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俺とクロのカタストロフィー  作者: ムネタカ・アームストロング
58/81

58.とんかつ屋で5杯目のお替りを注文したら「ご飯なくなりました」と言われたが別の席でご飯出してるのを見て大人は嘘つきだと思った中学3年の夏

デラックス幕の内弁当の蓋を開けると、香ばしい匂いが部屋に広がった。ふっくらと盛られた大盛りご飯の上には、西京焼きの銀鱈がどんと存在感を示している。その横には、揚げたてのヒレカツが黄金色に輝き、さらに煮物、唐揚げ、お浸し、う巻き、かまぼこ、佃煮が美しく盛り付けられている。まさに「デラックス」の名にふさわしい豪華さだった。

リンは嬉しそうに目を輝かせながら箸を手に取り、「干杯!」とウーロン茶のコップを俺と合わせて乾杯した。

一口食べると、銀鱈の西京焼きの濃厚で甘い味噌の香りが口いっぱいに広がった。脂が程よく乗り、柔らかい食感はまさに絶品だ。隣のヒレカツもサクッと揚がっていて、歯ごたえがありながらも柔らかくジューシーな肉汁が口の中に溢れ出した。

リンは満足げな顔で、「嗯~,好好吃!这是胜利的味道啊!」(ん~、美味しい!これは勝利の味だね!)と言いながら笑顔で食べている。

弁当を食べ終え、お腹が満たされたところで、リンからお金を預かっていたことを思い出した。俺は鞄から296万円が入った紙袋を取り出し、リンに手渡した。

リンは紙袋を上下に軽く動かし、お金の重みを実感している。

「わぁ、すごく重たい!こんなにたくさんのお金、初めて触ったよ。」

リンの子供のような反応を見て俺も微笑ましくなったが、同時に現実的なことも伝えておかなければと思った。

「競馬で勝ったお金にも税金がかかるんだ。全部使ってしまったら来年の納税時に困ることになるから、1割の30万円くらいは税金用に避けておいた方がいいよ。」

リンは急に不安な表情になり、俺の顔を見上げてきた。

「えっ?税金のこととかリンは全然分からないよ……颯、手伝ってくれる?」

俺はすぐにリンの頭を撫でながら言った。

「もちろん。俺が全部やってあげるから心配するな。」

リンは俺の言葉にホッとしたような安心した顔を見せて、「じゃあ、頼りにしてるよー」と言いながら、俺の腕に嬉しそうに抱きついてきた。

リンの温もりを感じながら、俺はふと重大な話をしなくてはと思った。

「リン、この間俺が『4ヶ月後の未来から戻って来た』って話、覚えてるか?」

リンは腕に抱きついたまま頷いて答える。

「うん、覚えてるよ。そのおかげで大金持ちになれたね!」

リンは俺の腕を離さず、ニコニコ笑顔を浮かべたままだ。

「実はその4ヶ月後、地球に隕石が落ちて大変なことになるんだ」

リンの表情が一瞬固まった。

「大変なことって?」

「2パターンあってさ、1つの未来は海に隕石が落ちて大津波が来て、日本の3割くらいが沈む。それで俺は1回死んだんだ。」

「えっ?颯が死んだの?」

リンの瞳が大きく見開かれる。

「実はもう5回も死んでるんだよね。」

リンは少し戸惑ったように言った。

「じゃあ、この会話は何回目なの?」

「この会話は初めてだよ。これまでの5回は全部、隕石が衝突する4日前に戻ってきたから、こんなに早く戻ったのは初めてで、この会話自体も初めてなんだ。」

リンは少し緊張した表情を浮かべた。

「そうなんだ……じゃあ、前の世界でもリンたちは付き合ってたの?」

俺は正直に答える。

「いや、ずっと仲良しのままだったけど、付き合ってはいなかったんだ。」

リンはふっと微笑んだ。

「そっかー、じゃあ戻ってきてくれてよかった!もしかして今までの世界を経験して、リンの大切さに気付いて告白してきたの?」

リンはそう言いながらいたずらっぽく微笑み、俺の脇を肘で軽くつついた。

「だいたいそんな感じかな。」

俺が照れながら答えると、リンはふいに俺の唇にそっと唇を重ねてきた。

リンは唇を離し、今まで見たことがないほど真剣な眼差しで俺の目をじっと見つめて言った。

「在这个世界里,我绝对不会让你死。我一定会陪你一直到老。」(この世界では、リンが絶対に颯を死なせない。老人になるまでずっと一緒に生きるよ。)

俺は言葉にできないほどの強い感情が胸に込み上げ、思わずリンを力いっぱい抱きしめ、リンの頭を優しく撫でた。

「俺はもう全てを捨ててリンのためだけに生きるよ。愛してる。」

リンの目に涙がにじみ、頬が少し赤くなった。俺はリンの華奢な体をお姫様抱っこで持ち上げ、ゆっくりとベッドへと運んだ。

そして、俺はこれまでの5回の人生で初めて、心の底から愛しいと感じるリンと愛し合った。二人の間には言葉では言い表せないほど深い絆と、確かな未来への希望が生まれ始めていた。


行為の後、俺たちは汗ばんだ身体を流すためにシャワーを浴びた。温かなシャワーのお湯が二人の身体を優しく包み込み、リンは俺の肩に寄り添って静かに目を閉じていた。

シャワーを終え、再びベッドに戻ると、リンは疲れた様子で俺の腕枕に頭を乗せて横になった。

「大丈夫か?」

俺が心配してリンに声をかけると、リンは少し頬を赤らめながら苦笑いした。

「ん……ちょっとヒリヒリする。でも大丈夫。ただ、続けてもう一回するのは無理かも」

その言葉に俺は思わず微笑み、リンの髪をそっと撫でながら言った。

「さすがにそんな無理させないから安心してくれ。」

「那就好~」(よかったぁ~)とリンは小さく笑った。

静かな時間が流れ、俺は心に秘めていたことをリンに伝えた。

「あのさ……」

「うん?」

「一緒に住まないか?」

リンは目を大きく見開いて、それから嬉しそうに頷いた。

「うん!実は私も颯を守るためにずっとそばにいようと思ってたんだ。今週中に休学手続きをしようと思ってた。だって隕石が落ちるのに勉強どころじゃないもんね。」

リンの言葉を聞いて俺の胸が熱くなった。

「俺のことをそこまで信じてくれて本当に嬉しいよ。俺も仕事を辞めるつもりだ。一ヶ月前に言わなきゃいけないけど、有給が残ってるから、実質今週だけ行けば辞められると思う。」

リンは安心したように俺の胸元に顔を埋めながら言った。

「じゃあ、これからずっと一緒にいられるね!私のマンションどうしよう?」

「二人でどこか安全な場所を探してそこに引っ越そうか。リンの部屋は解約して、引っ越し先が見つかるまでは俺のところに来ればいいよ。家具とか家電は全部捨てちゃおう」

リンは頷きながら微笑んだ。

「そうだよね、冷蔵庫も洗濯機も二ついらないもんね。捨てるの手伝ってくれる?」

「もちろん。今週は無理だから来週になっちゃうけど、その間にリンは休学手続きだけやっておいてくれ。マンションの解約の連絡は俺がやっておくよ。」

リンは満足げに笑ってから甘えるように言った。

「わかったよ。あぁ、もう少しも颯と離れたくないなぁ……」

そう言いながらリンはさらに強く俺の胸に顔を埋めた。

「俺もだよ。」

そう言って俺はリンをぎゅっと抱き寄せた。

するとリンは、急に恥ずかしそうに小さく声を上げた。

「啊……你又来了。不过今天可不行了哦,明天再来好不好?」(あっ……また反応しちゃってる。でも今日はもうダメだよ?明日にしよう?)

俺は苦笑いして謝った。

「ごめん。わかってる。勝手に反応しちゃって。」

リンは恥ずかしそうに俺の胸を軽く叩きながら笑った。

「等我习惯了,我们再多做几次吧。」(慣れたらたくさんしようね。)

俺はその言葉に微笑んだ。

「楽しみにしてる。」

リンはしばらく考えるように目を閉じた後、俺の顔を見上げた。

「ねぇ、どこに引っ越す予定なの?」

「どの未来でも安全だったのは北海道と長野なんだ。でも北海道は何回も行ってるから、まだ行ったことがない長野にしようかなって。」

「長野ってどのへん?」

「東京の左上のほうかな」

「あー、日本の地図で真ん中くらいのところ?」

「そうそう」

リンは目を輝かせて提案した。

「じゃあ引っ越す前に一回、旅行に行ってどんなところか見てみない?」

俺も頷いた。

「それもいいね。あ、でもその前に一度リンの故郷に行ってみたいな。まだパスポート使えるし、来週にでも行こうよ。」

リンの顔がパッと明るくなった。

「真的吗?太好了!那我马上跟爸妈联系一下,机票什么的就交给我来预订吧,你就不用操心啦。」(本当に?嬉しい!じゃあすぐに両親に連絡しておくね。飛行機とか全部私が予約するから、颯は何もしなくていいよ。)

「ありがとう。ちょっと早口の中国語で途中から聞き取れなかったけど、予約してくれるんだな?じゃあ、お金はたくさんあるから、気にしないで予約してくれ。」

リンは俺の胸に頬を擦りつけながら言った。

「这样感觉好幸福啊,能跟你交往真好……可是想到陨石要来了,又觉得好害怕。」(こうやって颯と付き合えて幸せだなぁ……でも隕石のことを考えるとちょっと怖いな。)

俺はリンの頭をそっと撫でながら、優しく微笑んだ。

「俺が必ず守るよ。」

リンの表情は少しだけ穏やかになった。

「嗯,我相信你。」(うん、信じてる。)

俺は腕の中にいるリンを安心させるように、より強く抱きしめた。

「明日も早いし、そろそろ寝るか。」

「嗯,晚安。」(うん、おやすみ。)

そう言って俺たちは身体を寄せ合い、そのまま心地よい疲れと安心感の中でゆっくりと眠りについた。

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