再会
やはり、ゴブリンの数が多いのう。
こんな町の近くだというのに、森に入ってすぐに十匹を簡単に倒してしまった。
無事に依頼を終えた儂は、帰り道にそんなことを思う。
「魔王が死んで北の大地から、この地にやってきたか?」
「ウォン(あり得るのだ)」
「だが、倒さないという選択肢はなかった……しかし、儂の責任でもあるか。ふむ、各地にいる妖魔退治も旅の目的に加えよう」
「ウォン!(手伝うのだ!)」
「うむ、共に戦うとしよう」
そんな会話をしつつ、町の近くに戻ってくると……門の前が騒がしいことに気づく。
「何やら騒がしい?」
「ウォン!(主人、門のところにアルトがいるのだ!)」
「……何か嫌な予感がする、オルトスもついてこい」
「ウォン!(わかったのだ!)」
オルトスに目配せをし、儂は急いで門へと駆けつけた。
非常事態かもしれないので、今回はオルトスも連れて行く。
すると、すぐにアルトとロハン殿が気づく。
「あっ、シグルドさん!」
「これはシグルド殿……その狼は?」
「あぁー、後できちんと説明するとして……それより、何があったんじゃ?」
「……そうですね、今はこちらが優先ですか。実は、アルト君の妹であるエルちゃんが攫われてしまったらしいのです」
「何と……」
すると、アルトが儂の足にしがみ付く。
そのか弱い力とは裏腹に、熱い気持ちが伝わってくる。
「シグルドさん……僕、何にもできなくて……! お兄さんなのに、妹を守れなかった……!」
「アルト……」
「じ、自分では何もできなくて……こんなこと頼める人、シグルドさんしか」
儂は泣きじゃくるアルトの頭をそっと撫でる。
それ以上、この子に言わせないために。
「安心せい、儂が必ず見つけ出す」
「シグルドさぁぁん……!」
「だから泣くでない。それに、お主にもできることがあろう」
「僕にも?」
「そうじゃ、現場と犯人の顔を知っているのはお主だけなのじゃから」
「そ、そっか……泣いてる場合じゃない」
アルトは、自ら目をこすり涙を拭う。
その顔はさっきとは違い、やる気に満ちていた。
それを確認し、儂はロハン殿に向き合う。
「ロハン殿、オルトス……我が相棒を街に入れる許可が欲しい。此奴なら、おそらく匂いで辿れるはずじゃ」
「その魔獣をですか……確かに狼系は賢く、従魔に向いておりますが。しかし、未登録ということですね?」
「うむ、左様じゃ」
「そうなると、中々に難しいかと。私が見ても、その魔獣は強いのがわかります。無論、見たところ理知的であることはわかっていますが……」
ふむ、やはり厳しいか。
儂としてはゴリ押しは好きではないのだが、あの紋章を使うべきか?
そんなことを考えていると、後ろから馬の足音がした。
その馬は止まることなく、門へと迫ってくる。
「な、何奴!?」
「待ってくだされ! あれは……ユーリス!?」
儂はロハン殿を手で制する。
何故なら、馬に乗っていたのは我が息子のユーリスだったからじゃ。
ユーリスはそのまま、儂の横に馬をつけて下馬する。
「全く、貴方って人は……まだ王都を立って数日なのに問題を起こしたのですか?」
「わ、儂は何もしとらんぞ!」
「はいはい、わかりました……失礼、私は王宮騎士団所属のユーリスと申します。まずは、私にもお話をお聞かせください」
「その銀の鎧は、確かに王宮騎士団の方……では、私から再度ご説明をさせて頂きます」
そしてロハン殿が、ユーリスに事の経緯を説明する。
その間、儂はアルトと向き合う。
オルトスも邪魔をしないように、儂の側で伏せをしていた。
「アルト、よく話の邪魔をしなかったのう」
「……だって、俺が何か言ったらそっちの方が邪魔になるかと思って」
「ほほっ、それがわかっているだけ上等じゃよ」
儂が思っている以上に、アルトはしっかりしているようじゃな。
そういえば、ユーリスを拾ったのもアルトくらいの歳じゃったか。
「あの人は誰なの?」
「儂のむす……弟分のようなものじゃな。儂の信頼する男の一人じゃよ」
「良いなぁ……僕もあんな風になりたい」
「ほほっ、お主も努力次第ではなれるわい。ところで、どうして門の前にいたのじゃ?」
時間が惜しいので、状況確認だけはしておかねばなるまい。
「えっと、エルが攫われて……母さんに知らせに行ったんだ。母さんは騎士団がいる方に行って、僕は何かできることあるかなって……そしたら、シグルドさんのことが浮かんだんだ。情けないけど、人を頼ることしか浮かばなかった」
「いや、それで正解だ。お主はまだ幼く弱く、頼ることは決して恥ではない。本当の恥は、自分の弱さを認められないことじゃ」
「自分の弱さ……」
「お主はエルを助けるために、必死に考えたのじゃろう? もしお主が一人で行動して、何かあれば二次被害になるところじゃった。何より、エルを助けるのが遅れることになる」
「……ちゃんと出来てた?」
「ああ、良き判断であった」
そんなやりとりをしていると、話を終えたユーリスがやってくる。
「シグルド様、話は聞きました。ひとまず、オルトスを入れても良いと許可が下りました。私の銀の鎧が、それを保証いたします。私がいることやその他については後にして、まずはその女の子を探しに行きましょう」
「うむ、事は一刻を争う。ユーリスよ、感謝する」
「あ、ありがとうございます!」
「いえいえ、それでは行きましょうか」
その後、ロハン殿に騎士団と町の人々へのオルトスの知らせを任せる。
途中で別れ、儂らは現場へと向かうのじゃった。




