Ⅵ話 ラファエラの苦悩
一方、その頃人間界では
「くっそー、あいつ何なんだよー!天界に行っちまったのか?」
祠を封印し忘れたため、天界の道は開いたままだった。
つまり、あの少年は天界に行ってしまったという事……
俺は穴に落ちたあの少年をどうするか悩んだ。
多分人間は目立つから、ゼウラのところにでも保護されたんだろう。
そして事情を吐き出されて……あいつは多分俺の名前を出す。
んでもって、責任取らされて人間界に行けなくなる。
そして温泉の計画は無しにぃ――!
「俺はただ温泉に行きたかっただけなのによー!何でんなことに……」
とりあえず一旦天界に戻り、さっきの少年を探して人間界に帰そう。
俺は勢いよく祠に飛び込んだ。
同時刻、天界で。
「ラファエラが来るまでこの子は保護しましょう。あいつが帰ってきたらゆっくり話をして解決しますか」
アテメはペンを走らせ、何かを書類に書き込んだ。
彼女の表情が強張り、かなり怖い。
なんか、浮気がバレた彼氏を怒る彼女みたいっていうか……
口は笑ってるように見えるけど、目が笑っていない。
しかも、かなりドス黒いオーラが出ている……
もしもあのラファエラって天使が処刑とかされたら……
あの時しがみついて暴言吐いた俺も悪いわけだし……
涼しい部屋なのに、じっとり額に冷や汗が滴ってきた。
このまま人間界に帰りたいけど、これじゃあ夜も眠れそうにない。
正直に白状した方が……
「すみません……そのー、やっぱりラファエラ?さんだけに責任は……」
「?」
俺は遂に、罪悪感が拭いきれなくて正直に話した。
「ちょっと口喧嘩になって、彼にしがみついたんです。それで……」
「口喧嘩?はーぁっ……、ラファエラは口が悪いから……やっぱりラファエラが悪いんじゃない。喧嘩の元凶は知らないけれど……」
アテメはため息混じりに呆れた様子で言った。
「そうかそうか。じゃあ責任は『はんぶんこ』じゃな」
「……えっ?」
「は、はんぶんこ?」
責任を取るとは、一体どういう事なのか想像する。
トイレ掃除とか?ゼウラさんの肩もみとか?
「しかし……っ!彼は人間であり、まだ少年です。責任は――」
「ラファエラも1000歳だが、まだまだ少年。別に重い責任はとらせん」
ゼウラはアテメの反論を遮るように、穏やかな口調で言った。
あいつ、1000歳なのに少年なのか……
つーか、天界の神に寿命ってあるのか……?
「あの……具体的に責任を取るって、何をすれば……?」
俺が恐る恐る聞く。
ゼウラは口角を釣り上げ、二ヤッと微笑むと
「君が今日からラファエラの付き人になればいい!」