40.ルナ不在の夜――動き出す剣士
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作者は(。≖‿≖ฺ)ニタァってしてます。
嬉しいからね。仕方ないね。
・前回のあらすじ
グラントに送られ、早朝の病院を訪れたヘルメスとヴィクターは、倒れたはずのルナが想像以上に元気な姿でベッドにいるのを見て胸を撫で下ろす。
だが、彼女を世話するアーディアは“危険な男”とヘルメスを値踏みするような視線を向け、場には不穏な空気が漂う。
彼らはカルト教団アストラル・イニシエイトが奪った研究の手掛かりを求め、アーディアの経営する高級バーで落ち合うことを約束。
ルナの回復とアーディアの協力を得たことで態勢は整いつつあるが、その先にはさらなる危機が待ち受けている。
病室の淡い光の中で固められた決意が、新たな戦いの幕をこじ開けていくのだった。
ヴィクターの車に乗せられ、探偵事務所へと帰ってきた。
外の空気はまだ冷たく、街は静寂に包まれている。
早朝の薄暗い空に、わずかにオレンジが差し込み始めていた。
助手席から降りると、ヴィクターが窓を開けたまま俺に向かって声をかける。
「じゃあ、僕は研究所に戻るよ。ヘルメスも、少しは休んだほうがいいんじゃない?」
「俺は元々あまり眠らん。……それに、こういう時こそ動くべきだ」
「でもあんまり無茶しちゃだめだよ! ……じゃあ、また後で」
ヴィクターは軽く手を上げ、車をゆっくりと発進させる。
排気音が静かに遠ざかるのを聞きながら、俺は扉を開けて事務所の中へと足を踏み入れた。
室内はひんやりとしていた。
普段ならルナが朝のコーヒーを淹れる音や新聞をめくる気配があるのだが――今は誰もいない。
静寂。
ルナのいない探偵事務所は、こんなにも寂しいものなのか。
無言のままソファに腰を下ろし、短く息を吐く。
ルナは元気そうだったが、アーディアに止められ、結局半月ほど入院することになった。
……まあ、それが正解だろう。
アイツのことだから、すぐにでも退院しようとしたに違いない。
けれど、そう簡単に済む話じゃない。
セシリアは致死性の毒だと言っていたが、あの様子ではそこまでのものではなかったのかもしれない。
――甘いのはどっちなんだか。
皮肉めいた考えが浮かび、自然と小さく笑う。
とはいえ、だからといってこのまま何もせずにいるわけにもいかない。
探偵事務所はルナがいないため休業状態だが、時間は有限。
こういう時こそ、こういう時にしかできないことをやるべきだろう。
幸いにも、今回の一件でヴィクターからかなりの額をもらった。
助けてもらったお礼とのことだったが、正直「こんなに貰っていいのか?」と思うほどの額だった。
視線を窓の外へ向ける。
朝焼けの色が、ビルの隙間からわずかに差し込んでいる。
車のエンジン音が遠くで響き、街がゆっくりと動き出そうとしていた。
ふと、やってみたかったことを思い出す。
夜になり、探偵事務所のインターホンが鳴る。
「開いてるぞ」
そう返すと、玄関のドアが軽く開く音がした。
現れたのは私服姿のヴィクター。
手には酒とおつまみを持っている。
「ヘルメス~、遊びに来たよ~」
軽い調子で言いながら、彼は部屋に入りテーブルへと酒瓶を置く。
視線を俺へ向けた瞬間、彼の眉がわずかに上がる。
「いやぁ、職員のお給料のこともあるし研究所の修理のことも考えながら……って、なにやってるの?」
俺はテーブルに広げた本に視線を落とす。
それはルナの本棚から引っ張り出してきた、車の免許の筆記試験問題集だった。
「実はルナがいない間に、車の免許を取りに行こうと思ってな」
「は?」
ヴィクターの表情が、明らかに「聞き間違えたか?」と言いたげに変わる。
「ヘルメス……身分証とか持ってるの?」
「ルナが、俺がここに来たときにすべて用意してくれた。あいつには頭が上がらないが、こんな時にしか取りに行けんしな」
ルナはこの世界で生きるために必要なものをすべて手配してくれていた。
住居、服、金、そして偽造された身分証。
言葉もそうだ。
俺がこの世界に順応できるように、ルナは惜しみなくサポートしてくれた。
ヴィクターはぽかんと口を開けたまま、俺の手元の問題集を見つめている。
しばらくして、唇の端を持ち上げ、面白そうに目を細める。
「異世界の剣士が……車の免許かぁ」
彼の脳内で、俺がハンドルを握って運転する様子を想像しているのが分かる。
その表情は、純粋な興味と可笑しさが混ざり合ったものだった。
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