入れただろ、俺の顔面にあれは。それにあれは事故だよ、事故。たまたま俺のズボンが洗濯に出しあたって無かったんだからしょうがない」
「やっぱりグーパン入れます。慈悲はない」
ニンジャ、ニンジャナンデ!?アイエー!!と言う暇なく俺は殴られた。しかも息子だ。本当に慈悲はなかった。ソフィーヤもグーパン入れた後ぐたっりしていた。
そりゃそうだ、11時から17時まで人が絶えずきて俺たち二人ですべての客を相手にしたんだから。18時になって最後の客を「オタッシャデー」と見送った瞬間、俺とソフィーヤは「閉店」の看板をつるして今に至る。お客様は神ではない。
「ソフィーヤさん、それはだめだ。息子だけはだめだ」
「いいじゃないですか。使い道がないものをぶら下げといても意味がないよ」
心にくる言葉だ。胸を抉られる気分というのはこんな感じなのだろう。
「昔はもっと静かな子だったのに、今では店長に手を挙げる始末なんてこった。でかくなったのはおっぱいだけか。糞ったれだ」
「昔って3年も前のことだろ。あの時はまだ14よ、私。そんなのもう関係ないよ。それよりも今日は本当に閉めちゃっていいのか?お客様はかみさまだろ?」
「いい、いい。もう冷蔵庫空っぽだし、出せるもんだってねーよ。あと俺は無神論者だ。神はいねー」
「それは困る。今日のご飯がないじゃないか!!」
こんな時だけ食い意地が張ってやがる。だが、飯が食えないのは俺もヤダ。高校で好きな女の子がノーパンで登下校するくらいヤダ。いや、それはそれでありなのか。
ソフィーヤも今日はよく働いてくれたし、どうするか外食でも悪くはないんだが。外食をするとつい自分の料理と比べてしまう悪癖を持つ俺はこの一帯の料理屋からは出禁だしどうしたものか。
「いや、出禁は店長が確実に悪いよ」
「まずい料理を出されたら誰だってイチャモンつけるだろう」
「いや、イチャモンつけるだけならまだしも厨房にいきなり入って。俺が本当の料理を見せてやるなんて、普通はやらないよ。どこぞのグルメ漫画じゃあるまいし。」
そんなことやったけか。でもそれはどんな料理人の性であろう、だから俺は謝らない。絶対にだ。
「とりあえず、冷蔵庫に入ってるものを見てみよう。何も作れそうになかったら何か買いに行けばいいじゃないか、お前が」
「買い物になんていけないよ。もう足がパンパンだよ」
さて、どうしたものか。冷蔵庫の中にはっと。
卵、レンコン(ほぼない)、玉ねぎ(ほぼない)、ひき肉(100gほど)、常備してある豆腐。
いけるか?2人前作るのに少し肉が心もとないが。幸い米はまだあるし、みそ汁はソフィーヤに作らせようインスタントを。
さてと、まずは豆腐、ひき肉、塩、こしょう、卵、パン粉、片栗粉、レンコン(レンコンは事前に5cmくらいに切っておく)を入れてよく混ぜます。おいしくなーれ、おいしくなーれと。途中で手に白い奴が付くけど捏ねてるうちになくなるから。次にフライパンに油をひいて焦げ目がつくくらい焼く、ひっくり返したら、弱火にして、ふたをして中まで火を通しながらかけるソースのほうを作っていく。ちなみにうちの店の豆腐ハンバーグには大根おろし、デミグラス、和風キノコ、カレー、梅肉がある。今回はキノコなしの和風あんかけで行こうと思う。まず玉ねぎを溶けやすいように少し小さめににカット、そして麺つゆ、みりん、玉ねぎを少し煮て片栗粉をとろみをつければ完成。
「ほら完成だ、五郎特製の豆腐のハンバーグ(あんかけ)。冷めないうちにパクッとやってくんな」
ご飯をよそり、ソフィーヤの前までもっていった。
「いただきまーす」
よほど腹が減っていたのかソフィーヤはパクついた。
「おいしい。甘じょっぱい餡が豆腐ハンバーグに絡みついてご飯が止まらないです。餡の中の玉ねぎもとろとろになって絶品です」
「玉ねぎは量が少なかったから触感を捨ててわざとトロトロにしたんだが気に入ってくれたか」
「はい。とてもおいしいです」
トロトロにしたのは女戦士のくだりを思い出したからなんだが黙っていよう。
「さて、俺も食べるかな」
箸を取ろうとした瞬間、ドアのほうで声が聞こえた。
「おーい、開けろ。まだ閉店じゃねーだろ!!」
佐々木の爺さんのドンドンドン!!とドアをたたく音が聞こえる。
「ソフィーヤ。食事の時にあってはならないことは何かわかるか?」
「まずいこと。うるさいこと。邪魔されることだったか」
「そうだ。あいつの息の根を止めてくる。常連だろうが年寄りだろうが関係ねー」
と言って五郎は走って言った。
Дурака учить - что мертвого лечить(バカにものを教えるのは、死んだ人間を治療するようなものだ。)ソフィーヤはそんな事を考えていた。
なぜなら、いつも五郎は佐々木の爺さんに喧嘩を売っていつもぼこぼこにされるのに今日もまた同じことをしようとしているからだ。
ソフィーヤ(食べたら傷薬は準備しないといけないかも)
喧嘩を止めようとは考えていなかった。




