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Terra  作者: 海星
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地下訓練所と機関銃演習

 医療担当班の部屋から出て、すぐそばのエレベーターで下りる。このエレベーターはテラが前に持っていた反重力体のようなものを使っているらしい。

 どうやら、訓練所は地下にあるようだった。柱の強度を固め、もし天井が落ちてきても大丈夫な装置をつけていれば、地上につくるよりも地下に作った方が安全で周りへの被害も少ないので、地球でも地下につくることが多い。

 まず、星也たちは一番下の階、地下五階におりた。

 地球では地下五階には一番ものを壊す可能性がたかい爆薬系をあつかう。どうやらグラウンド星でも、それは同じのようだった。

「ここは見ての通り、爆弾を扱う層だ。扱うのは基本の爆弾から原子爆弾などの危険物までいろいろある。原爆のような危険物は、放射能解体部屋によって扱うので問題はない。ここには爆弾使用班と爆弾解体班がいる。爆薬の研究も、ここで行われている」

 一つの層だけでそんなにたくさん行えるのかと思うほどの作業量だが、この層はそんな考えが馬鹿に感じるぐらい広かった。

 後ろには今乗ってきたエレベーターがあるのだが、右、左、前のどこを見渡しても終わりがないのだ。説明は移動専用車にのり行われたが、説明が終わっても終わりは見えない。

 隣を、大量に人が乗ったバスのようなものが通り過ぎた。きっと、これがこの基地での重要な移動手段なのだろう。

 更に、ケント・ニスの説明は続いた。途中でガラスケースなどに包まれた部屋があったから、それがきっとさっき言っていた危険物を扱う部屋なのだろう。

 その部屋のうちの一つで、ちょうど爆弾が破裂させられた。防音加工がされているのか、音はぜんぜん伝わってこない。ただ、その部屋の壁だけが異様に揺れた。それだけなのに、ものすごい迫力がある。

「といっても、さすがにフルの爆弾使うと壁が壊れるからな。爆弾実験所は他のところにもある。ここはあくまでも、実験が目的だ」

 星也たちは驚いた。もしかしたら、初めて爆弾を実際に使っているところを見たからかもしれない。だが、やはりこの爆弾だけでもかなりすごいものだと思ったからだ。まあ、フルではないのはよく考えてみればわかることだったが。強化した壁で壊れないなら、家全部を強化壁でつくれば爆弾の意味がなくなってしまう。

 そんな中、さっきの薫のように興味津々で周りを見渡している人がいた。翔だ。さっきから腕時計でビデオを撮ったり、ブレスレットで説明を録音したりしている。

 そのことに気がついた星也たちは、焦って、しかし周りに気が付かれないように、コンタクトコンピュータを使ってレポートを作成しはじめた。

 コンタクトコンピュータは、便利な反面取り扱いが難しいことで有名だ。しかし星也たちは、小学生のころからこの機械の使い方を練習していたので大丈夫だった。勲はやくざの父親に「これがあればバカなおまえでもいつでもメモができるから」と、桜田兄妹は警察の親に「捜査に時間をかけないのはあたりまえだ」と、星也と美路は道場主の親に「練習の時とかにこのコンピュータで考えながらやれば上達するから」と言われたのだ。

 生徒会活動でも、この特技は役に立った。手を使わなくても文章が書けると言うことは非常によい時間削減となるのだ。

「じゃあ、そろそろ次のところへ行くか」

 向こう側の壁がやっと見えてきたころ、ケント・ニスはそう言った。

「次は大砲や重火器の部屋だ」

 桜田兄妹が、また目を光らせた。大砲や重火器なんて、滅多にお目にかかれるものではない。

 星也たちは、桜田兄弟が好きなのは銃など手軽なものだけだとばかり思っていたので、少し意外に感じた。


           ☆★☆


 地下四階。ここも地下五階と同じく、かなり広かった。

 そして、右を見れば大砲の整備、左を見れば機関銃の訓練と、やはり迫力のある風景が繰り広げられている。

 機関銃も大砲もふるいのから新しいのまでたくさんの種類が使われている。

 五階にいたときのように車に乗っていた星也たちのすぐそばで行われていた大砲の試しうちでは、大砲が当たったところから、崩れるのではなく爆発するのでもなく、アメーバのようなゲル状のものが這いだし、当たったものを包み込む、というものや、機関銃によって撃たれた弾が標的に当たると、根っこのようなものが伸びて締め付けるというものまであった。

 他にも見たことのないようなものがたくさんある。桜田兄妹は、これでもかというほど熱心に話を聞き、録画・録音・メモ・写真撮影を繰り返していた。

 ケント・ニスも、そんな二人に圧倒されながら、感心とでも言うかのように熱心に説明をしている。きっと、打って響く生徒が好きなのだろう。

 向こう側の壁が見えてきた頃、車が止まった。

 なぜだろうとあたりを見渡してみると、なにやら機関銃のようなものを持った人たちが、赤いバンダナと白いバンダナをそれぞれつけて、同じ色同士で分かれて向かい合っていた。

「ここでは、硬直弾をつけた機関銃を使っての演習が行われる」

 ケント・ニスがそう言った。

 「硬直弾」ということは、当たると固まって動けなくなるのだろう。

「それ、始まるぞ」

 ケント・ニスの言葉を合図にするかのように、両者が一斉に走り出した。それぞれ障害物の陰に隠れ、機関銃だけを出して撃ち始める。

 硬直弾の威力は、見ただけでものすごく伝わってきた。陰から陰へと移動しようとした人の足に当たると一歩も動けなくなり、機関銃を持っている手に当たると指がピクリともうごかなくなる。ものすごく力の強そうな筋肉質な男性でさえ、一回当たればもう動かせなくなっていた。みんな顔にヘルメットをつけているのは、当たって息が出来なくなるのを防ぐためだろう。

 どうやら、真ん中においてある旗をさきにとった方が勝ちというルールのようだった。真ん中には、グラウンド人の目に似た鮮やかな青の旗が置いてある。さっきから物陰に隠れては撃ち、そこへ進み、撃たれるという動作が繰り返されていた。みんなが旗をとろうと近づくので、撃たれて固まった人たちの塀がだんだんとできあがっていく。

 開始から三〇分ほどたったころ。白組のうちのひとりがすでに固まった仲間の陰を素早く移動し、すでにわっかになっていた人の塀の中へ飛び込んだ。

 全員が自分のことを忘れ、旗の立っていると思われる人の山の中を注視する。しばらくして、さっきの男性が旗を振りながらでてきた。

 白のバンダナをつけた人たちが、わっと喜びの声をあげる。赤いバンダナの人たちは、悔しそうに拍手をしていた。

「……ずいぶんと、本格的ですね」

 本格的というのはそのままの意味もあったが、訓練をしている人たちがずいぶんと本気でやっているなという意味も入っていた。だが、ケント・ニスは前者の意味としてとったらしく、ニヤリと笑った。

「こんなんで驚いていたら、後でもたねぇぞ? なにせ、一番主流の銃の層は研究室と訓練所でそれぞれ一層ずつあるからな」

 こんなに広い層を一つずつ使うとは、確かにすごい。

「どうだ? 次の銃のコーナーで、参加してみるか?」

 ケント・ニスはそう意地悪そうに笑った。きっと、星也たちがここまでのところを見てひるんでいるだろうと思っているのだろう。

 たしかに、星也と勲、美路は遠慮した。だが、桜田兄妹は違った。

「「え、いいんですか!?」」

 きっと、自分も撃ちたいとずっと感じていたのだろう。返事をしながら振り向いた二人の目は爛々と輝き、武者震いまでしていた。

「え……っあ……ああ」

 あまりの二人の勢いに圧倒されたのか、絶対に断ると思っていたのに承諾したから焦ったのか、ケント・ニスはしどろもどろした。

 そしてはっとなり、喉をならしてから言った。

「でも、二人別々はだめだ。時間がかかるからな」

 やはり、軍事施設で時間は重要らしい。

「「もちろん。二人だけで制圧して見せますよ」」

 二人のあまりもの自信に、ケント・ニスは苦笑いをした。

「おいおい、新入者に、うちの強者たちがいとも簡単に負けると思っているのか?」

「勝てますよ」

「頑張れば」

「「でもきっと」」

 ケント・ニスは呆れたかのような顔をして、小さく「二対二をやらせたらおもしろいかも」とつぶやいた。


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