48.陽光の中の闇――昼下がりの奇襲
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見逃さないようにブクマだけでもしてもらえたら!
作者は(。≖‿≖ฺ)ニタァってしてます。
嬉しいからね。仕方ないね。
・前回のあらすじ
ヘルメスはバイク筆記試験に合格した帰り道、極度の眠気に襲われる赤髪少女を背負う羽目に。
ところが人払いの術式が張られた路地で、謎のローブ集団に襲撃される。
少女を守りつつ彼らを迎え撃つヘルメスだが、その背後でぐっすり眠る彼女はいったい何者なのか――波乱の帰り道が幕を開ける。
連載形式で更新していく予定ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
ローブの男たちは、それぞれが無言のまま微妙に立ち位置を変え、こちらを囲もうとしていた。
一瞬だけ漂う静寂。
次の瞬間、先頭の男が合図でもしたように急接近してくる。
金属の刃先が太陽光を受けて鋭い反射を放ち、昼下がりの通りに違和感をもたらした。
しかし、その刃筋はあまりに大振りで、軌道が見えすぎる。
俺は右足を後ろに引いて身体を回し、空を裂こうとした斬撃を寸前でかわす。
同時に、その勢いを利用して相手の懐へすべり込むように踏み込み、肘を胸奥へ食い込むように振り下ろした。
男の呼吸が短く乱れた気配を感じた瞬間、右腕で後頭部を引き寄せ、上体を崩しながら地面に投げ落とす。
一人目が沈むと同時に、仲間が一斉に突進してくる。
左右の視界から襲いかかる攻撃に対し、まずは上体を沈め、右の攻撃を腕の動きだけで流す。
続いて、左の拳が迫るのを手首ごと外にはじき出す。
さらに踏み込んだ足へ瞬時に目をやり、相手の膝裏を狙って蹴りを放つと、男は隣のローブと衝突し、全体の隊列が乱れた。
(壁際のあの子を巻き込みたくない。もう少し引き離すか)
そう判断して、あえて敵陣のほうへ踏み込みながら空間を広げる。
すると、一人が拷問器具めいた鉄製の道具を高く振りかざし、勢いに乗って深く踏み込んできた。
俺は相手の振り下ろしに合わせ、腕の連動だけで器具を絡め取るように受け止め、そのまま相手の重心を崩して地面へ押さえつける。
肩が不自然な角度を迎え、男は武器を放さざるを得ない。
その直後、背後から別の気配が迫る。
振り返るより先に身体をわずかにひねり、後ろから飛んできた蹴りを片腕で制する。
そして肘を鋭く上げる形で顎を打ち抜くと、男の上体が弛緩し、崩れ落ちる。
「貴様……よくも……」
最後の男が何か低く呟きながら、剣のように尖らせた刃を突き出してくる。
だが、その刺突は単調すぎる。
俺は上体をかすかにそらし、刃先をかろうじて外へ逃がすと同時に、手首を払うようにして相手の進路を折り曲げる。
わずかにがら空きとなった懐を逃さず、拳を振り下ろすように打ち込む。
男は背を丸めて倒れ込み、膝から地面に沈んでいった。
意識が途切れるまで、一言の叫びすら発する間はない。
短い静寂が通りを支配する。
ローブの男たちは床に伏し、うめき声を上げている者か、完全に意識を失った者ばかりだ。
昼の強い陽光が照りつけるなか、俺は軽く息を吐き出す。
(大したことはなかったな)
背後を振り返ると、壁際に寝かせてある赤髪の少女は相変わらず安らかな呼吸を続けている。
この数分間、一度も目を開く気配すらなく、まるで周囲の出来事とは無縁のようだ。
「まったく、大物なのか、単に鈍感なのか……」
小声で呟きながら、地面に倒れ込んだローブの連中を一瞥する。
いずれも苦しげに息をするか、微動だにしないかの状態で、すぐに立ち上がる者は見当たらない。
(こいつらの正体は後日調べればいい。今は彼女を安全なところへ運ぶのが先だ)
そう結論づけて、赤髪の少女へ近づく。
涎を垂らしたまま、まるで何事もなかったかのように眠り続ける姿は、見方によっては堂々たるものですらある。
名前すら知らないが、まずはこの深い眠りから解放してやる必要がある。
「ヴィクターから『面倒は避けろ』って念を押されてたのに……」
苦笑を漏らしつつ、俺はもう一度彼女の身体を背負い上げる。
華奢な体重が改めて肩にのしかかり、微かに甘い息遣いが首筋へ触れる。
人払いの術式がまだ残っているのか、通りには依然として誰の姿も見えない。
警察が来る前に、ここを離れたいところだ。
(よし、さっさと移動してしまおう。名前はあとで聞けばいい)
地面に転がるローブたちを見やるが、関わるつもりはさらさらない。
軽く肩を回して気配を確認してから、少女の寝息を感じつつ静かに歩み出す。
さっきまでの騒ぎが嘘のように、陽光の下にはほのぼのとした空気が戻りかけていた。
(人払いが解けきる前に退散だ)
そう腹の中で呟き、彼女を背負ったまま道を曲がる。
ビルの合間を抜け、昼の街角をゆっくりと遠ざかる頃、後方で聞こえるかすかなサイレンの音が意識に引っかかったが、もう気にする余裕もない。
面倒ごとは一応片付いた――そう割り切り、俺は眠る少女の世話へと集中することにした。
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