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20.崩壊寸前の研究所――終わらない警告音

毎週【月曜日・水曜日・金曜日】07:10に更新!

見逃さないようにブクマだけでもしてもらえたら!

作者は(。≖‿≖ฺ)ニタァってしてます。

嬉しいからね。仕方ないね。


・前回のあらすじ


仮面男ザハンの暗躍で転移装置が大暴走寸前!

爆発による施設丸ごとの吹き飛びリスクに、ルナとヴィクターは緊急停止をかけるべく操作に奔走。

一方、ついにヘルメスが剣「月影」を抜刀し、闇の刃を自在に操るザハンに真っ向勝負を挑む!

廃墟の警告ランプが赤く明滅する中、死神剣士 VS 影喰いの激突が始まった。

果たして転移装置の暴走を止められるのか?

そしてザハンの狙いは一体何なのか?

それぞれが限界ギリギリで挑む、緊迫の戦闘が今まさに加速する!


連載形式で更新していく予定ですので、ぜひ最後までお付き合いください。

 警告ランプの赤い光が、闇に沈む廃墟の施設を狂気を帯びた色合いで染め上げていた。

 転移装置の暴走によって生じる轟音はヴィクター・ハーグレイブの耳を突き刺すように響き、床から伝わる激しい振動が全身を震わせている。


 機械の軋む悲鳴が低くこだまし、ヴィクターは背筋をじっとりと汗が伝うのを感じ取った。

 まるで、この空間だけが異世界に切り離されてしまったかのような錯覚さえ覚える。


「ルナ、これじゃまともに操作できないよ!」


 恐怖に任せ、端末を手にしたままヴィクターが叫ぶ。

 床には配線や砕けたパネルの破片が散乱し、一歩踏み出すごとに危険が付きまといそうだった。

 かつてヴィクターの父が封印した研究施設が、いまや“崩壊寸前”の実験室と化しているかのようだ。


「大丈夫、私がプログラムを抑えるから、あなたはお父さんの資料を使って“制御装置”をはめ込む方法を探して! あなたにしかできないのよ!」


 ルナ・フォスターの声には、焦りと責任感が混じり合っている。


 彼女の横顔には極限状態ならではの必死さがあり、それでもなお端末に流れる赤いエラーコードへ粘り強く対処し続けていた。

 画面を埋め尽くす文字列は、あたかも最後の抵抗を示すかのように点滅している。


 そんな二人の背後では、金属が激しくぶつかり合う音がひっきりなしに響いていた。


 ヘルメス・アークハイドと、白い仮面をつけた男――ザハンとの戦闘だ。


 どちらも一歩も譲らないといった様子で、一見すれば拮抗しているように見える。

 だがヴィクターには、ヘルメスが相手の攻撃を冷静にいなし、あえて本気の斬撃を控えているように感じられた。

 それは、相手を見極めているかのような奇妙な空気だった。


「まさか……“影”を自在に操る相手と、あの刀だけで拮抗するなんて。まるでアニメでも見てる気分だよ……」


 ヴィクターの声がわずかに震えている。

 あの斬撃の軌道が残像めいた閃光を刻むたびに、胸は高鳴り、同時に恐怖も増幅していった。


 ヘルメスが振るう刀は鋭く、ザハンの闇の刃がいかに形を変えようと、一拍のタイミングで必ず打ち返している。

 まるで物理法則すら超えているかのような動きに、ヴィクターは目を奪われた。


「こんな時にあれだけど……ヘルメスさんって、いったい何者なんだい? あんな動き、人間技とは思えない……!」


 疑問が込み上げ、思わず口に出してしまう。

 ルナが一瞬だけこちらを振り向き、苦笑めいた表情を浮かべた。


「……ちょっと今は説明しづらいんだけど、一言で言えばあなたがずっと追い求めてきた“そのもの”よ。――“死神と呼ばれた異世界の英雄”って言ったら、信じる?」


「な、なに……?」


 ヴィクターの思考が一瞬止まりかける。

 冗談には聞こえないが、かといって簡単に受け入れられるような現実味も薄い。

 ずっと夢見ていた“異世界”を、彼女はまるで当たり前のように語った――しかし、いまは考えている暇などない。


「でも、いまはそれどころじゃない! ヴィクター、早く作業に戻って!」


 ルナの苛立ちを含んだ声に、ヴィクターはハッとして端末へと目を戻す。

 そこでは未だ無数のエラーコードが赤く明滅していた。


 彼は短い時間で父のメモを開き、制御宝珠の取り付け手順を頭の中で繰り返し確認する。

 この作業を誤れば暴走がさらに加速し、大爆発か、あるいは次元の歪みが生じる可能性がある――いずれにせよ、この場にいる全員を巻き込む危険性は高い。


「……やるしかない!」


 決意を固め、ヴィクターは制御パネルへと駆け寄った。

 装置の轟音は一段と強まり、火花やランプの閃光が視界をかき乱す。怖気づきそうになる心を必死で押さえ、奥へ進む。


「ルナ、そのネックレス……“制御宝珠”を渡して! 僕がはめ込む!」


 切迫した声に応じ、ルナは躊躇しながらもポーチから紫色の宝石を取り出す。

 受け取ったヴィクターの指先へ、小さな震動が伝わった。

 宝石の奥に脈打つ何かが感じられる――まるで意思を宿しているかのようだ。


「……分かった。気をつけて、ヴィクター。絶対に無茶しないで!」


 ルナがそう警告を飛ばす間にも、装置の暴走は止まらない。

 ヴィクターは唇を強く結び、火花の迸る通路を突き進んでいく。


(怖い……でも、ここでやらなきゃ、みんな死んでしまう!)


 思考は震えながらも、目の前の使命がヴィクターを突き動かしていた。

 後方では、ヘルメスとザハンの戦闘が続く。

 激しい剣戟と衝突音が休むことなく背中を叩き、鼓動をさらに加速させる。


 一瞬だけ、ヘルメスがこちらを振り返った気がした。

 そのとき、ザハンが闇の槍を繰り出し、嘲笑混じりの声を上げているのが耳に届いたが、ヴィクターにはもはや聞き取る余裕などない。


 激しい閃光と真紅の警告ランプの中を、制御パネルの最奥へ飛び込む。

 そこは焼け焦げた金属の臭いと、機械が崩壊寸前の唸りを上げる危険地帯だった。


(頭がもうぐちゃぐちゃだ……でも、父との記憶を思い出すんだ。研究は夢を掴む行為だって――僕はまだ諦めたくない!)


 視界が霞む一瞬、幼い頃の記憶がフラッシュバックする。

 父の声、そして一緒に過ごしたルナの笑顔、異世界に憧れた自分自身……


 そのすべてを胸に抱き、ヴィクターは制御宝珠を握りしめながら、渦巻く闇と火花の中心へと飛び込んでいくのだった。

最後まで読んでいただき、本当にありがとねぇ!

評価やブックマーク、レビューを頂くたびに、作者は嬉しさの余りズンバしてます。


頑張れ! 頑張るんだ! ヴィクター やれるやれる根性みせろ!

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