魔術習得&ゴールドスライム
今日は、魔術を教えてもらう。
ユリーカに。
有り余る魔力は、使わないともったいない。
それにWANTED戦では魔術がダメージを与えやすいだろうし。
首をはねても死なない(壊れない)化け物がいるなら魔術だって必要になる。
それに、「無属性魔術」だってどんなものか気になるしな。
しかし、ユリーカはまだ寝てる。
いつもは俺が叩き起すんだが、今日はこいつに魔術を教えてもらう。
不機嫌にしてはダメだろう。
朝食を食べに行くか。
まだ朝だから多少人が居た。
殆どが宿泊客だ。
多少仲が良くなったやつもいる。
そいつはもう出かけたらしいが。
まあ、昨日俺がWANTEDを倒したことを聞いて悔しそうにしてたからな。
サンダーダンサーを倒しにでもいったんだろう。
あいつの実力は知らんが、五体満足で逃げ帰ることはできるだろ。
朝食を食べつつ、ミリアさんの冒険者時代の話を聞く。
ミリアさんは「水形剣技・天級」の実力を持ってたそうだ。
水形剣技とは、相手を油断させて隙を作り攻撃する技らしい。
天級とはその流の全ての技を使える者に与えられる級だ。
ミリアさんの実家が水形剣技の道場らしい。
だから冒険者時代は無茶苦茶なことをやっていたらしい。
稼いだ金額は100000ロム。
なんで引退したのかを聞くと、油断してポイズンスネークの毒牙に噛まれたらしい。
ポイズンスネークは巨大な毒蛇らしい。
天級でも油断することがあるのか。
そんなことを話しつつ、部屋に戻る。
するとユリーカが頬を膨らませてベッドに座っていた。
なんで怒ってるんだ。
「なんで怒ってるんだ?」
「ご主人様が一人で朝食を食べに行くからでしょう。起きたら居なかったからビックリしましたよ」
「…悪かったな」
「ご主人様はもっと思いやりという心を持ったほうが良いですよ」
「そうか、まあ善処しておく」
「まあ、いいでしょう」
思いやりの心は持ってるがな。
まさかこんなことで怒るとは…。
やっぱり、寂しがり屋の線が濃くなってきたな。
おっと、本来の目的を忘れるとこだった。
「ユリーカ、魔術を教えてくれ」
「いきなりどうしたんですか?」
「覚えたいからだ。損はないだろう?」
「そうですね。では教えてあげましょう。それでは外に行きましょうか」
「なんでだ?」
「ここでやったら、ご主人様の魔力で建物が壊滅するからです」
「…じゃあ外に行くか」
ロクトム山に行くことにした。
これから魔術を使えるようになると思うとドキドキが止まらない。
少し歩き、山の中に入った。
ついにこの時が来た。
待ち望んでいたこの時が!!
「それではまず、ご主人様の使える属性を調べましょう」
「どうやって?」
「私の能力で調べられます。しばらくお待ちください」
待つこと五分。
俺が使える属性が判明した。
俺が使える属性は…全属性使えるらしい。
「ご主人様って本当に人族なんですか?」
「完璧な人間だ」
「人間が全属性使用はありえないんですけどね」
しかし全属性使えるとは。
こりゃ人間じゃなくなる日は近いな。
「で、最初は何やるんだ?」
「そうですね。風属性の魔術から始めましょうか」
「なんで風属性から?」
「一番簡単だからです」
「なるほど」
上位属性の空属性からは無理だからな。
風属性で出来ることってなんだろうか。
あまりイメージが湧かない。
「下級魔法ブリーズを使いましょう。詠唱は「微々たる風 ブリーズ」です」
「微々たる風 ブリーズ」
手からふわっとそよ風が発生した。
本当にわずかな風だ。
涼むためにあるような感じの魔術だな、これは。
「こんなんじゃなくて、もっと使えるのはないのか?」
「わがままですね。ブリーズだって使い方次第で必殺技になるんですよ?」
「それは分からないでもない。だがもっといいのを教えろ」
「では、炎属性を教えてあげましょうか」
「頼む」
「詠唱は「地獄の炎 ヘルブレイズ」です」
「ちょっと待て」
「?」
「それ最初にやるような魔術じゃないだろ」
「バレましたか」
なんで嘘つくんだよ。
山火事でも起こすつもりだったのか!?
「本当の詠唱は?」
「灼熱の火球 ブレイズボール、です。炎属性は攻撃魔術ですから魔力を抑えてくださいよ」
「分かった。灼熱の火球 ブレイズボール」
野球ボールほどの大きさのをイメージしてやったらサッカーボールほどの大きさのやつが出現した。
消し方が分からないから、地面に撃ってみた。
見事に燃え始めたから、ユリーカに水魔術で消火してもらった。
「ちゃんと圧縮してください」
「悪い悪い」
魔力を属性に変える時の感覚が慣れなくて、つい。
人間慣れないことをすると事故を起こす。
今回のは事故だ。
「通常属性の魔術全部教えろ」
「はいはい」
こうして俺は通常属性の初級魔術を全て習得したのだ。
昼になった。
せっかく魔術を覚えたのだし、魔物と一戦交わえるか。
「さて。遠見」
無属性魔術、初級。
遠見。
その効果は、視覚を操り物を見透かしたり遠く離れた場所にあるものを見ることができる。
この魔術で魔物を探す。
歩かなくても良いというのが便利なところだ。
五百メートルほど離れたところにとんでもないものを見つけた。
ゴールドスライムの巣だ。
ゴールド狩りだ!
「ユリーカァァァ! ゴールドスライムの群れだ、狩るぞォォォォォ!」
「は、はい」
興奮しながらもゆっくりと近づく。
一匹のゴールドスライムが巣から出てきた。
ゴールドスライムの巣は洞窟だから突入は簡単だ。
何もかもが上手くいく。
「まず一匹目。灼熱の火球 ブレイズボール」
野球ボールほどの大きさの火球がゴールドスライムに向かって飛んでいく。
しかしそれだけでは倒しきれなかったようだ。
ブレイズボールを五連発食らわせた。
やっとドロップアイテムの「金」が手に入った。
巣の中に突入して、ゴールドスライムを狩り尽くす。
すべて倒し終わった。
戦果は「金」二十個。
1000ロムを超える…かも知れない。
一日で相場は変わるらしいからな。
意気揚々と洞窟を出ると、一人の少女が立っていた。