表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/52

19.死神の剣が唸る時──影使いザハンとの激突

毎週【月曜日・水曜日・金曜日】07:10に更新!

見逃さないようにブクマだけでもしてもらえたら!

作者は(。≖‿≖ฺ)ニタァってしてます。

嬉しいからね。仕方ないね。


・前回のあらすじ


地下区画のさらに奥で待ち受ける“危険実験”の真相、そして闇を潜む仮面男の謎。

ヴィクターは不安を抱えつつも、死神剣士ヘルメスと名探偵ルナの心強さに勇気をもらっている様子。

次の扉を開けば、封印された過去と未知の脅威がついに顕現する!?

震える地下廊下で、三人は真実の核心へと踏み込んでいく──物語はいよいよ急展開へ!


連載形式で更新していく予定ですので、ぜひ最後までお付き合いください。

 扉を開けて一歩足を踏み入れた瞬間、俺は思わず息を呑んだ。

 そこは、想像以上に広く、そして薄暗い空間だった。


 先ほどまで歩いてきた廊下と比べても天井は格段に高く、パイプやケーブルが何重にも絡み合いながら巨大な機器を支えているように見える。

 古びた非常ランプがかすかに明滅し、赤みを帯びた光がコンクリート壁に不気味な影を落としていた。


 俺は足元に散らばるガラス破片や埃を踏まないよう、慎重に進む。

 片手でアタッシュケースを抱え、周囲を警戒するが、やはり油断ならない雰囲気が漂っている。


 隣ではルナが拳銃を構え、さらに奥へ目を凝らしていた。

 その向こうにはヴィクターがいて、父親が封印していたはずの旧施設を目の当たりにしているせいか、言葉少なにあたりを見回している。


「ここの空気……長年放置されてるはずなのに、何か独特の気配を感じるな」


 俺は低い声でつぶやいた。


 散乱する配線や、どこか生温い空気の流れ――ただの古い施設という印象を超えて、まるでここ自体が生きているような錯覚を覚える。


「ホコリと油臭さだけのはずなんだけど……この場所はまるで生きてるみたいに思えるわね」


 ルナも同じように感じたのか、静かに答える。

 彼女は視線を走らせながら、いつでも引き金を引ける態勢を崩していない。


 少し離れたところで、ヴィクターが乱雑に転がっているキャビネットに手を伸ばして、書類を引っ張り出した。

 すると、その紙の端々に“アルザラフ”という文字が何度も出てきているのが目に入り、彼の手がわずかに震えているのが分かる。


「アルザラフ……父のメモに何度か出てきたけど、結局誰なのか調べられずじまいで……ルナ、この名前、そっちにも手がかりないかい?」


 ヴィクターが不安そうにこちらを見る。

 “アルザラフ”という名称は、俺にとっては聞き慣れたものだが、今はまだ彼に伝えるべきではないだろう。

 ルナも慎重に言葉を選ぶように返事をする。


「……そうね、祖父のノートにもちらっと出てきた覚えはあるけど、詳しいことは分からないわ」


 ルナの声には、あえて情報を伏せている響きが混じっていた。

 俺は敢えて口を挟まず、周囲の様子に意識を張り巡らせた。


 やがて俺は廃棄された端末や、転がるラックへと目を向ける。

 天井近くまで伸びる機器群を見る限り、ここでよほど大掛かりな研究をしていたのは間違いない。


「やたら大掛かりだな……ここで何をしていた?」


 そう問いかけると、ヴィクターが書類をめくりながら答える。


「さあ……父は“研究に失敗した”としか言わなかった。でも、この資料には“転移装置”だとか“制御宝珠”だとか……アルザラフって人の遺産らしくて、いったい何のために使われてたのか、僕にもよく分からないんだ」


 ヴィクターの声音には動揺と興味が入り混じっている。

 ルナは足元の金属の箱を開いて、中を懐中電灯で照らしながら呟いた。


「何これ……ペンダント? ただのアクセサリーにしては不気味な気配がするわ」


 覗きこむと、紫色の宝石がはめ込まれたペンダント型の装置が収められている。

 その奥底から、どこか嫌な圧が漂うように感じて、俺は距離を取ったまま様子を窺った。


「父のメモにある“制御宝珠”って、まさかこれのこと? ……この宝石には何らかのエネルギーが秘められていて転移装置を安定稼働させる要らしい。――アルザラフが残した、魔力体の結晶……? もしこれを装置に戻せば、転移の制御を自在に行えるわけか……」


 ヴィクターは興奮と警戒が入り混じった声でそう言う。

 俺はゼロカオスでうっかり壊さないように、下手に近づくのは控えたほうがいいと思い、あえて動かず見守ることにした。


(やっぱり単なる宝石じゃないな。嫌な感じがする……)


「何か仕掛けがあるかもしれん。触るなら慎重にな」


 そう声をかけると、ルナが短く頷いて指先を引っ込めた。


「わ、分かったわ。大丈夫よ。……あんたこそ触らないでよ?」


 彼女に釘を刺され、俺は軽く肩をすくめるだけ。

 そんなやり取りを横目に、ヴィクターはさらに資料を読み進めて青ざめた顔をこちらに向ける。


「ここに、“アストラル・イニシエイト”って集団の名前があるんだ。父の研究に協力したのか、裏で糸を引いてたのかは分からない。でも、もし彼らが“アルザラフの制御宝珠”を手にしたら……転移装置を好き勝手に再起動できることになる」


「となると、あの影使いが研究員を攫って情報を奪ったのは、宝珠と装置再起動のためかもしれないな」


 ルナが懐中電灯をペンダントへ向け直す。

 宝石の奥が揺らめいたように見え、俺も嫌な胸騒ぎを感じる。


「父が封印したのは、やっぱりこの装置の危険性を知っていたから……」


 ヴィクターが曖昧につぶやいた、そのときだった。

 背後から聞こえる微かな軋む音に、ルナも俺も一瞬で身を構える。

 見ると、転移装置に取り付けられた赤いランプが急激に点滅を始め、火花が飛び散った。


「え? 何、これ? こんな警告音さっきまでは鳴ってなかったわよ!」


 ルナの声が半ば焦りを含み、俺もすかさず廃棄された制御パネルへ視線を向ける。

 轟音が大きくなり、金属フレームが軋みを上げ、赤いランプが明滅する――まるで爆弾が起動したかのようだ。


「“宝石抜き”で装置が起動してる……!? 無理やり動かせば暴走して一帯が吹っ飛びかねないのに!」


 ヴィクターが悲鳴に近い声を上げ、制御パネルを操作しようとするが、画面には赤いエラーが連続している。

 彼とルナが焦りながらパネルをいじる中、装置の振動がますます激しくなるのを感じた。


 すると、闇の奥から男の嘲るような声が聞こえてきた。


「ククク……宝珠だけ持ち出せると思うとは、おめでたいな。ここごと吹き飛べば、お前たちも一緒に片づけられる」


 先ほどの影使いの仮面男だ。

 俺はアタッシュケースを抱えたまま、彼の姿を捉える。

 ルナが拳銃を向け、怒りを含んだ声で問う。


「あなた……アストラル・イニシエイトの一員ね? こんな手荒な真似までして……危険すぎるわよ!」


 仮面の男は鼻で笑い、黒い影を纏いながら、まるで楽しむようにマントを翻す。


「フン……俺は“影喰い”のザハン。宝珠を返す気がないなら、この装置の暴走に巻き込まれて散ってもらう……それだけの話だ」


 言葉と同時に影が蠢き、漆黒の刃を形作って一気にこちらを襲う。

 俺はすかさずアタッシュケースを叩きつけ、衝撃を受け止める。

 激しい衝突音とともに火花が散り、目に鈍い痛みが走る。


「っ……ヘルメス、助かった。でも、そのケースじゃ限界があるわ。剣は抜かないの?」


 ルナが急ぎながら呼びかけてくる。

 この状況ではケース越しの防御だけではいずれ破られるのは明らかだ。


「……いいのか? 斬っても?」


 俺が短く問うと、彼女は覚悟を決めたかのように頷く。


 彼女が意を決したように「いいわ、あなたに任せる!」と言った声に、俺はわずかに頷いた。


 ちょうど同じ瞬間、黒い刃を受け止めていたアタッシュケースが衝撃で手元を離れかける。

 けれど、咄嗟にもう片方の手で掴み直し、その短い隙にケースのロックを外す。中には布に包まれていた俺の剣が収められている。


 ——月影げつえい


 漆黒の鞘から抜き放たれた刀身は銀白に光り、非常ランプの赤い照明を鋭く反射した。

 空気が一瞬、凍りついたかのように張り詰める。

 あの仮面の男、ザハンの動きが一拍だけ止まり、すぐに構えを取り直すが、奴の警戒が明らかに増したのを感じる。


「フン……どんな剣を持とうが、俺の闇には通じんぞ」


 ザハンが低く唸るように言う。

 どうやら俺が放つ“殺気”を感じ取っているらしい。

 あとは暴走しかけた装置を止めるため、ルナとヴィクターが時間を稼いでほしいと信じているのが背中から伝わってくる。


「わぁお……!! ま、まさかジャパニーズ侍ソード!? 本物なのかい……!?」


 ヴィクターが驚きの声をあげているが、俺は軽く肩をすくめるだけだ。


「後でいくらでも見せてやる。まずは爆発を阻止しろ。面倒なことになったら、それこそ大惨事だ」


「は、はい……ルナ、一緒にやろう!」


 ヴィクターとルナが急ぎ端末に取り掛かる一方、装置は不気味な振動と火花、さらに赤い警告ランプの明滅を止めない。

 あの仮面の男、ザハンはなおも苛立ちを露わにしながら言う。


「宝珠がなければ暴走は止まらん。だが、嵌め直した途端に俺がいただく」


 闇の槍を何本も形成してこちらへ飛ばしてきた。

 俺は月影を軽く腰元へ納める姿勢を取り、そこからの瞬発で奴の刃を迎え撃つ態勢をとる。


「行くぞ……」


 短く言い放ち、あの仮面男――ザハンへ向かって踏み込みながら、心のどこかであえて“一撃必殺”を躊躇(ためら)っていた。


 倒すのは簡単だ。

 それくらいの自信はある。


 だが、こいつがどうやって“闇”を操り、魔術めいた力を振るっているのかを見極めたいという気持ちがある。


 とはいえ、装置の暴走までそう時間はない。

 ルナたちが操作を成功させるかどうかは、いわば俺の足止め次第だ。


(宝珠を正しくはめて制御モード、一気に緊急停止……ヴィクターの話によると、そうらしいが間に合うのか?)


 鋼鉄フレームの嫌な軋みが激しくなり、轟音はますます耳を叩く。

 背後ではルナとヴィクターが必死にパネルを叩いているが、もちろん振り返る余裕などない。

 ザハンが矢継ぎ早に闇の槍を放ち、月影で捌きながら反撃の隙を探る。


(俺の力なら、ここで一気に畳みかけられるが……もう少し、この“闇”の正体を確かめたい。今後のためにも、知っておく価値がある)


 俺にとって、この相手を仕留めるのは難しくない。

 だが、この男の持つ魔術じみた能力が、どこからくるのか。

 もし“異界の力”を知る足がかりになるなら、そう簡単に倒してはもったいない。


 仮面の男の攻勢が激しくなる中、ルナが命がけで操作を続けている光景が頭に浮かんだ。

 カルロスを救い、失踪した人々を取り戻すためには、この苦境を乗り越えねばならない――彼女の意志が背中を押す。


(この世界の魔術の力の源……何としてでも見極めてやる)


 ザハンの闇の刃が空気を裂き、金属の衝突音をともなって月影に受け止められるたび、装置の轟音が掻き消されそうになる。

 しかし、その背後で懸命にパネルを操る二人の姿を思い浮かべれば、自然と身体に力が漲る。


 ――暴走を止めて、生き延びる。


 さらに、この敵の魔術の秘密を見極めてやる。

 それが、今の俺に課された唯一の“戦い”だ。

最後まで読んでいただき、本当にありがとねぇ!

評価やブックマーク、レビューを頂くたびに、作者は嬉しさの余りジャイブしてます。


とうとうハーグレイブ研究所編も終局……と思いきや!?


マジです。

まぁ、そんな評価もらったらずっと踊り続ける事になるな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ