男気
食事を済ませたら儂とアリア殿の出会いを語る。
それと同時に、アリア殿とメリッサ殿たちの関係もわかった。
どうやら、同じようなことをやっていたらしい。
「ほう、暴漢に襲われそうになったメリッサ殿に助けを求められて……やるわい」
「いえ、たまたま出くわしたので。相手は数名ですが、どうにか退治できました」
「それでも立派じゃよ。誰もが自分が犠牲になるのは恐ろしい……しかし、お主はそれを超えて困ってる人を助けたのだから」
仲間を見捨てて逃げる者、村の者を助けに行かず尻込みする者など様々だ。
そして、それを責めることはできない。
誰だって、自分が死ぬのは恐ろしいものだ。
「あ、ありがとうございます……ですが、シグルド殿だって同じことをしているじゃないですか。しかも、そのまま立ち去ろうとしますし」
「儂は成り行きじゃよ。それに、自分が好き勝手にやっただけじゃし」
「ふふ、お二人共似てますよ。アリアさんだって、私達に何も受け取らずに去っていこうとしましたから」
「ほほっ、なるほどなるほど。その縁で、ここに泊まることになったと?」
「まあ……そんな感じです。有り難いことに格安で泊めて頂けると」
「そうして、儂はそのおかげで良き宿に出会えたと」
やはり、何処でどう繋がるかわからないものである。
少なくとも、あの時の判断は正しかったようじゃ。
「これも、オルトスが気づいたおかげ……くくく」
「ウォン……(主人ィィィ)」
「情けない声を上げるでない。エルで慣れたであろうに」
「すぅ……すぅ……」
いつの間か、オルトスに乗っかってアンナ嬢が寝ていた。
此奴の毛皮はふわふわなので無理もない。
それに、子供には長話はつまらないだろう。
「す、すみません」
「いや、構わんよ。オルトスも嫌がってるわけではないのでな」
「ウォン(別に平気なのだ)」
「ふふ、優しい魔獣さんなのね」
その微笑みは魅力的で、暴漢に狙われるのも無理はない。
儂があと30歳若ければ……いや、姿は若いんじゃった。
しかし、中身はれっきとした枯れたジジイなのである。
「ええ、頼りになる相棒ですな。さて、ところで……気配がないが、他に泊まってる人はいるのかな?」
「今はアリアさんだけですよ。宿もやってますが、メインは食事処なんです。戦争によって夫を亡くしているので、女しかいないので泊まりはちょっと……」
「それは当然じゃな。いや、つかぬ事をお聞きしてしまった」
「いえいえ、お気になさらずに。では、お部屋の方に案内いたしますね」
アリア殿にオルトスを任せ、先に部屋に案内してもらう。
一階が食事処とメリッサ殿達の住居、二階が宿という扱いらしい。
確かに建物自体は広くなく、泊まれても3、4組が限界だろう。
儂が通されたのは角部屋で、窓を開けると大通りが目に入る。
「うむ、綺麗で良き部屋じゃな。喧騒は聞こえないが、人々の営みは見える。これなら、過ごしやすい」
「ありがとうございます。ただ、お安くはしますがお値段の方が少々……」
「無論じゃな。ひとまず、一月はいるのでこれで足りるかのう」
「こ、こんなに頂けません!」
儂は渡したのは金貨一枚、それは平民なら二、三ヶ月は軽く暮らせるほどのお金。
つまり、三倍近いお金になるので破格の値段だろう。
しかし、儂は押し付けるようにメリッサ殿に握らせる。
戦争ということは、夫が死んだのも我々の力不足が招いた結果だ。
「それほど、美味い飯に感動したんじゃ。もし多いと思うなら、明日からもよろしく頼む」
「ありがとうございます……実はお金には困ってまして。でも、生活費などは平気でしょうか?」
「男一人な故、それほどお金はかからんのでな。なに、明日から冒険者として稼ぐから安心せい」
「まあ……じゃあ、精がつくお料理を作らないとですね」
「うむ、そういうことじゃな」
正直言って、ほとんどの持ち金を渡してしまった。
しかし、メリッサ殿の顔に陰りが消えたので後悔はない。
……ユーリス辺りには、相変わらず美人に弱いとか言われそうじゃな。




