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Terra  作者: 海星
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予定とまとめ

「じゃあ、明日はどこに行きたい?」

 夕食の席で、テラはそう聞いてきた。

 夕食には、春雨とラーメンを混ぜたような麺が入っているスープや、しっとりとした、妙にさっぱりとしている豚の香草煮のようなものがでてきた。飲み物はさっぱりとした香りのするお茶。星也たちは、発展した文化なのだから未来っぽい変わった食べ物がでるに違いないと考えていたのだが、以外と普通だった。地球の日本でも、大昔から食されているという白米や味噌汁などが今でも食べられているので、案外食文化に歴史は関係ないのかもしれない。

 美路は、日本食料理の先生でもある母親の影響か、熱心に電子メモにメモをしたり、カメラで写真を撮ったりしていた。

「そうだな・・・・・・」

 一瞬考える振りをしてから、顔を上げる。実は、最初から見学すべきところは決めてあったのっだ。しかし、この願いは聞き入れてもらえない可能性の方が多い。そのことにあとの四人も気がついたのか、全員が星也とテラの方を向いた。

「この世界で一番屈強と言われている、あの有名な軍を見てみたい」

 テラの顔をまっすぐに見て言う。テラの顔の血が少し引いたのがわかった。

 テラは気まずくなり、目をそらしたく感じたのだが、まっすぐに見つめてくる星也の目がそれを許さない。

 星也は星也で、すこし罪悪感を感じていた。ここにくるまで、テラはずっと親切だった。その相手を利用してスパイ行為を働くというのは、いくらその職に選ばれるほど能力があるとはいえ、まだ学生である星也にとってはきつい物だったのだ。

 しかし、そう内心で思っているとはいえ、訓練や慣れによって身につけた能力の数々を崩すことはしなかった。

「・・・・・・それは、とても難しいことですよ」

 そんな二人の様子を見て、自己紹介をしてからずっとしゃべっていなかった、緑髪のヴァルトと赤髪のロートが口を挟んできた。

「軍事施設は、異星人どころかこの星の住人でさえ、限られた人しか入ることができないのよ」

 ヴァルトとテラは申し訳なさそうに、ロートはポーカーフェイスのまま五人を見る。

 しかし、そこで星也たちが引くわけがなかった。

「どうしても、お願いしますよ」

「そう言われても・・・・・・」

 テラもヴァルトも、どうしたらよいのかわからないようだ。

 そこで美路は、あることを思い出した。

 教室でテラを見たとき。あれはどう考えたって、最初からそこにはいなかった。いや、見ることができなかったはずなのだ。美路は教室に入ってすぐに室内を見渡したのだが、そこにいるのは自分たち五人しかいなかったのだ。

 テラは、ちょうど桜田兄妹がもっていた写真が破れたときに現れていたようだった。

「あ、あのっ」

 美路がそう言うと、全員が美路の方を向いた。

「テラさんが学校に進入したとき、最初は見えませんでしたよね!? あの道具って、使えないんですか?」

 星也たちははっとし、期待の目をテラに向けた。

 しかしテラは、残念そうに首を振った。

「あの技術は、グラウンド星に広く伝わっているから、たいていの場所ではその対策として意識遮断の電波を相殺する電波を流しているのよ」

 確かに、透明になるという技術がありながら対策をしないとは思えない。

 しかし星也は、今の会話によってある重要なことに気がついた。

 校長に渡されたスパイ用具のなかには、小型の透明化機械がはいっていたのだ。星也は戦前の技術については何となくしか知らなかったので、透明化できる機械があるとは思っていなかった。この機械は戦争中に発明されたらしい。

 この道具の仕組みは、これを持っている人のまわりにうすい膜のように特殊な電流を流すというものだ。この特殊な電流をいうものは、ある特殊な原子を伴っている。それは体温のあるものにつきやすく、しかも周りの光の情報を整理して自分を同化させようという性質があるのだ。

 星也が持っているのは本当に初期のタイプで、その電流を流すと半径一メートル以内の体温を持つものとその体に付着しているものが透明になり、しかも使用時間は五分しかもたない。しかし付け消しして利用ができるので、人がいるところではつけるという風にすればいいのではと思ったのだ。

 しかし、星也はこの機械を出すべきか迷っている。

 テラが地球にきたときの道具は、地球の物より発達していたようだが、どうもそれらすべて輸入加工品のように今は思っているのだ。

 地球の、厳重地区の外の人々は、そのことに気がついているようだった。あのカメラについている反重力装置は、きっと地球から輸入したものだろう。しかし、地球のもつ技術、たとえばワープ技術などは、輸出を制限しているようだった。たぶん、実際の生活から抹殺しておくことで、グラウンド星人やその他異星人に気が付かれないようにしているのだろう。

 前までなら、その理由はわからなかっただろう。コロニーなのだから技術を輸出しても利益はないが、実生活がとても不便になる。

 でも今ならわかる。きっと、地球はグラウンド星に負けてすぐに、再度戦争を仕掛けることを考えていたのだろう。戦争時に、グラウンド星の技術がそんなに発展していなかったことには気が付いているはずだ。きっと、相手に悟られないように研究をすれば、グラウンド星に勝利する事ができると考えたに違いない。

 教科書にも、地球とグラウンド星は予想以上に接戦だったため、他の星がとても驚いたと書いてあった。きっと、地球の技術は宇宙でも高い方に違いない。

 だからこそ、星也は困っていた。技術が高い地球にグラウンド星に勝てた理由。それはきっと、軍隊にあると思っているからだ。グラウンド星の軍隊についても、教科書に載っていた。たぶん、宇宙一のレベルだろうと。

 しかし、今星也たちは、軍隊を見に行くことができなくなりそうな状況にある。このスパイの目的の五割ぐらいは、この軍隊を見るのにあると星也たちは考えている。だから、このチャンスを逃すわけにはいかないのだ。

 でも、もしグラウンド星が物体透明化装置を持っていなかったらどうする。この旧式の物を使って、他の星の技術も取り入れ、地球よりも高性能な物を作ってしまうかもしれない。そうしたら困る。

 星也が判断に困っていると、意外なところから助け船が出た。

「じゃあさ、この子たちは軍隊に入りたくて上京してきたってことにしたらどう?」

 ロートだ。ポーカーフェイスのまま淡々と食事をとりながら、こちらに目線を向けていた。

 一瞬、不自然な間が入った。

 そして、ヴァルトの顔が笑顔に変わった。

「そうだね。それなら入ることができるや。テラは研究員だから入ることも可能だろうし」

「う、うん・・・・・・」

 なぜか、テラは苦虫を噛みつぶしたような顔をしている。

 テラの様子は気になるが、今は見学する事のできる可能性が出たことの方が重要だ。五人は目を合わせて頷き合い、すぐに返事をした。

「それでいい。お願いします」

 頭を下げる。テラは、まだ気まずそうにしていたが、この喜び様をみて断るわけにはいかないと感じたらしい。すぐに、返事をしてきた。

「でも、そうしたって明日は無理だからね。せめて明後日。だから、明日はどうする?町にでも行ってみる?」

 たぶん、町と提案したのは軍事施設のように入りにくいところをまた言ってほしくなかったからだろう。

 でも、町か。それも悪くないなと、五人は考えた。そもそも星也たちが来た理由は、籠の外の世界を楽しむことだ。さっきちらりと見たとはいえ、実際に探索するのとは訳が違うだろう。

「うん。町がいいかな」

「俺も賛成」

「「うちも」」

「私もそれで」

 見事に、全員の返事がそろった。

 テラはそんな様子の五人を見て気が晴れたのか、少し笑った。


         ☆★☆


 星也たちには、一人一部屋、しかもそれぞれ風呂、トイレつきの部屋が割り振られた。この研究所にはよく来賓がくるので、こういう部屋が一〇室もあるらしい。

 部屋は、勲、星也、翔、薫、美路の順番で割り振られた。翔と薫が、どうしても部屋を離してほしくないと言ったのだ。

 星也は部屋に入り、鍵をかけ、荷物をタンスにしまい、そして・・・・・・盗聴、盗撮器がないか探した。探すのには、専用の探知機を使う。データをまとめるところを見られたら大変だからだ。

 後の四人も同じようにしていた。結局、そのたぐいの物は見つからなかった。そして風呂にはいる前に、無線型投影器を取り出す。

 全員ほぼ同時にそれをベットの上に置き、スイッチを押した。

「よし、じゃあ報告会をしようか」

 星也が切り出す。すると、まず勲が口を開いた。

「グラウンド星っていうのは、思っていたよりも発展してないようだな」

「だよね。良く見て、輸入により少しだけ地球より上ぐらいだと思う」

「やっぱり、みなさんもそう感じましたか」

「「・・・・・・うちらの考え、言っていい?」」

 翔と薫が口をそろえて言う。みんなは、待ってましたとばかりに二人を見た。

 実は、この中で一番スパイの仕事にあっているのは桜田兄妹なのだ。警察の子なので、捜査の時にやるべき手順や、特殊な道具の使い方も知っているし、親もそういう技術を進んで教えている。しかもこの二人は、学校のいたるところに盗聴器をつけたり情報提供者を作ったりしていたので慣れているのだ。さらにこの二人は学校一頭がよい。星也たちが通っている学校の上位四名を挙げると、翔と薫が一位、二位が美路、三位が星也と言う風になっている。ちなみに、勲はそんなに頭は良くない。

「まず、ここにくるまでの町にあった物も、そんなに発達した物はなかった」

「地球の物よりは上だけど、それが少しだけグレードアップしただけってかんじ」

「つぎに、この研究所のドア。地球は戦争直前までワープのものを愛用していたのに、それが使われていない」

「もしかしたら、地球はこの戦争のことを大分前から考えていて、輸出の制限をしていたのかもしれない」

「それは、あのソファーからも言える」

「グラウンド星のものは、合成されたようなものばかり」

「きっと、世界一と言われる軍で他星をコロニーにした後、その星の技術を吸い取ることで世界一にのし上がったんだと思う」

「そう考えると、地球の技術は世界でも高いほうだと言える」

 二人の報告に、みんなは感心した。技術を輸入している、地球がそれを制限しているということは何となく気が付いていたが、そのほかのことについては全く気が付いていなかった。

「「でも、まだわからないところがある。きっと明日の町散策は、役に立つと思う」」

 二人はやる気満々だ。星也たちも、モチベーションがあがってきた気がした。

 では明日と言い、電源を切る。みんなはそのまま風呂に入った。

 風呂からは外が見えた。

 気が付かないうちに、外は真っ暗になっていた。

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