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8.昼下がりの伏撃──公園に潜む三つの影

毎週【月曜日・水曜日・金曜日】07:10に更新!

見逃さないようにブクマだけでもしてもらえたら!

作者は(。≖‿≖ฺ)ニタァってしてます。

嬉しいからね。仕方ないね。


・前回のあらすじ


異世界からやってきた死神剣士ヘルメス、ついに街デビュー!

高層ビルに度肝を抜き、帽子で角を隠してサンドイッチに感動しつつ、名探偵ルナと徐々に打ち解けていく。

ところが“魔王アル=ザラフ”にまつわる謎が再燃する予感!?

そしてそんな公園に怪しい3人組が……!?


連載形式で更新していく予定ですので、ぜひ最後までお付き合いください。

 ベンチでの軽い食事を終え、ルナと俺は立ち上がった。

 昼下がりの公園には穏やかな光と、行き交う人々の声が溢れている。


 だが、その空気を切り裂くように、三人の男が親子を狙っているのがわかった。

 木立の間をすり抜けながら、互いに合図を送り合い、まるで襲撃の機を窺う兵士のように動いている。


「ヘルメス、あの三人……」


 ルナが小声で囁き、先ほどから察していたとおりの情報を続ける。


「真ん中の男がリーダーみたい。ジャケットの下に小型の拳銃、右の男は刃物を隠してるわ。左の男は手袋の下にメリケンサック。気をつけてね」


 たとえ現代の銃や刃物に馴染みはなくとも、“敵意をはらむ空気”は戦場と変わらない。

 仕掛けの直前に漂う緊張感……それは、ここでも同じらしい。


 胸の内で軽く息を吐きながら、足元にあった小石を蹴り上げて手に取った。

 いざという時、これで一瞬の隙を作れるかもしれない。


 親子はまだ全く気付いていない。


 子どもが「ママ、アイス食べたい!」と笑顔でせがみ、母は「もう少し待ってね」と優しく応じている。

 しかし三人組は足並みを揃え、親子の背後を取ろうとし始めた。


 通行人が少ないルートを見計らっているらしく、その先には大きな茂みと遊歩道のカーブがある。

 視界が制限されれば、人目につかないうちに襲える算段なのだろう。


「行こう」


 ルナが一瞬、目を伏せるようにしてから、俺に合図を送る。

 被害を防ぐなら今しかない。俺たちは自然に歩を進めつつ、相手が身を隠す木陰へ近づいた。


 間もなくリーダー格の男が軽く口の端を動かす。何らかの合図だ。

 右の男がポケットに手を突っ込み、刃物を抜きかける。


 左の男は手袋の上からメリケンサックを調整しつつ歩幅を上げ、母親のカバンへ手を伸ばそうとする。

 リーダーはジャケットに手を入れ、拳銃を抜くタイミングを計っているのがわかった。


(…ここだ)


 子どもが振り返るまであと数秒。


 その間に母親が危害を加えられれば手遅れだ。

 俺は小石を持つ手に力を込め、素早く指先で弾いた。

 石はほぼ音もなく飛び、右の男の手首を正確に打ち据える。


「っ痛……!」


 男が刃物を落としたのと同時に、俺は踏み込みざまに肘を顎に叩き込んだ。

 声にならない悲鳴がくぐもり、男の体が地面へ崩れ落ちる。


 それに気を取られた左の男が驚きに目を見開いた瞬間、俺は逆の腕で彼の拳を受け流し、身体をさばいて足を払う。

 重心を奪われた彼は芝生へ転がり込んだ。


「な……なんだお前……」


 リーダー格の男が焦りを含んだ声を漏らしながら、腰のあたりを探る。

 すかさず俺は距離を詰め、下から手首を強打するように突き上げた。

 何か黒い塊が男の手から飛び出し、地面へ落ちる。


 ――拳銃だ。


 すぐさまリーダーの腹部を蹴り上げると、男は堪えきれず膝を折った。


「あっ、あの……」


 母親がようやく事態に気づき、子どもを後ろにかばうように手を伸ばす。

 子どもは「わ……わあ……」と驚いているのか感心しているのか、泣きそうな顔のまま固まっていた。

 ルナが素早く近づき、「大丈夫。怪我ない?」と声をかけて親子を安全な場所へ誘導する。


 地面には刃物と拳銃、そして転がるメリケンサック。

 男たちは三人とも満足に動けない状態だ。


 リーダーは苦々しい表情を浮かべながら俺を睨むが、反撃の術は失ったらしい。

 近接戦闘で一瞬に制圧されたのがよほど信じ難いのだろう。


「昼間っからこんな派手なことして、馬鹿じゃないの?」


 ルナが呆れたように吐き捨てながら、スマホで警察に連絡を入れる。

 リーダーは肩で息をしながら「くそっ……あとで後悔させてやる……」とぼそりと呟いたが、拳銃も奪われた今、虚勢以外の何物でもない。


 俺がリーダーを抑え込んだまま、その袖を何気なくめくると、小さな紋様がかすかに刻まれているのを見つけた。


(…これは? アストレリアで見た“あの刻印”に似ているような気がする……)


「ヘルメス、どうかした?」


 ルナが母子を落ち着かせたあと、こちらへ駆け寄ってくる。

 俺は袖口から覗く紋様を見やりながら小さく首を振った。


 説明しようにも、言葉がうまく出ない。


 リーダーは「やめろ……触るな……」と嫌がるように身体をねじる。

 その慌てぶりがますます怪しい。


 遠くで警察車両のサイレンが鳴り始め、周囲の人々が「何事?」と遠巻きに見つめていた。

 ルナは親子を安心させながら「ごめんなさい、怖かったわよね。もう大丈夫」と穏やかに声をかけ、スマホを片手に警官の到着を待っている。


 一方、俺はリーダーの腕を押さえつけたまま、あの紋様に目を留める。

 まさか、こんな形で“異世界とのつながり”を感じることになるとは……。


(ただのひったくり未遂にしては、裏がありそうだ。これは、もっと大きな事件の入り口かもしれない)


 昼下がりの穏やかな公園で起きた小競り合いにしては、ずいぶん嫌な“気配”が残る。

 警官たちの足音が迫り、サイレンが耳につんざくような音を立て始めた。

 そろそろ騒ぎが公になる。


 リーダーの怨嗟めいた視線を背に受けながら、俺はごくりと唾を飲み込む。

 “死神”の異名を持つ俺が、この先どんな陰謀へ足を踏み入れるのか――その一歩が今、確かに始まった。

最後まで読んでいただき、本当にありがとねぇ!

評価やブックマーク、レビューを頂くたびに、作者は嬉しさの余りブレイキングしてます。

難しくて足首捻りました。


マジです。

まぁ、そんな評価もらったらずっと踊り続ける事になるな。

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