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3話

翌日は昨日のテンションのままとはいかず、まずはゆっくり休むことにした。いやぁ、最近本当に疲れてたんだよ。まずはグダグダするべきよ。お財布に優しいサイズ感のお部屋だけど、意外とベットがふかふかなのだ。三度寝かまして、その後もゴロゴロしていた。お昼になってそろそろ行動するかーと、身支度しー、宿の食堂でごはん食べー、散歩がてらウロウロしー、どう商売していくか考えー、黒い笑みを神様に怖いって言われながら1日を過ごした。商売と言ってもまぁお金は神様になんとかしてもらえるし計画性はない性分だから行き当たりばったりでいいだろう。明日からでとりあえずやってみよう。


翌朝、さっそく商売開始だ!!と意気込んで準備し、拠点に決めた噴水の広場へ行く。昨日と同じく噴水の縁に座り、人間観察を始めた。


『あれ、薬は売らないのかい?』


神様に言われたが、


「変な物を売りつけるにはタイミングがあるのだよ。」


私は偉そうに呟く。暫く待ってみて、ターゲットを絞れた。そろそろ声かけるかな。すくっと立ち、目をつけていた青年に後ろから声をかける。


「ヘイ。そこの青年!青春してますカー?」

「おわっ!なんだあんた。」


驚いた青年に上から下までじろじろ見られる。ハイ。私怪しい人ですよー。


「私、ただの外国人。青年、さっきからそこを行ったり来たりネ。女の子に振られたカ?」


怪しいついでに片言でいこう。


「ちっ違う。まだ振られてなんかっ。てかあんたに関係ないだろ。」


やっぱり恋愛か。ちょっと睨まれたが気にしない。


「向こうを見て、ため息ばかりデース。もしかして花屋にいる子狙いカ?青年には、ハードル高いデース。」

「余計なお世話だよっ。今日こそレナをデートに誘うんだ。邪魔しないでくれ。」


邪魔ねぇ?苛ついた青年、実は広場に来たときからそこにいた。花屋に行こうとしては戻ってくるを繰り返しているので気になっていたんだ。花屋の店先で作業してる女の子結構かわいい顔してるからそうだと思ったんだよね。


「そう言ってずっとここ、うろついてマース。誘う気あるのカ?」

「うっ。それは、その。」


顔を赤くしてなんだかもじもじしだしたよこの子。ヘタレなのか。さっきの勢いどうしたよ。


「ハァ。仕方なイ。青年にぴったりの薬あるヨ。使ってみるカ?」


てぃりりりってぃりーん、とセルフ効果音を言いつつ、ずいっと青年の目の前へ薬を出す。事前に準備していた小さい瓶に入った薬、別名「ただの井戸水」。私が販売するなら、薬の効能は普通の薬じゃできない不思議なものにしようと決めていた。これなら人の悩みを聞いてついでに解決の手助けもできちゃうんじゃないかと考えたのだ。瓶の中身は飲んでも大丈夫なように食紅みたいなものでつけた赤色だ。薬を出すとき、飲んだ人間が「少しの間どんな状況でもリラックスする」という効能を神様にチョチョイとつけてもらう。


「薬って…そんなもの使えるか。大体なんだこの怪しい色。」

「オウ!この飲み薬ちょっとだけ勇気出る薬ネ。体にも無害ヨ。これを飲んだら、デート誘えるネ。」


青年は目の前の小瓶を受け取り、瓶を光に透かしたり、振ってみている。お、ちょっとは興味持ったか?


「デートに誘える?!ほ、ほんとに効くのか?毒じゃないのか?」

「私が飲んでも平気デース。」


もうひとつ同じ瓶を取り出し、中身を飲んで無害なところを見せる。なんともなさそうな私を見て乗り気になってきた青年が聞いてきた。


「じゃあ、ほれ薬とかは・・・」

「そんな都合のいい薬あるわけないだろ。」


ぴしゃり、と素で言い放つ。いくらなんでも人の心は変えられない。恋愛は自力でなんとかしないとね。まあ、今の薬でも十分都合がいいけど。ニコッと笑って青年にこの薬の素晴らしさを吹聴する。


「あくまで、ちょっとだけ勇気が出る薬デース。ケンカの仲直りをするとき、悪口言われてる友人を庇うとき、男に囲まれた女の子を救うとき、果ては正義を貫くヒーローの一撃まで、ちょっとの勇気で大成功デース。勇気が出れば意外と何でもできてしまいマース。後悔する前に実行あるのみデース。早くデートに誘わないと他の男に告白されちゃうかもしれまセーン!」

「うっ。まぁ、目的はデートに誘うことだしな。じゃあそれくれ。」

「今日は特別価格の500ウェンネ。」

「なんだよ金取んのかよ。じゃあいらな、」

「あー、花屋のレナちゃんとかっこいい男がお話シーテールー!」

「くっ、買う。買うよ。早くその薬くれっ。」


タイミング良く花屋にお客さんが入っていったのを報告すると、焦った青年から500ウェン分の硬貨をもらう。やったー!初めての儲けだぁ。


500ウェン=500円なので、この辺の物価がどうかはよくわからないけど、ちょっと高い栄養ドリンクくらいだよね。それでデートに誘えるんなら安いもんよ。


慌てたように薬を飲む青年にお礼を言う。


「毎度ありィ!アリガト、アリガト、オブリガードー!それ飲んだら、すぐに行ってくださイ。」

「わかった。今日こそがんばるよ。」


青年は今度こそ駆け足で花屋へと向かって行った。



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