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1.黒曜の玉座と終焉の魔法──世界の命運をかけた最期の死闘

一話目へらっしゃいッ! 楽しんでいってね!

毎週【月曜日・水曜日・金曜日】07:10に更新!


見逃さないようにブクマだけでもしてもらえたら!

作者は(。≖‿≖ฺ)ニタァってしてます。

嬉しいからね。仕方ないね。

 魔王城最奥(まおうじょうさいおう)、《虚空(こくう)玉座(ぎょくざ)》。


 漆黒の尖塔が連なるその最深部は、すでに凄惨な戦場と化していた。

 黒曜石の床は砕け、崩れた柱が無惨に散乱し、壁面には無数の亀裂が走る。


 血の色と砕けた石片が点在するその光景は、ここで繰り広げられた死闘の激しさを静かに物語っていた。


 重苦しい静寂だけが漂い、まるでこの場所が“世界から音という概念そのもの”を拒絶しているかのようだ。


 その中心、玉座に座すのは――魔王アル=ザラフ。


 幾多の国と人々を恐怖で支配してきた、世界の絶対者。

 深く背を預けながら、わずかに口元をつり上げ、廃墟と化した広間を見渡している。


 まるで「ここまで来られたこと」を面白がっているかのように。

 だがその目には、今なお全てを掌中に収めているという絶対的な自信が、揺らぎもなく宿っていた。


 一方で、俺は息を切らしながら双剣を握り直す。


 ヘルメス・アークハイド――“死神”の異名を持つ半魔の剣士。

 ここへ至るまでに、多くの仲間が傷つき、倒れ、命を落とした。


 それでも歩みを止めるわけにはいかない。


 いまここで、魔王の覇道を断ち切らなければ、世界は確実に滅びの淵へ沈む。


「ここまで来るとはな、ヘルメス・アークハイド。相変わらず愚直なまでの執念だ」


 玉座から響く低く冷たい声――魔王アル=ザラフの声は、空間を震わせるように響いた。

 その瞳は、冷えた水底のように静かで、どこまでも底が見えない。


 俺は構えを崩さず、睨み返す。


「愚直で結構だ。仲間と世界を守るためなら、何度でも立ち上がる。貴様の支配は――ここで終わりにする」


 その言葉に、魔王はわずかに目を細めた。


 漆黒の玉座に深く背を預けていた体をゆるやかに起こし、まるで周囲の混沌を意にも介さぬかのように、ゆっくりと立ち上がる。

 血のように染まったマントが床を引きずり、硬質な音を小さく響かせた。


 その一挙動だけで、重苦しい空気がさらに圧を増したように感じる。

 まるで、この場が確実に自分の支配下であることを再確認するように――魔王アル=ザラフは、冷たい視線を俺へ向けた。


「ならば、その意地もろとも砕けるがいい。――滅びの波動(ラグナロク)


 指を鳴らすように軽く動かすと同時に、床に深い亀裂が走る。


 そこから漏れ出す瘴気を帯びた熱と魔力が、空間を軋ませるように揺らした。

 炎、雷、氷、闇――複数属性の魔法が連携して襲いかかってくる。

 その質量と圧力は、もはや“魔法”というより“現象”の暴走だ。


万象消滅(ゼロカオス)……!」


 短く息を整え、双剣を構え直す。


 ――万象消滅(ゼロカオス)


 あらゆる魔法を無力化する、俺に与えられた最も異質な力。

 かつて多くの魔術師が絶望したこの能力を、今は“守る”ために振るう。


 双剣に宿る波動が前方へ奔流となって放たれ、襲いかかる魔法を次々と剥がしていく。

 燃え盛る炎は消え、雷は光すら残さず消滅し、氷も闇も粉々に砕けて虚空へと還る。

 魔力の衝突が黒曜石の床を震わせたが、俺は踏みとどまった。


「……厄介な力だな。貴様は本当に……」


 魔王が小さく吐き捨てる。

 その声にも苛立ちがにじんでいた。

 だが、俺の消耗も限界が近い。


 それでも、ここで止まるわけにはいかない。


蒼迅(そうじん)(かた)――千斬瞬(せんざんしゅん)


 短く息を詰め、両の双剣を一気に振る。


 数十にも及ぶ斬撃が空間を裂き、黒曜石の床に鋭い軌跡を刻む。

 魔王が幾重にも張り巡らせていた結界も次々に断ち割られ、ついにはその身を捉えた。

 肩口を斬り裂かれたアル=ザラフの体から、闇色の血が滴る。


 それでも、彼はなお笑っていた。


「……面白い。ここまで通じんとはな!」


 その声と同時に、俺は咆哮のように叫びながら踏み込む。


「おおおおおおおお!!」


 全身全霊の突きを打ち込む。

 そして――手応えがあった。


 双剣の両方が魔王の胸を貫いた。

 魔力が逆流し、手がしびれる。

 深く達したはずの一撃。


 しかし、魔王の瞳は、まだ“終わっていない”と語っていた。


「……ぐ、やるな。ならば――命を代償に……世界ごと書き換えてやるしかあるまい……!!」


 血を吐きながらも、魔王はなおも笑っていた。

 そして、胸に突き立った剣の柄を、そのままの力で握りしめる。


(まずい、抜けない――!)


 俺は剣を引こうとするが、魔王の手が石のように硬く、びくともしない。

 そして――


(ことわり)(くだ)きし混沌(こんとん)()てより……終焉(しゅうえん)胎動(たいどう)()血肉(ちにく)(ささ)げ……すべての因果(いんが)再構築(さいこうちく)せよ……」


 ――概念魔法。


 世界の法則そのものを捻じ曲げ、現実を書き換える禁呪(きんじゅ)

 この世に存在するすべての“意味”を、別のものへと塗り替える伝説にのみ語られる術。

 そしてそれは、確実に術者の命を対価とする、最後の魔法。


(そんな馬鹿な!? 詠唱が完了すれば、世界が崩壊する。止めなければ――!)


 俺は即座に判断を下す。

 剣から手を離し、腰の短剣を抜いて一閃。


 魔王の両手首を正確に断ち切る。

 断たれた腕が落ちるより早く、俺はその胸を蹴りつけ、反動を利用して跳躍。


 宙を舞う自らの双剣を掴み、着地と同時に構え直す。


(あがな)いの(たましい)(かせ)不要(ふよう)……()(きざ)め、断界(だんかい)輪廻(りんね)。インフェルニア・リコード……!」


 詠唱の終わりと共に、空間が軋み、広間の輪郭が歪む。

 柱が浮かび、塵のように砕けていく。

 黒曜石の床は崩れ、重力が失われたようにすべてが浮遊し、そして分解されていく。


 魔王の肉体には亀裂が走り、皮膚が剥がれ、骨が砕けていく。

 闇の霧が血と魔力に混ざり、広間を渦巻く。


 それでもなお、アル=ザラフは嗤っていた。


「貴様も道連れだ……ヘルメス・アークハイド……!」


(理を破壊する魔法……ゼロカオスでは止められん!)


 世界の枠組みそのものが、ゆっくりと崩れていく。

 重力、空気、色、音――あらゆる法則が剥がれ落ちていく。

 魔王の命と引き換えに放たれた魔法は、世界を飲み込み、すべてを無へと還していく。


「……くそっ……アル=ザラフッ!」


 視界の端で、魔王の姿が霧の中に消えていくのを見た――


 俺の叫び声すら、この空間ごと断ち切られるように途切れる。

 世界の境界が音もなく崩れ落ちる中、胸に浮かんだのは仲間や、大切なものの面影だった。


 簡単に終わらせてたまるか、という気持ちだけが希望の光みたいに胸で燃え上がる。


(絶対に、ここで終わるものか……!)


 そう祈った瞬間、足元からぐしゃりと空間が断ち切られ、深い闇が視界を覆う。

 最後まで必死に双剣を握りしめたまま――俺は落ちていった。


 そして、すべてが暗転する。

最後まで読んでいただき、本当にありがとねぇ!

評価やブックマーク、レビューを頂くたびに、作者は嬉しさの余り盆踊りしてます。


マジです。


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