ドラゴンと妖精
悲鳴が聞こえた。
声からして少女だ。
助けに行くべきか。
こんな場所で少女の声がするのはおかしい。
山を一つ越えなければ、これない場所だ。
しかし見捨てるのもどうだろうか。
見捨てるのはいけない。
様子を見に行こう。
で、本当に危なそうだったら助ける。
勿論自分の命の危険性があれば、自分の安全を最優先にする。
もしかするとただ歩いてるだけの退屈な時間が、
強者との決闘になるかもしれない。
そこそこの強さなら倒せる自信がある。
実戦経験は足りないから、強すぎるチート野郎には勝てない。
精々lv40か50辺りだな。
それでも危ないかもしれないけど。
とにかく現場へ向かうか。
一見は百聞にしかず。
現場には銀色の竜と七色の羽の生えた小人がいた。
妖精? 妖精だなあれ。
lvは不明か。
妖精が
「見てるなら助けなさいよ!」
と叫び、ドラゴンがこちらをむいた。
ドラゴンのlvが表示された。
シルバードラゴン lv51
HP――――――――――
169/169
51か。微妙なところだな。
武器は短剣だし。
ドラゴンの鱗は硬いと聞くけど、何とかなるだろ。
魔法が欲しい。
ドラゴンの首に短剣を投げつける。
もしかしたら、首が切れるかもしれない。
しかしドラゴンは短剣に息を吹いて、短剣を吹き飛ばした。
俺の足元に短剣が突き刺さった。
あと少しで足が使い物にならなくなるところだった。
ドラゴンは、「グルルルル」と唸り声を上げ炎を吐いた。
俺は瞬発力を駆使して躱した。
一撃必殺ができないなら、地道にダメージを与えるしかない。
ドラゴンの足元に行き、そこからジャンプして腹にキックをする。
ドラゴンは、後ろに吹き飛んだ。
ドラゴンの真上までジャンプして、目に短剣を突き刺す。
悲痛な叫び声を上げるドラゴン。
しかし立ち上がった。
ガオオオオオオッ!
ドラゴンは炎の息を吐いてきた。
これ躱すのが大変だ。
片目は潰れてる。距離感はつかめないはず。
もう一度キックだ。
連続で飛んでくる炎を躱しながら、ジャンプをする。
腹を蹴ろうとしたら、ドラゴンは空を飛んだ。
飛び去ってくれるのかと思ったら上空から炎を吐いてきた。
どうするか。
ジャンプしてもあそこまでは届かない。
近くに踏み台もない。
そのうち体力が無くなる。
負ける予感がする。
無謀なことするんじゃなかったな。
「妖精! 何か出来ないのか?」
「飛ばすぐらいよ!」
「じゃあやれ!」
体がものすごいスピードで飛んだ。
しかしドラゴンの上まで飛ぶことができた。
首を短剣で斬る。
また悲鳴を上げドラゴンは落ちていった。
俺もどんどん落ちていく。
せめて足から着地しよう。
足がすごく痺れた。
ドラゴンを見ると、首から血を出していた。
おそらく死んでるだろう。
横を見るとlvが上がっていた。
紅葉 lv99
たったの1lv。
しかしlv100まであと少しだ。
lv表示はすぐ消えた。
戦闘状態じゃないと表示されないらしい。
「いい加減震えるのやめろ、妖精」
「うるさいわね! バカ!」
バカはないだろ。
これは礼儀を教える必要がありそうだ。
とりあえず軽く殴ってみた。
妖精は十メートルくらい飛んでいった。
当然、妖精は怒った。
lvが表示された。計画成功。
精霊女王 lv制限無し
HP制限無し
MP制限無し
制限無しとか。
なのにドラゴンにやられてたのか。
何でだ?
「お前、ドラゴン倒せるだろ」
「今は力を使えないのよ」
制限無しのくせに力を制限されてるとか。
矛盾しすぎだろ。
妖精の事情は知らないけどな。
「なんで使えないんだ?」
「妖精は周囲の魔素から魔術を構築するのよ。だけど最近
魔素が誰かの魔力と融合してるの。だから魔術を構築するのが無理になっ てきてるのよ。分かったかしら?」
「なるほど。分からん」
魔素というのは神様から聞いたから知ってる。
魔力と魔素が融合とか原理がわからん。
体力と空気が混ざったようなもんだぜ…。
しかしこいつが力を使えないのは分かった。
「魔素と魔力が融合するのは、当たり前のことなのか?」
「そんな訳ないでしょ! 魔力が圧倒的に多くてそれを制御できてない誰か のせいよ。その原因を突き止めようとしてたところをドラゴンに襲われた のよ」
誰だろうな、その迷惑な存在。
魔力の多い…。
誰だろうな。
「力を使えるようにするにはどうすれば良いんだ?」
「その人が魔力を制御できるようにならないとダメね。
というか、あんたからその魔力を感じるんだけど」
「そうか。もしかしたら俺なのかもな」
俺だろうな。自覚はないけど。
「なら今すぐ魔力を制御しなさい!」
「……世の中には無理なことg」
「うるさいわよ!」
こうして魔力制御の特訓が始まると同時に、妖精女王が仲間になった。