2 なるほどね
前世の私は、アルアルの24歳の社畜。
仕事まみれで、どうやら亡くなってしまってこの世界に転生した様子。
普通なら乙女ゲームとか、小説とかで心当たりがありそうなものなのに、私にはなんの見覚えもない、知らない世界だった。
そして、ただ王子の婚約者として順風満帆に育ってきた。
本来の流される性格はそのままに、なんとなーく王子を好きになって、このまま幸せになれたら…なんて考えていたけど。
どうやらそれは無理だったみたい。
そして、私が転生した世界が何なのか、12時の鐘の音がなるなか理解する事になる。
ゴーーーン ゴーーーン …
その瞬間、名もなき令嬢はハッとした顔で踵を返して会場を飛び出して走りだした。
しかし私の目の前で、
ズッテーーン!!!
いや、めっちゃ派手に転ぶやん!?ってツッコミを入れつつ、つい手を差し伸べてしまった。
「大丈夫!?」
「あっえっ……ごめんなさい!ありがとうございます!!」
あら、焦った顔も可愛い…。
じゃなくて、その後も鐘が鳴る中急いで走って会場を出ていってしまった。
そして、当然のように私の前に残された脱げたガラスの靴。
この茶番を見て気がついた。
どうやら、この世界はめちゃくちゃ有名なあの物語。シンデレラだったみたい。
名前も聞けず、消えてしまった無もなき令嬢を思って慌てふためいている王子に私は言った。
「王子〜彼女を探す良い案がございますよ〜」
自分でも馬鹿だなあと思いながらも、王子に無もなき令嬢のとても小さなガラスの靴を差し出す。
私って転生前と同じで今回もモブキャラだった?
がく然としながらも、なんとなく腑に落ちてしまう。そんな自分がなんとも言えない。