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俺とクロのカタストロフィー  作者: ムネタカ・アームストロング
41/81

41.田舎のオジサンが近所の小中学生の男子を注意するときに「てい!」って言うけど「てい!」ってなに?

初日は祖父と近所の仲良しのおじさんたちが見回りをすることになり、俺も15時の回に同行した。良雄は疲れて寝ているとのことで、祖父と祖父の友人である藤原さん、岡本さんの三人に加わって、俺は黙ってその後ろを歩いた。

見回り中、藤原さんがふと祖父に言った。 「おまえんとこ米足りてるか?人数多いだろ。うちは余ってるから50キロくらい持ってくか?」 「いや、うちも米はしっかりあるから大丈夫。おまえんとこは何か足りないものないか?」

会話の中で、このあたりの家はほとんどが農家で、米や玉ねぎ、ジャガイモなどは各家庭に売るほど備蓄があることが分かった。

岡本さんが、今後の懸念について話し始めた。 「肉の調達は厳しくなるな。牛や馬の飼料は輸入もんだから、入ってこなくなったら困るぞ」

見回りでは高齢者のみで暮らしている家をいくつか訪問し、安否確認と世間話を交わした。気づけば日が暮れ始め、家に戻ったのは18時前だった。

21時の見回りは別のメンバーが担当する予定なので、この日の見回りは終了となった。祖父は「明日の朝9時もこのメンバーで回るからよろしくな」と言い、解散した。

夜は祖母と舞が用意したカレーライスを再び皆で食べ、風呂に入ったあと、リンと湊の使っている客間に俺と舞、湊、リンの4人で集まりトランプの大富豪を始めた。

リンは「大富豪は初めて」と言いながらも本当に初めてかと思うほど強く、俺が起こした革命の直後に見事な革命返しを決めるなど、高度な戦術を披露した。最終的にリンが優勝し、みんなで拍手を送った。

そのとき、4人のスマホが一斉に大音量のアラートを鳴らした。直後にドンという縦揺れ、その後すぐに大きくて長い横揺れが家を襲った。

「外に出よう!」と俺は叫び、クロを連れて家の外へ出た。舞、リン、湊も慌てて後に続いた。揺れが収まる頃、祖父母と良雄も外に出てきた。

恐らく震度6以上の地震だったが、10年前に建て替えたばかりの家は大きな損傷はなく、しばらく様子を見てから家の中に戻った。

テレビをつけると、道東全域で震度6の地震が発生したとのニュースが流れていた。特に釧路市では強い揺れが観測され釧路市内の様子がテレビで流れ続けている。夜のため詳細な被害はまだ不明とのことだった。アナウンサーは津波の危険性について何度も警告し、沿岸部の住民に高台への避難を促していた。

足寄では停電の被害は出ていないとのことだったが、道東の一部地域では電柱の倒壊などで停電が発生しているという。

さっき連絡先を交換したばかりの桜ねえから「地震大丈夫だった?」とLINEが来た。 「うちは大丈夫だった。桜ねえのとこは大丈夫?」と返すと、「食器が少し割れたけどあとは大丈夫だったよ。怖かったねー」と返信が来た。

リビングでニュースを見ていると、廊下にある固定電話が鳴った。祖父が小走りで受話器を取ると間を置かずに「良雄!颯!ちょっと来てくれー!」と俺たちを呼んだ。

電話は自治会長からだった。自治会長の隣家が倒壊し、高齢の夫婦が生き埋めになっている可能性があるという。消防団は足寄町の別の火事に向かっていて手が回らないため、自警団で対応してほしいとの要請だった。

急いで着替えた俺と祖父、良雄は軽ワゴンに乗って現場へと向かった。クロは災害救助犬ではないため怪我をするといけないので家で留守番させた。

到着すると、すでに自警団のメンバー5人が集まり、倒壊した家の中に向かって声をかけていた。そこは日中に訪れた高齢夫婦の家だった。

瓦礫を慎重に撤去していくと、やがておじいさんの手が見えた。自警団の一人が脈を確認したが、既に脈はなかった。瓦礫をさらに取り除き、おじいさんの体を引き出すことに成功したが、すでに息はしていなかった。

引き続き、おばあさんの捜索を行った。おじいさんが見つかったすぐ近くで、タンスの下敷きになっていたおばあさんも発見されたが、彼女も既に亡くなっていた。

交番に連絡し、ご遺体を引き取りに来てもらうよう依頼した。警察はご遺体を中学校の体育館へ運ぶことにしており、軽トラックで到着後すぐに引き取って去っていった。

深夜になっていたため、自警団は一旦解散となり、俺たちも家に戻った。

家に帰ると、祖母が甘酒を用意してくれていた。体が冷えていた俺たちには、その温かさが芯まで染み渡った。

この時点で既に深夜1時を過ぎていた。俺は舞とクロを連れて自室に戻り、ようやく静かな眠りについた。

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