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赤い文字の本

作者: 蒼眼鏡

私の家には一冊の『本』があった。

  

あれは私が小学校4年生のときだった。興味本位でお爺ちゃんの部屋の押入れの奥にあった一冊の   『本』を見てみた。本はなんだかお札が貼ってあったが邪魔だったので取ってしまった。

「な・・・なんだこれ?」

その本は全ての文字が赤い文字で書かれていて、でも完全な『赤』という訳じゃなく少し黒ずんだようなそんな色だった。あとちょっと錆臭かった・・・。

「これ?行書なのかなぁ?」

行書というか何か記号のようなものだった。


そんな『本』を見つけてから、1週間経たないうちに私の周りでおかしなことが起こり始めた。

小学校から帰宅して、2階にある自分の部屋に上がると・・・

「あれ?なんで本が散らかってるんだろう?」

部屋に入ると本棚に入っているはずの小説や漫画、さらには机の上にあった教科書までもが床に散らばっていた。

「お母さん!!なんで私の部屋散らかっているのよ!!」

私は母に向かって怒鳴った。

「え?知らないわよ、だいたい有紀の部屋には入ってないわよ?」

「しらばっくれてもわかるんだから!!この家にずっといるのはお母さんだけでしょ!?」

そう、私の家ではお母さんはずっと家にいて全ての家事を行っている。

「だから~有紀の部屋には入ってないって言ってるでしょ?」 

だとしたら誰が私の部屋の本を荒らしたのだろう?お父さんは会社に行ってるし、おじいちゃんは荒らすわけない。はず。

  

そんな出来事から2日後の教室での授業にて

「ん?あれ?」

一瞬だけ教科書の文字が赤くなった気が・・・する。

「疲れてるのかなぁ・・・あとで保健室に行っておこう」

授業が終了した。私は授業間に保健室に行った・・・結局疲れているだけだと言われた。

そのあとの授業では特に異常は見られなかったのでいつもどうり帰宅。

  

その夜の恐ろしい夢と見た

自分の部屋の本の文字が這い出てきて蛇のように私を追いかけてくる夢だった。

文字はなぜだか 赤黒い色 をしていた。いつも自分の見た夢はよく覚えていないのにその夢だけは鮮明に覚えていた

  

翌日

私はおじいちゃんに本を見たことと、昨晩の夢のことについて話した。するとおじいちゃんは顔色を悪くして

「あの本を見たのか?」

いつもの優しいおじいちゃんからは予想もつかないような絶望に満ちた顔をしていた。

すると血相を変えておじいちゃんの部屋にあるタンスから一枚のメモ用紙を取り出してきてどこかに電話した。

「いまからじいちゃんが知り合いのところに連れて行くから早く支度してきなさい。お母さんにはじ  いちゃんから話しとくから」

おじいちゃんに言われたとおりに自分の部屋に戻り、お出かけ用の服装に着替えた。

そしてから、3分くらいしてからおじいちゃんの運転する車に乗って1時間くらいしてどこか田舎の神社に連れて行かれた。


神社では神主(?)みたいな人がやってきて

「君が有紀ちゃんだね?おじいちゃんから話は聞いているからついてきて」

そう言われて神社の裏手にある下りの階段を降りて奥にあったもう一つの小さな祠の前に連れて行かれた。

「この子があの『本』の中身を見てしまったみたいです」

そう神主さんが言うと何かに反応したように風が吹く。

「じゃあ有紀ちゃんここに座ってくれるかな?」

私は祠の前に座らせられた。そして神主さんはこんなことを言った。

「いいかい、いまから君についている悪いものを落とすからね?いまからおまじないの言葉を読み続けるからその間は絶対に目を閉じているんだよ。絶対におまじないをかけているときは誰も何もしないから、絶対に目を開けてはいけないよ」

「わかりました・・・」

「じゃあ、目を閉じて・・・」

私は目を閉じる。硬く硬く閉じる。


神主さんがムニャムニャと何かを言い始める。

神主さんがおまじないをかけ始めてから数分後、何かが足の周りに這い寄ってくる。

気持ちが悪かった。だんだんと上に這い上がってくる・・・蛇の動きのようだ。神主さんの声がいっそう強くなる

すると何かがするすると体から下がっていく感覚。とても気持ちが良かった。

「よくがんばりましたね」

どこからともなく美しい女の人の声がした。どこまでもキレイで消えてしまいそうな声だった

「はい。もういいですよ」

神主さんの声がした。とてもホッとした


それから神社に戻り私が見た『本』についての話を聞かせてくれたあれはとても昔(年代は不明)の小さな集落で謎の伝染病が広まりそれを抑えるために伝染病を広めていた蛇に戦いを挑んだ。しかし、どの人も蛇を殺すことはできずに困っていた。そこで村長が生け贄を捧げる代わりに伝染病をやめてくれと相談をした。蛇は了承し毎月一人子供を差し出せとのことだったらしい。どの親も反対したが村長が村のためにと言って毎年子供をさらい出しで蛇に捧げていた。子供をさらわれた親は子供の名前は忘れまいと自らの『血』を使って子供の名前を紙に書いたそうだ。そんなことが数年続いたあるとき、ひとりの巫女がやってきて蛇が寝ている間に封印の印を蛇に刻んで封印したそうだ。それからこどもの名前を書いた紙を集めて一冊の束にした。それからその本を封印し各家々を数年おきに管理して、呪いを薄めていく方法をとっていたそうだ。あの祠は巫女を祀っているものらしく、あのとき聞こえた声は巫女のものだったのだと思う。

  

ちょうど今年は私の家だったらしく、おじいちゃんの部屋に保管してあったのを私が見てしまったということだ。

それから家に帰るとお母さんが泣きながら抱きついてきて、頭を撫でられた

「よかった・・・本当に・・・」

ちょっとテレ臭かった。

  

それから2年後、その本は次の家に引き取られた。いまどこにあるかはわからない・・・。

頑張りました。

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