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29 王子の絶望


次の日の早朝、神官は毎日の習慣である聖水を汲みに魔法の泉にやって来た。


今回は王子自ら、シンデレラの為にその聖水を城に運ぶとの事で早朝から王子やお付きの大臣も泉に来ている。

その為神官はいつもより少し緊張している。


魔法の泉はキラキラと輝いて、周りには年中花が咲き乱れている。

この景色は美しいが少し不気味にも見えてしまう。


神官は銀の桶に紐でくくった水を聖水を汲むための聖具にいつもの通り呪言をかけて、泉に沈めようとしたその時。


王子が

「待て!」

と、叫んだ。


神官が見ると水面がいつもよりキラキラと酷く輝きを放っている。


そのキラキラが収まった瞬間、周りのものは息を飲んだ。

王子は泉に飛び込もうとしたが、周りの神官や大臣に羽交い締めになって止められた。


「いけません!王子!!」


「危険です!!!」


「離せ!!!シンデレラが…シンデレラが…!!」


悲痛な王子の叫びが響き渡る。


魔法の泉には、シンデレラがまるで絵画のごとく美しく浮かんでいた。

その顔には生気は無く、誰の目にも絶望的な条件なのは一目瞭然だった。


「離せーーーー!!!」


悲痛な叫びが美しい景色に飲み込まれるのと一緒に、シンデレラは泉の奥底に沈んでいってしまった。


信じられないといった顔で王子はその場で崩れ落ちた。

しかし、直ぐに言い放った。


「…取り乱して、悪かった。

私は城に帰ってシンデレラを確認してくる。

神官は、滞り無く聖水を汲む事と、泉の調査を。」


信じたく無いと言う気持ちを、自分が見間違える分けが無いと言う確信が王子自身の心を押し潰しそうになりながらも、王子は急いで城に向かって馬を走らせた。


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