Ⅶ話 新相棒!
ラファエラの付き人になればいい!
俺は彼の言った事がよく分からず、状況を飲み込めなかった。
「……は?」
「えっ……あのゼウラ様、それはどういう――?」
アテメは張り詰めた表情でゼウラに問い詰める。
「だから、そのまんまじゃ。ラファエラと共に人間の願いを叶える仕事の補佐をしてもらう。丁度大天使のミカエラが失踪してからあいつの相棒はこの300年間誰も付けておらん。どうやら彼(天都)は……」
そこまで言って、ゼウラは表情を曇らせて口を閉じた。
「そんな……人間にそんな事――!もしもこちら(天界)の事を言いふらされたりでもしたら――!」
アテメは怒っているというより、何かを心配しているようだった。
「大丈夫、彼はきっと、何も言わないでいてくれるだろう」
ゼウラは唖然とする俺の方を見て、にっこり微笑んでみせた。
「もちろん、君にも゛義務゛があることは知っている。学校や、塾や、部活。君が天界の仕事を優先してまで義務を疎かにさせるつもりはない……」
ゼウラは続ける。
「もしも君に時間のゆとりがあるのなら……ここに来て、天界で共に学んで欲しい」
俺は黙ったまま、ゼウラの顔を見つめた。
どうしようか……
その時だった。
ガッ
「おい!お前!」
背後から聞き覚えのある、あの声。
「ちょ……っ!ラファエラッ!?いきなり入ってきて無礼よ!」
「うるせー、今それどころじゃねぇ!」
やっぱりラファエラは口が悪い。
「どういうことだ。ドアを開けようとしたら付き人の話が挙がっていたが」
彼は俺を軽く睨みつけると、ゼウラの瞳を真っ直ぐ見た。
「知っているなら話が早い。君に要約相棒をつけようと思ってね。上手くいけば神職に就ける。どうだ?悪い話ではないだろう」
「冗談じゃねぇ!何で俺がこんな奴と……!」
「俺もまだ決めたワケじゃ……っ」
「そうですよ!人間に相棒だなんて……っ」
ラファエラも俺もアテメも、次々文句を口にした。
不満をたらたら押し付けられるが、ゼウラは気にしない。
ラファエラは怒りで大きな羽をバッサバッサした。
「言っておくが、俺は相棒を金輪際一切つけない!」
俺はさっきチラッとしか聞いていなかったが、失踪した相棒の事を引きずっていると察した。
さすがにこれには俺もムカムカした。
いきなりきた人間に、一緒に仕事をしろだなんて、確かに無茶な話だ。
「ミカエラが居たからか?ミカエラに悪いと思ったか?」
「……」
ゼウラはため息をつく。
ラファエラは黙りこくったままだった。
俺にはよく分からないが、多分ミカエラとは失踪した相棒の事だろう。
「本当に……ミカエラはそれを望んだか?」
「……は?」
ゼウラは穏やかな表情から一変、鋭い眼差しでラファエラを見据えた。
それにはラファエラも動揺し、一歩退く。
「ミカエラは、君に相棒をつけて欲しくないと思ったのか?」
「……それは……」
『ラファエラ。僕は多分もう帰ってこない。だから。君も、新しいパートナーと一緒に、僕の分まで大天使の仕事を続けて――……』
「あいつ……」
ゼウラは、何もかも、俺のことも全て見透かしているようだった。
否、正確には何もかもお見通し、ってことなのだろうか?
「まぁ、明日から一日体験としてよろぴくー」
さっきまで格好良かったゼウラはまたおじさんのように戻った。