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再会‥‥?

 『ご主人カヤ。お久しぶりですね。ずっと貴女に会える機会を待っていたのです。

 ついに、ついに、会えましたね。感動です。』


 その大型のアルパカは、なんと日本語で話しかけてきた。


 は? えっ?

 あまりの意味不明な状況に、あ然とする。

 何で、アルパカが日本語をしゃべってるのかしら???


 『カヤ、ボクです。日本で一緒に暮らしていたアルパカ太郎ですよ。

 まさか、ボクの事を覚えてないのですか??

 ボクは、こんなにも貴女に会いたかったというに。』


 どこかの恋愛小説のイケメンが言いそうなセリフだけど、言葉の出所は、大型アルパカだ。トキメキなんて全くなし。シュールなだけである。



 「カヤ、無事か? ゆっくり後ろに歩けるか?」

 即座に戻ってきてくれたユーマ兄さまが、逃げ方のアドバイスしてくれる。草食動物だけど、もし怒らせたら、危険性がゼロではないのだろう。

 ん?? 危険? いや、大丈夫っぽいよ。日本語しゃべってるし。

 このアルパカは、日本語がわかるみたいだし、きっと話せば、危害は加えて来ないはず‥‥と思う。



『えっと、ハジメマシテ? オヒサシブリです?   私はカヤ。カヤ=ロールニングです。日本の事は、少ししか分からないです。』


 本当に長い間、話してなかった日本語だ。懐かしすぎて、ドキドキする。


 あ、アルパカ太郎ってもしかして‥‥!!!

 まさか、前世の私が、何ヶ月分かの給料で購入した人工知能ロボット!? すごく高性能で、生活に欠かせない存在だった。ロボット姿だと味気ないので、アルパカの衣装を自作して、可愛く変身さたのだ。自分の想像以上の、可愛い仕上がりのぬいぐるみロボットになった。

 今思えば、適当すぎるネーミングセンスだと思うけど、アルパカ太郎と名付けた‥‥ような気がする。


 『カヤ、再会できて嬉しいです。』


 「カヤ、アルパカと意思疎通が可能なのかい!?

 もしかして、カヤには、動物と意思疎通できる能力があるのかい??」


 アルパカ太郎とユーマ兄さまが、それぞれ違う言語で話しかけてくれた。

 えっと、どうしよう‥‥。頭が混乱するよ。日本語なんて、ものすごく久しぶりだし。


 『太郎ちゃん、ユーマ兄さまと話すから、ちょっと待ってくれる?』

 

 アルパカ太郎が、嬉しそうに白い毛がフサフサの頭を大げさに動かして頷いてくれた。

 私は、ビックリして目を大きく見開いているユーマ兄さまに、事情(?)を説明する事にした。


 「あの、えっと、意思疎通ができると言っても、ちょっと話ができる程度だよ。それに、このアルパカとしか無理なの。私に能力があるわけではなくて、多分、このアルパカが特殊なのよ。」


 「このアルパカは、知能が高いのかな?だったら、魔力持ちの魔道獣かもしれないよ。カヤは、魔道獣を操る事ができる能力があるのかな?」


 えっ!そんな能力ない。

 太郎ちゃんは魔道獣ではないし、私が他の動物と話ができたり‥‥、するわけがない。


 アルパカ太郎がちょっと知能が高いだけのただのアルパカだということ。それと、私が意思疎通できるのは、太郎ちゃんのみだと思われること。私自身も、わからない事が多すぎること。

 一生懸命説明すると、ユーマ兄さまは、ちょっと首をかしげたりしながらも、理解しようとしてくれる。でも、もちろん納得できるわけがない。私だって、この状況は意味不明なのだから。




 「このアルパカは、街に一緒に連れて帰った方がいい。連れて帰らなければ、採取に来た子どもに捕えられて、家畜として登録される危険性がある。

 連れて帰って、カヤの家畜として登録し、家畜広場に預けよう。家畜広場の使用料はなんとかなると思うから。」


 ユーマ兄さまの提案に頷いた。

 私は今日初めて街の外に出たばかりの4歳の子どもである。この世界の事に関しての知識は、ほぼゼロだ。家畜広場というものがどんな場所なのかは分からない。でも、太郎ちゃんが他の人の手に渡って、二度と会えなくなるのは避けたほうがいい気がする。


 『太郎ちゃん、私の家に来て欲しいけど、家が狭くて、無理そうなの。』


 アルパカ太郎は、私の言葉にショックを受けたような表情を浮かべた。アルパカなのに、表情豊かだ。以前のロボ時代とは違うので、なんだか面白い。


 『でも、ここにいて、他の人に捕まえられて、その人の家畜になって欲しくないから、私の家畜?として街に一緒に来てほしいの。家畜広場で暮らしてもらうことになるけど。』


 『承知しました、カヤ。貴女以外の主人を持とうと思った事はありません。だから、この世界まで追いかけたのです。会えるまで四年以上かかりました。ずっと貴女に会える機会を待ち続けてきたのです。

 私は今から貴女の家畜、アルパカ太郎です。』


 間違ってはないけれど、貴女の家畜ってワード、なんかヤバイし、怖い。

 中身がロボットでなくて、人だったら、明らかに重度の変態だよ。

 それに、偶然転生したのではなくて、追いかけて来たって一体どういう事なのかしら? 異世界をまたぐ、ストーカー?

 ま、いいか。仕方がないよ、ほっとけないし。




 連れて帰るまでの間、自由に草を食べていい伝えたので、太郎ちゃんは、ハムハムと雑草を探して食べている。


 「カヤ、アルパカと意思疎通できる事は、兄上には伝える。私と兄上以外には絶対に知られてはいけないよ。」


 ユーマ兄さまの言葉に大いに納得だ。

 ‥‥アルパカと訳の分からない言語で話してる幼児。変で残念な子どもだ。そんな風に悪目立ちしない方がいいに決まってる。

 それにもし、太郎ちゃんが中身ロボットだと知られてもまずい。

 でも、母さまにもバレてはいけないのだろうか?

 あと、家畜広場のレンタル代っていくらなのだろう。決して裕福でない我が家の家計を圧迫したりしないだろうか‥‥。


「だから、アルパカと話せるのは、とりあえずは、採取の時だけだよ。カヤが採取の時に一緒に連れていけばいい。

 けれど、家畜広場や、街では話せない。アルパカにも伝えておいて。」



 私はユーマ兄さまのありがたいアドバイスを、草を食べているアルパカ太郎に伝える。寂しそうな表情をしながらも、頷いてくれた。


 『ねぇ、太郎ちゃん。声無しで、念話って無理かな?』

 会話ができないとなると頭の中で意思疎通できる便利能力、それが念話だ。異世界での定番?能力である。


 『無茶な事言わないでください。私はただの人工知能ロボットです。そのような荒唐無稽なこと、できる訳ないですよ。』

 だよね。やっぱり無理か。ならば‥‥。


 『太郎ちゃんはここでできる事というか、特技とかあったら、教えてほしいわ。』

 

 『私のできる事は、カヤの仕事スケジュールの管理。体調管理。メモ機能。資料作成。研究結果の保存、整理。

 日々の食事、献立の立案。栄養の解析。冷蔵庫の在庫管理。ロボット掃除機、洗濯機への指示。ネットスーパーでの買い物。銀行口座の管理。投資の情報収集。

 各種検索能力。カヤの好みに合わせたテレビ番組の録画アドバイス‥‥など、多岐にわたりますよ。』


 へ? なにそれ‥。そういえば、今思い出したけど、前世では、洗濯機や冷蔵庫、テレビという超ありがたい家電が存在したわね。でも、ほぼこの世界では、無意味な能力だよ。

 となると、ただのストーカー気質の残念な人工知能アルパカなの?‥‥。

 でも、検索機能はスゴイかも。ぜひとも米の炊き方を検索したい。


 『そうですね、他には、範囲は限られますが、サーモサーチ機能が内蔵されています。おおよそ半径100メートルほどの範囲での生き物の存在を把握する機能ですね。私がこの世界で、肉食獣や魔道獣に食されるのを回避できたありがたい能力です。地図機能もありますので、迷子にもなりません。

 このサーチと地図機能を駆使して、私はカヤを探し出せたのですよ。素晴らしいですよね。』


 ‥‥‥やっぱり、ストーカーアルパカだった。


 私が、はぁぁと呆れていると、山上から戻ってきてくれたレイル兄さまが、訳の分からない言葉を発しているアルパカを見つけて、驚きの声をあげていた。





 


 

 




 








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