4.堕ちた死神と天才探偵──警察署での邂逅
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見逃さないようにブクマだけでもしてもらえたら!
作者は(。≖‿≖ฺ)ニタァってしてます。
嬉しいからね。仕方ないね。
・前回のあらすじ
前回、天井から突如落ちてきた“剣士”が、銀髪の女と手を組んでカルト教団員を制圧。
生贄にされかけていた女性を救い出すことに成功したものの、その直後に現れた“新たな組織”がふたりを包囲し、再び武器を突きつける事態となってしまう。
銀髪の女は「武器を捨てろ」と促し、剣士は身を削る思いで双剣を下ろすが、彼らの正体は不明のまま。
果たして、この突発的な共闘はさらなる苦境を乗り越えられるのか――。
連載形式で更新していく予定ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
“ビルの屋上から落ちてきた剣士”は、警官隊に連行された。
それも当然だろう——空から剣を携えて降ってきたという、常識外れの存在なのだから。
大きな騒ぎになったのは、あるカルト教団のアジトと目されたビルでの一件がきっかけだ。
突入してきた警官たちが見たのは、砕けた天井から落下した瓦礫と、剣を抜いたまま立ち尽くす不審な男。
さらに逮捕された教団員たちの証言によれば、「銃弾を斬り払った」「人間離れした動きだった」と、耳を疑う話がいくつも飛び出した。
警察がそれを直接確認したわけではないが、無視して放っておくわけにもいかない。
こうして、謎の剣士を“危険人物”としていったん拘束せざるを得ない状況になったわけだ。
ところが――本来、警官隊を呼び寄せた張本人である探偵の女は、「彼をそう簡単に危険人物扱いにさせたくない」と考えているらしい。
警察署の奥まった廊下では、書類の音と足早なやり取りが響いていた。
その一画へ、探偵の女性が鼻歌まじりに足を向ける。
彼女こそがビルのアジトを探り出し、応援要請を出した張本人。
"探偵"ルナ・フォスター
だが突入の際、彼女は予想外のトラブルに見舞われていた。
上階から轟音と共に天井が崩落し、降り注いだ瓦礫のせいで拳銃を取り落としてしまったのだ。
優勢を崩されかけた……そのとき、“上層から落ちてきた剣士”が飛び込んできて、その彼と協力して生贄にされかけていた女性を救った。
もし剣士の助けがなければ、被害はもっと拡大していたに違いない。
その経緯から、探偵は彼がただの化け物などではなく、大きな謎を秘めた“恩人”でもあると感じている。
廊下の突き当たりでは、警部が苛立たしげに書類をめくりながら部下へ指示を飛ばしていた。
ビル破損の修理費、そして身元不明の剣士……と、報告書だけでも相当量らしい。
「グラントさ〜ん♡ 相変わらず仏頂面してるわねー」
探偵が軽い調子で声をかけると、周囲の警官たちが慌てて道を空ける。
警部は書類を机へ放り、探偵を渋い表情で見やった。
「ルナ……。その笑顔、気に食わないな」
どこか苦い声色だが、探偵にとってはいつものやり取りと変わらない。
彼女は「あくまで仕事なのだから仕方ない」とでも言いたげに、逮捕された剣士の隣へ向かう。
黒い外套に銀白色の髪をたなびかせ、剣士は無言で腰かけていた。
“落下”という言葉では足りないほどの非常識な状況をやってのけた人物だが、探偵の目にはただの怪物というより、大きな謎を抱えた存在に映っているらしい。
「まったく……」
警部がこめかみを押さえて大きな息をつく。
「で、何しに来た? まさかその男をかばう気か?」
探偵は肩をすくめてみせた。
「ええ。“弁護人”って資格はないから、‘代理人’みたいなものでもいいわ。とにかく彼の面倒は私が見る」
強引な言葉に警部は書類をトン、と叩く。
元々この男はビルの破損や教団員への暴行(とはいえ正当防衛のようだが)で拘束された形になっている。
警察としては放免するわけにもいかない。
「……本当にお前が責任を持つのか? もしまた何か起きたらどうする」
問い詰める警部に、探偵は微笑を返した。
「連続失踪事件、まだ手こずってるんでしょ? 私が捜査に協力するから、あの剣士は私に引き渡してほしいの」
その言葉に、警部は一瞬だけ沈黙する。
書類を握る指がやや強張り、部下たちも成り行きを固唾を飲んで見守っていた。
探偵の横顔には不思議な自信が漂う。
「剣を持つ謎の男を自由にしていいのか?」という疑問は当然あるが、同時に彼女の捜査協力が連続失踪事件の突破口になり得ることも警部は理解している。
だからこそ、あえて強い口調で揺さぶりをかけているのだ。
それでも探偵の揺るぎない視線に、警部は次第に言葉を継げなくなった。
「そもそもビルでのアクシデントだって、私が応援を呼んだせいで彼が巻き込まれたようなものだし、何より彼は生贄にされそうだった女性を救ってくれたのよ」
そう畳みかけられ、警部はコーヒーを一息に飲み干すと舌打ち混じりに言う。
「……分かった。だが何かあればお前が責任を取れよ? どうなっても知らんからな」
「もちろん。そもそも剣士さんがいなかったら、私も拳銃を落として大ピンチだったわ。助けてもらった恩返ししないと」
探偵はそう言って書類を確認し、剣士のほうを振り返る。
相手は言葉が通じないのか、何が決まったのか分からず困惑したままだが、とりあえず厳重な拘束からは解放されそうだ。
(まあ、この先も厄介ごとが多そうだけど)
彼女は心のうちでそう思っている節がある。
それでも、何か面白い展開を期待しているかのような笑みを浮かべながら、剣士の腕を軽く引いた。
警部は「いつもこんな調子だ……」とぼやく声を残し、書類の山へと向き直る。
こうして、探偵と“ビルの屋上から落ちてきた剣士”は警察署の執務室を後にするのだった——。
最後まで読んでいただき、本当にありがとねぇ!
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マジです。