29.崩れゆく偽界――迫り来る毒の魔手
毎週【月曜日・水曜日・金曜日】07:10に更新!
見逃さないようにブクマだけでもしてもらえたら!
作者は(。≖‿≖ฺ)ニタァってしてます。
嬉しいからね。仕方ないね。
・前回のあらすじ
ヘルメスがついに本気のゼロカオス斬で“世界そのもの”を斬る覚悟を決めちゃって、魔眼セシリアも「第二段階とか言っちゃう」ファンタジーバトルを全開!
ラティーシャとの草原ほのぼの思い出から一転、今は廃墟&空間崩壊ギリギリのデスバトル!?
甘さ全開の死神剣士が、娘のように思っていたラティーシャの“実際の娘”と魂のガチ衝突へ。
大丈夫なのか…もはやいい意味でカオスが止まらない!
最強剣技と最悪魔眼の激突がとんでもない結末を呼ぶ予感!
連載形式で更新していく予定ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
闇と光が交錯する偽界の深い歪みの中、 俺は剣先に“ゼロカオス”を凝縮していた。
《月影》の刀身へ破壊の圧を注ぎこむと、内側から熱がこみ上げるように感じる。
一瞬、瞼を閉じ、大きく息を吐いた。
迷いを振り切るために。
(この世界で出来た、大切な仲間を守るために!)
覚悟を定めた俺の剣撃には、魔力すら無に返す“異質な殺気”と鋭い気迫が宿る。
――そして小さく呟いた。
「終極の型――滅閃」
静かな声とともに、月影が描く一閃は、周囲の空間そのものを断ち切らんとする凄まじい衝撃を放った。
ゼロカオスに覆われた刃は、魔力の流れごと偽界を崩壊へ追い込む。
バキッ……と何かが折れる音。
歪みに軋むコンクリートの床と壁が大きく震動していた。
セシリアの足元を取り巻く空間の歪みさえ、その衝撃に耐えきれず噴き出す風のように弾け飛ぶ。
彼女は必死に魔眼を使い、ねじれた偽界を維持しようとしているが《滅閃》の圧倒的な破壊力には及ばない。
視界の揺らぎが、裂けるたびに正常へ戻り始めた。
「っ……この力、想像以上ですね。けれど……!」
偽界が崩れきる刹那、セシリアが素早く体勢を低くする。
残存する歪みをかろうじて利用し、擬似的な瞬間移動――一気に間合いを詰めてきた。
闇に閃く刃が視界を横切る。
暗器か。
月影をかわす鋭い角度で襲ってくる。
だが、偽界が崩れた今なら彼女の動きがよく見える。
俺は身体をわずかに捻り、ゼロカオスを宿した月影の剣圧をぶつけるように振る。
金属がぶつかる甲高い音。
火花が闇に散って、ナイフは弾き飛ばされていく。
武器を失ったセシリアの両手には、もう何も残らない。
そう思った瞬間。
彼女は続けざまにもう一歩懐へ踏み込み両手の代わりに首飾りの宝珠を死守するようにかばう。
あえて俺の剣先へ身を躍り出すように……胸がざわつく。
まるで“その手ごと斬れ”と誘っているようだ。
彼女が捨て身で死守しようとするその宝珠にはよほど重要な魔力が宿っているのだろう。
ここを断ち切れば勝負は終わる。
俺は確信し、大きく腕を振りかぶった。
「終わりだ……!」
振り下ろす月影の刃先はネックレスの紐へ一直線に。
防ぎようなどない。
――はずだった。
だが、セシリアは手を失うことも厭わず、真正面から受けにくる
脳裏にラティーシャの笑顔が閃く。
あれの娘でもある、この女の腕を本当に切り落とすのか?
一瞬の迷いが脳を駆け巡り、歯ぎしりするように唸った。
「チッ……!」
わずか数ミリ手前。
俺は剣先を引く。
宝珠の紐へ掠めただけで軌道を逸らし空間を断ち割る衝撃だけが彼女をのけ反らせた。
もし振り下ろしていれば確実に腕が飛んでいた。
セシリアは受け止め切れず足を滑らせながらも、両手は無事。
首飾りの宝珠も傷ひとつない。
彼女がそれを抱えるように胸を抑え、表情にかすかな笑みを滲ませる。
「……貴方が甘くて助かりました」
満足そうな声。
俺はその笑みに苛立ちを感じる。
息を荒げながらも、奴の瞳にはまだ余裕があるように見えた。
「……ったく、反則だろ。可愛い顔して、えげつない手を使いやがる」
崩れかけた偽界の残滓が、廃墟の暗闇にひらりと揺れる。
セシリアとの間にわずかに距離が残ったが、まだ戦える雰囲気が漂っている。
俺が間合いを詰めようとした、その瞬間。
彼女はイヤーカフへ指を添えた。
ほとんど聞き取れないノイズがそこから流れ、セシリアは嘆息交じりに口を開く。
「どうやらここまでのようですね。――導師様から撤退の命令が下りました。あなたとの戦いは、一旦終わりです」
「…逃がすと思うか?」
一歩を踏み出す。
だが、セシリアは挑発するように金色の瞳を向け嘲笑じみた表情を浮かべる。
「さっき銀髪の女性を拘束した際に使った暗器――あれに“致死性の魔毒”を仕込んでいました。深く回れば心肺に影響が出る。あと十分も猶予があるかどうか……。それでも私を追います?」
頭に血が上る。
ルナが毒に蝕まれている?
焦燥と後悔が一気に込み上げ、思わず廊下のほうを振り返る。
セシリアを止めたい気持ちをぐっと押し込むが、ルナが最優先だ。
彼女は一歩後退し、崩れた瓦礫の影へすっと身を沈めた。
金の瞳はまだこちらを捉えているのがわかる。
嫌なほど刺すようだ。
「私も急いで撤退します。……次こそは必ず、あなたを殺す」
その言葉とともに、セシリアの気配が闇の中へ溶けるように消えていく。
追えそうだが、ルナの毒が――。
(くそ……!)
心底からの苛立ちを噛み殺しながら、拳を強く握りしめた。
すでにセシリアの足音は聞こえない。
研究所の灯りが点滅を続け、ノイズ混じりの警報音がむなしく響くだけ。
だが今はルナを救うのが先だ。
「待ってろ、ルナ。すぐに行く」
小声でそう呟くと、俺は迷わず背を向け、廊下へ走り出す。
瓦礫を踏み越え、まだ警報ランプが絶えず赤い閃光を送る薄暗い道を駆け抜ける。
ルナやヴィクターは無事だろうか……。
十全な解毒策はあるのか……。
様々な不安が頭をよぎるが、諦めるわけにはいかない。
(セシリア……好き勝手やりやがって。だが、お前も苦しそうだった。それが“母の復讐”の代償か? ……もう一度会うときは、絶対に止めてみせる)
舌打ちを噛み殺しながら、俺はさらに速度を上げる。
今の俺には、仲間を守る以外に選択肢はない。
廃墟の奥から吹き込む風の冷たさが焦りと怒りで熱くなった頭を少しだけ冷やしてくれた。
廊下の向こうには暗がりだけが広がる。
セシリアは闇に消えた。
だが、戦いはまだ終わらない。
ルナの毒も、導師の存在も――。
そんな不穏な予感を胸に抱きながら、俺は瓦礫だらけの道を飛び越え警報ランプの赤い閃光をかいくぐって突き進んだ。
最後まで読んでいただき、本当にありがとねぇ!
評価やブックマーク、レビューを頂くたびに、作者は嬉しさの余りよさこいしてます。
第五の型:終極の型》── "全てを断つ剣"
《滅閃》 —— 空間そのものを断ち割る剣技。斬撃の軌道上では風圧が生じ、空間が歪むように揺らめく。防御の概念を無効化し、何もかもを一瞬で切り裂く破壊力を誇る。
終極は4つの剣技があります!




