ようつべがゆく(四百文字お題小説)(後編)
前編に引き続き、お借りしたお題は「動画」です。
松子は派遣切りに遭ったフリーターである。
告訴を取り下げてもらうためにした土下座を動画サイトに投稿されて著しく気分を害した松子は復讐を誓い、それを投稿した友人の所に行った。
彼女の失態を撮影して仕返しに投稿しようと考えたのだ。
松子は友人の勤める出版社の前で張り込みを開始し、アンパンと牛乳を買い、野球帽を目深に被ってマスクを着けた。
傍目からはあからさまに怪しい姿なのに気にしない。
そして友人が退社するのを待った。そんな事ができる今の立場を憂えないのが松子のお気楽さだ。
だが、退社時間が過ぎても、松子の腹時計が怒りの声をあげても、友人は出て来なかった。
その日は家に帰った松子は再び動画サイトで驚愕した。
その動画のタイトルは「笑える復讐者」。
松子が出版社の前でコソコソしている様子が撮影されたものだった。
それを観た松子は、
「勝ち目がない」
無条件降伏を決め、次の日に友人の会社に菓子折りを持って行ったのだった。
そういう事なのです。