54.ヘルメスのバイク試験――消えたカレンの行方は?
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作者は(。≖‿≖ฺ)ニタァってしてます。
嬉しいからね。仕方ないね。
・前回のあらすじ
車の免許をゲットしたヘルメスが今度はバイクに挑戦。
ヴィクターの協力を得てMSF講習に乗り込むと、なんと眠気全開のカレンまで参戦。
馬より車よりバイクは手強いが、ランチタイムには弁当をシェアして和気あいあい。
退院間近のルナへのサプライズも控え、ますます盛り上がるヘルメスの“鉄の馬”デビューはいかに――。
連載形式で更新していく予定ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
午後も実技練習が続く。
スラロームやUターンなどの課題に加え、低速での安定操作がメインとなり、どの受講生も苦戦している様子だ。
俺も何度かギクシャクさせてしまうが、少しずつコツをつかみ始めた。
対照的に、カレンは眠そうな顔のまま、課題をそつなくクリアしていく。
彼女が淡々と操作している姿に、周囲の受講生が「すごいね」と声をかけるが、カレンは「…ふぁ……ありがと」と相変わらずの調子。
それでも講師には「安定感がある」と褒められているようだ。
最終的に「初日にしてはなかなか順調」と言われつつ、1日目の講習は終了。
帰り際、カレンに「眠いのに大丈夫か?」と尋ねると、「……意外と体は平気」とぼそっと答えていた。
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翌日も同じMSF会場で講習の続きがある。
男女入り混じった受講生たちが、それぞれ前日の感覚を思い出しながらバイクに乗る姿は、初日より少しだけ頼もしく見える。
カレンはやはり眠そうな様子で現れ、「…おはよ」と一言。
だがバイクにまたがれば安定した操作で課題をこなし、講師も「いい感じ」と太鼓判を押している。
彼女の飄々とした実力に、隣の受講生たちが驚くのを横目で見るたび、俺も負けじと必死にクラッチやブレーキ操作を復習する。
(カレンがあそこまで余裕なんだ、俺にできないはずがない…!)
馬と車の操縦経験を胸に、「身体全体のバランス」「視線」「半クラッチのタイミング」を頭に叩き込み、何とか午後の試験に備えようと決心する。
いよいよ実技テストの時間が近づき、参加者は順番にコースへ呼ばれる。
課題は発進から指定速度の直進、低速バランスセクション、スラローム、最後の急制動――この流れを転倒や大きなミスなくクリアする必要がある。
先にカレンの番が来たらしく、遠目に見守ると、彼女はいつもの糸目で淡々とコースに臨む。
しかし走り始めれば発進もスムーズで、ギクシャクすることなくスラロームを抜け、急制動も安定して止めてみせる。
休む間もなくヘルメットを脱いでスタッフに書類を渡している姿は、まるで眠そうなのに自信たっぷりだ。
(あいつ、本当に安定してるな…)
内心驚きつつも、周囲の受講生が感嘆の声を漏らすのを耳にして、俺も素直に「大したやつだ」と思う。
そして、ついに俺の名前が呼ばれた。
「次、ヘルメスさん、準備お願いします」
試験官の声に呼ばれ、深呼吸をしてバイクにまたがる。
頭の中で何度も手順を復習し、クラッチ、ブレーキ、アクセルの加減をイメージする。
(カレンができて、俺にできないはずがない。大丈夫だ…!)
自分に言い聞かせつつ、エンジンの振動を腕に感じる。
アナウンスが「スタートしてください」と告げるのと同時に、俺は慎重にクラッチをつなぎ、試験コースへと走り出した。
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結論から言うと、俺はほぼ失敗なく試験を終えることができた。
パイロンのスラローム、指定速度からの急制動――どれも慎重にこなし、最後まで転倒も大きなミスもなし。
試験官が「問題なさそうですね」と言ってくれたときは、思わずガッツポーズしてしまったほどだ。
(よっしゃ……! なんとかなったか…)
バイクを降りたあと、喜びがこみ上げてきて、真っ先にカレンのもとへ駆け寄ろうとした。
彼女の走行を遠目で見守っていたときのように、俺の結果を見てくれているかと思ったからだ。
だが、あたりを見渡してもカレンの姿はどこにも見当たらない。
「……あれ、どこ行った?」
まばらに受講生が集まるコース脇を一通り探してみたが、彼女らしき赤い髪も、いつもの眠そうな横顔もない。
講師にそれとなく聞いてみても「さあ、先ほどは見かけましたが……」と首をかしげるばかりで、居場所はわからなかった。
そうこうしているうちに、他の受講生たちも続々とテストを終え、合格か不合格かの結果を受け取っていく。
結局、カレンは最後まで姿を現さなかった。
妙な胸騒ぎを抱えたまま、俺は教習終了のアナウンスを聞きながら、彼女のいないままの会場を後にするしかなかった。
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