プロローグ~~絶望の修学旅行~~
俺の名前は藤澤紅葉。現在中学三年生。
クラスメイトにも親にも無視されてる孤独な男だ。
虐待されてる。
俺はそう思ってる。
しかし屈してはダメだ。
やるべきことをしっかりやっていれば何とかなる。
この世は金だ。
金さえ稼げれば、生きていける。
稼ぐために必要なのは、考える力と己の肉体。
やられたらやり返すのでは無く、常に低姿勢で。謙虚に腰低く。
多く稼がなくていい。
暮らせるだけのお金を少しづつ。
それさえ出来てれば、後は野となれ山となれだ。
まあ…ここから生きて帰れればの話だがな。
俺は修学旅行で山に登っていた。
全員俺のこと無視するから一番後ろでこそこそと登っていた。
まあ少し危なっかしい断崖絶壁の所を登ってたわけだ。
みんなは友だちと助け合いながら登っていった。
俺だけ一人で登ってた。
足を滑らせて転落したわけだね。
あっという間に夜になった。
救助隊がこない、食料がない、怪我してるのに包帯がない。
ない、ない、ないの三拍子だ。
これじゃあ命がいくつあっても足りない。
俺がいなくなっても気づかないんだろうな。
救助隊が来るわけない。
俺の人生ここまでかな。
思えば短く不幸せな人生だった。
小さな頃から無駄なことばっかりやってたな。
それで周りの奴らと離れていって親からも見捨てられた。
思い返すと酷い内容だな。
少し腹が立ってきた。
なんで俺怒らなかったんだろう。
ここで死ぬなら怒っておけばよかった。
沸点が高かったからな。
怒っても何かが変わるわけじゃない。
…死ぬ間際になるとくだらない考えばっかり出てくるな。
それに恋愛ぐらいはしてみたかったな。
いくら俺でも人並みの感情は持っている。
残念なことに俺は人並みのことをやれないまま終わりそうだ。
あと数日もすれば俺は死ぬ。
死ぬのは怖い。
だがこの世界で生きてても良いことはない。
俺に牙を向けるこの世界。俺には合わない。
死んだらどうなるのか。
死後の世界なんてところに行くのだろうか。
天国か、地獄か。
どっちだろうな。
あまり良いことをした記憶はない。
きっと地獄だろう。
「……雨だ」
雨が降り始めた。
恵みの雨か。
涼しい。
喉も潤されることだろう。
健康的ではないが。
あいつらめ、白状にも程があるだろう。
雨はどんどん酷くなっていく。
雨が止むのを待ってる間上の方から声がした。
きっと雨が降ったから帰っていくクラスメイト達だろう。
大声で叫んでみた。
しかし丁度雨がさらにひどくなって、雨音に声はかき消された。
崖の岩とかが雨のせいで崩れそうになってやがる。
土砂崩れってやつか。
やばいな。
(崩れた…!)
俺は土砂崩れに巻き込まれて死んだ。
体の骨が折れて、潰れて死んだ。
――――俺はこの日のことを忘れない。