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若返った老騎士の食道楽~英雄は銀狼と共に自由気ままな旅をする~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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丸焼き

トロールの処理を終えたら、オルトスと合流する。


既に辺りは暗くなってきたので、場所を変えて野営をすることにした。


メニューは当然……トロールが持っていたコカトリスである。


「この辺りなら川もあって見晴らしもいい。ここで、此奴を食べよう」


「確かに村に戻る頃には日が暮れてますね」


「うむ、依頼も無事に果たしたので良いじゃろう。では、作業に入るか」


「料理の経験がおありですか?」


「いや、大したことはできんよ。ただの男臭い料理くらいじゃ。それでよければ、儂がやるが……」


「すみませんが、お願いします。料理はからっきしでして……」


なるほど、こんなところもユリア様に似ておるか。

あの方も料理をしようとして、良く事件を起こしていたな。

……もっぱら、その犠牲者は儂かロラン様だったが。


「ほほっ、気にせんで良い。では、木の枝や枯葉などを集めてくれるかな?」


「はい、もちろんです」


「オルトス、辺りを警戒しつつアリア殿を任せるぞ。褒美に、たらふく食べていい」


「ウォン!(任せるのだ!)」


尻尾をブンブンさせて、オルトスがアリア殿についていく。

オルトスの警戒範囲は広く、儂と魔力経路で繋がっているのですぐに異変には気づける。

警戒をオルトスに任せ、ささっと作業に入ることに。


「さて、何にするか……やはり、野営ならではの飯が良いか」


まずはコカトリスを木に逆さ吊りにし、頚動脈を切る。

すぐに新鮮な血がドバドバと流れてきた。


「よしよし、どうやら死んで間もないようじゃな。これなら、毛をむしるのも楽だわい」


時間が立つほど硬くなるので、魔法袋から熱湯が入った容器を出す。

沸くのを待っていたら、折角の素材が悪くなってしまう。

その容器に、コカトリスを直接漬けていく。


「本来なら野営用のドラム缶式風呂だったのだが……思わぬところで役にたったのう」


一メートルを超えるコカトリスが丁度よく浸かってくれる。

漬けてる間に、川にある綺麗な石をドラム缶の横に並べていく。

1分くらい経ったら、引き上げて石の上に置いて手早く毛をむしっていく。


「ふむ、此奴には悪いが中々に気持ちの良い作業じゃな」


まだ死にたてだからか、すいすいと毛をむしれる。

その作業が終わるころ、オルトスとアリア殿が戻ってきた。


「ウォン!(しっかり守ったのだ!)」


「ふふ、物凄く優秀なシルバーウルフですね」


「何かあったのかのう?」


「オークやゴブリンが現れたのです」


「……なに? いや、まずは腹ごしらえからじゃ」


気になるが、腹は減っては戦は出来んというし。

なにやら、また面倒ごとの予感がするわい。

ひとまず木と枯葉に火石で灯す。


「よし、次は解体じゃ」


「あの、お手伝いしても?」


「構わんが……結構グロいし臭いぞ?」


最早、この子が世間慣れしてないのは明白。

おそらく、誰かに世話される生活だったに違いない。


「が、頑張ります」


「うむ……ならば、手伝ってもらおうかのう。オルトスは、引き続き警戒を頼む」


「ウォン(早くするのだ)」


「はいはい、わかっておるよ」


オルトスも腹を空かせているので、手早く準備する。

まずは腹を裂いて臓物系を取り出す。


「うっ……」


「無理はせんで良いぞ?」


「や、やります……」


「そうか。では、ここを押さえてくれい」


決意は硬そうなので、そのまま作業を行う。

幸いにして押さえてくれるだけでも助かるので、手早く解体を済ませる。

仕上げに川の水で洗い、いよいよ調理じゃ。

スパイス類を中に揉み込み、外側には塩と胡椒を振り掛ける。


「手足は解体しないのですか?」


「うむ、折角の丸鳥……丸焼きにしたいではないか」


丸焼き、それは男のロマンである。

メリッサ殿が作ってくれるような料理もいいが、やはり野生的な料理も食べたくなるのが男というものよな。


「は、はぁ……意外と子供っぽいところもあるのですね」


「なにをいうか。儂はまだ若いじゃろ」


「いや、それはそうなのですが……ふふ」


「ようやく笑ったか。うむ、女子には笑顔が一番じゃ」


「な、なっ……」


「ほれ、腹が減ったからさっさと準備しようではないか」


まずは手頃な木を組み立て、ある程度の高さを出す。

そこに一本の細長い木をコカトリスに差し込む。

それを組み立てた木に乗せたら、あとは火口の上に設置する。


「よし、簡易的じゃが使い捨てなら良いだろう」


「なるほど、丸焼きとはこのような……ですが、出来るのが遅いのではありませんか?」


「うむむ……確かに腹ペコじゃ。こういう時に土の精霊使いがいると楽なのじゃが」


すると、アリア殿が恐る恐る手を挙げる。


「あの、私は多少ですが土魔法使えますが……」


「……なんじゃと!? 何故、いわん……いや、そうじゃな」


精霊魔法使いは貴重な存在。

例え少し使えるだけでも、それは珍しい。

ユーリスもそうじゃったが、引く手数多だ……特に女性は違う意味で危険じゃ。


「すみません……隠していた訳ではないのです」


「いや、気にせんでくれ。そもそも、知り合ったばかりじゃ。特に男に知られるのは嫌じゃろう」


確証はないが、精霊使いは遺伝すると言われている。

そして貴族というのは、そういう権威を欲しがる生き物。

故に精霊使いの女性は狙われることが多い。


「ご配慮に感謝です。別にシグルド殿が嫌とかではなくて……」


「わかっておるよ。それより、お願いできるかな?」


「はい、もちろんです。では釜焼きの要領で……土の精霊よ、我が願いに応えたまえ」


すると徐々に地面が盛り上がり、土の壁が焚き火ごと包み込む。

天井は空いているが、丸焦げのリスクを減らせるので助かる。


「おおっ! これは見事じゃ!」


「ふふ、ようやくお役に立てました」


「しかも、横の壁から木の棒が出ておる」


これなら取っ手にして、コカトリスを回すことができる。

つまり、丸焼きを堪能できるというわけじゃ。

儂が感動していると、アリア殿がわざとらしく誇らしげにする。


「男のロマンなのでしょう?」


「……ははっ! その通りじゃ!」


「ウォン!(ロマン!)」


「ふふ、本当に楽しい方々です」


「それはこっちのセリフじゃよ」


そうして待つ間、手頃な石を椅子に使い、焼けるのを待つ。

オルトスは警戒のために森の近くに待機し、アリア殿は儂の隣に座った。


「そういえば、さっきの戦い……あれは私に見せるだったと言いましたが」


「うむ、そうじゃな。お主は手数で勝負する剣士のようだから、あのように傷を増やして弱らせるのが良い」


「しかし、それは卑怯なのでは……」


「騎士同士の戦いや稽古ならともかく、妖魔との戦いに卑怯もクソもない。それで負ければ、お主はあの時……どのような目にあったと思う?」


儂は意を込めて、はっきりと告げる。

それを気にして死んでいった高潔な騎士を何人も見てきたから。

妖魔とは分かり合えない以上、手心を加えては命取りになる。


「……そうでした。私はあの時、心底死にたくないって思いました」


「すまん、少しきつかったかのう」


「いえ、有り難いです。続きをお願いします」


「うむ……トロールの皮膚は硬いが、中はそうはいかない。血を流すにつれて、動きが鈍くなっていく。攻撃は大ぶりになり、注意力が散漫になる」


「なるほど……あの時の私は一歩下がり、相手の出方を見るべきでしたか」


「その通りじゃ。さらには……」


儂はつい懐かしくなり、雄弁に語る。


当時のユリア様にも、似たようなことを言っていたなと思いながら。

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