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犯罪者  作者: 小野葉
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第五章 お食事会

次回の投稿は、明日の10時になります。

もしかしたら、今日中になるかもしれません。

夜の7時


待ちに待った夕食の時間。

藍と麗華はリビングで他の宿泊客が来るのを待っていた。

なにやら食事は宿泊者の十三名全員がリビングでとるのが決まりらしい。

藍と麗華の他にリビングに来ているのは、炉唯と雪奈と羚、そして姉弟らしき女性と少年と、恋人らしき男性と女性。

これで九名なので、残りは四名。

だが、一向に現れる気配を見せない。

その時間を使って麗華は、リビングの様子をポケットに入れておいたペンで紙に記入していく。



報告

報告者 燐野 麗華


西洋のつくりで、まるで外国の屋敷のよう。

テーブルは縦に細長いダイニングテーブル。

テーブルには、キチンと真っ白なテーブルクロスがかけられていて、花瓶とランプと人数分のナプキンが置いてある。

明かりはキラキラと輝くシャンデリアで、とにかくなにからなにまで豪華そうなものばかり。

このくらいまで書き終わった時に、残りの四人がリビングに入ってきた。

どうやら四人家族で旅行にきたらしい。



「すみません、遅れしまって…」



母親らしき人が、執事の格好をしたオーナーらしき男性に頭を下げる。



「いえいえ、大丈夫ですよ。ではお客様、席におつきになって下さいませ」


「はい」



四人が席に着く。



「では、自己紹介をさせて頂きます。私、オーナーの高野、と申します。よろしくお願い致します。皆さんも、自己紹介をしていただいてもよろしいでしょうか?」



全員が頷く。



「ありがとうございます。では、右側から順にお願い致します。そうして、右側のお客様方が終了いたしましたら、左側のお客様方という形でお願い致します」


オーナーの高野の言葉に、カップルのチャラチャラした男性の方が自己紹介を始める。

その男性は、耳や鼻や唇…と、いたるところにピアスをつけている。



「オレは守森 秦。…よろしく」



短く小さく男性…秦は言った。

見かけの派手さの割りに、案外大人しい人なのかもしれない。

次は四人家族の母親と父親だ。

まずは母親の方から。



「アタシは妃莱 梗乃といいます。えっと…家族で、ここには遊びに来ました。て二泊三日の間、よろしくお願いします」



次は父親の番だ。



「ボクは…えっと、そのォ…。妃莱 拓人と言います。…よろしくお願いします」



母親の梗乃の方は、しっかり者の印象を受けるきっちりとした喋り方で、父親の拓人の方は、オドオドしていて頼りない印象を受ける。


次は藍の番だ。



「オレは舞片 藍だ。オレの職業は記者で、ここには取材で来た。もしかしたらアンタ達にも取材するかもしれねえから、そしたらよろしく。ちなみに、オレの向かいに座ってるのがオレの助手。オレはこれだけ。二泊三日の間、よろしく」



この記者というのは、捜査上、本当の職業はぎりぎりまで隠しておいた方が楽だから、ということで、事前に麗華と藍の二人で話し合っておいたものだ。

だが、炉唯には本当の職業を話してしまったので麗華に炉唯の視線が突き刺さる。

なので麗華は、炉唯がいつ、

「舞片と燐野は記者じゃなくて警察だろ?」

と言い出すか、ヒヤヒヤものだ。

口止めしておくんでした…と麗華は思う。

そんな事を麗華が考えているうちに、次の姉弟の姉の方が自己紹介を始める。


「私は、來命 ラナといいます。精神科の医師で、自分の弟の担当医でもあります。弟はうつ病で他者とコミュニケーションをとれる状態ではないので、弟の自己紹介の時は私が代わりをさせていただきます。それと、先ほど言った通り私は精神科医なので、悩み事等がある方は、お気軽にどうぞ」



さわやかな印象と、眼鏡をかけているせいか、知的な印象を受けるラナ。

次は右側の最後の一人、炉唯だ。



「オレは篠原 炉唯。オレの向かいに座っている可愛い子供の父であり、その子供の隣に座っている女性の夫だ。嫌いなものは非常識で考えなしの人間。という訳でよろしく」



最後の炉唯の自己紹介が終わり、今度は左側の席の人間の発表となる。

なので次は、秦の恋人の女性の番だ。



「私は由愛有名な格闘家、遠矢 重蔵の一人娘で、私自身も格闘家です!よろしくお願いします!!」



 ー ずいぶん筋肉がしっかりとついてるなあと思ったら格闘家ですか。

こういう時も人間観察を怠らないようにする麗華。

後で報告者に記入するために、しっかりと外見と性格、名前等を頭に入れる。


 ー 次は…子供で

すか。


次は、四人家族の子供の女の子二人だ。

双子なのか、顔が非常にそっくりだ。



「アタシは妃莱 葉羅。隣に座っているのはアタシの双子の姉妹で、私が姉なの。歳は十五歳。好きな事はスポーツ。特に好きなのはテニスかな。よろしくお願いします!」



続いて双子の妹。



「私は妃莱 由宇といいます。…よろしくお願いします」



葉羅は長い髪をポニーテールにした、いかにもスポーツ少女といった感じの子。

それに比べ由宇は、物凄く地味で大人しそうな子だ。

派手な葉羅と地味な由宇。例えば、お化粧を葉羅はしているのに由宇はしていないとか、二人の服装等があまりにも違うため、気をつけて見ないと、そっくりなのが分からないくらいだ。

次はようやく麗華の番だ。



「初めまして。燐野 麗華と申します。茶道と華道で有名な燐野家の息子で、職業の方は記者である舞片センパイの助手をやらせていただいています。

センパイ同様、皆さんに取材等をさせていただく場合もあるかと思います。その時はどうか、ご協力、お願い致します。これで、私の自己紹介は終わらせていただきます」



いつも道りの堅苦しい麗華の挨拶が終わり、次はラナの弟の番だ。



「えっと、先ほど言った通り、私が弟の自己紹介をさせていただきます。名前は來命 鎖紀。歳は十五歳。得意な事はパソコンで、口で会話することはできなくてもパソコンでならコミュニケーションを取れます。よろしくお願いします」



ラナによる鎖紀の自己紹介も終わり、次は雪奈の番だ。



「初めまして。炉唯の妻の篠原 雪奈といいます。趣味は読書です。二泊三日の間、よろしくお願いします」



雪奈の今の服装は清楚なワンピースで、それが余計雪奈の清楚なお嬢様という印象をよりいっそう強くする。

最後は炉唯と雪奈の息子の羚で締めくくり。



「篠原 羚、十歳です。よろしくお願いします」



ぺこり、と

羚が可愛いらしくお辞儀する。子供好きの麗華は、羚にニッコリと微笑む。

すると羚も気づいたのか、ニッコリと笑い返してくる。

羚は何か麗華に話しかけようとするが、

その声はオーナーの高野の声によって遮られる。



「皆さま、自己紹介を私の我が儘でさせてしまい、申し訳ございませんでした。ですが、皆さまが自己紹介をしてくださっている間に料理が完成いたしました。まことにお恥ずかしい事ながら、皆さまに自己紹介をしていただいたのは、料理ができるまでの時間稼ぎだったのです。本当に申し訳ありませんでした」



高野が頭を下げる。



「では、思う存分、我が無生の館の誇るフランス料理を味わって下さいませ」



高野がそう言うと同時に、えんび服を着た従業員がフランス料理を運んでくる。

その料理は、焼き松茸のサラダ仕立てや、豚ロース肉のポワレといった豪華料理の数々。




「わあ、おいしいですねー!私、感激です!!」



麗華が料理を食べて感激する。



「いや、麗華…んな感激するほどかよ?」


藍が呆れたように呟く。



「感激するほどですよー!!私、フランス料理食べたの初めてです!」


「ウソだろ!?」


「本当ですよー。私の家元は茶道ですよ?茶道=和風みたいな感じのところに祖母が厳しかったので、洋服かぶれなものは、一切禁止だったんですよ。だから、本当に初めてです!凄く凄くおいしいです!」




一口一口噛みしめるように食べる麗華。ここまで感動して食べられれば、料理を作った人も相当嬉しいだろう。



「おいしい〜」



幸せそうな麗華に、料理をすでに食べ終わった炉唯が近寄ってきて、耳打ちしてくる。



「おい、麗華」


「ん?なんれふか?」

(ん?なんですか?)



料理を食べながら返事をする麗華。



「あのな、さっきの自己紹介の時の職業の記者って何なんだよ?お前、オレに嘘ついたのか?それとも自己紹介の時の方が嘘なのか?とにかく、もう何がなんなんだよ?」


「それはでふね…あふぃでせふねいしまふから、あふぉでわたふぃの部屋に来てくらはい」

(それはですね…後で説明しますから、後で私の部屋に来てください)


「そうか、分かった」


「んふゃ、まっふぇまふよ」

(んじゃ、待ってますよ)


「じゃあ、オレは一旦自分の部屋に戻ってからお前の部屋に行くよ」


「そうしてくらはい。…ん、ごちそうさまれひた」

(そうしてください。…ん、ごちそうさまでした)



口をナプキンで拭いて、席を立つ麗華。

炉唯の方も雪奈と羚の手を引いて自分たちの部屋へと戻っていく。

麗華は、まだもぐもぐと料理を頬張っている藍に

「先に自室な戻って、リビングの特徴等を報告書に記入しています」

と告げリビングを立ち去る。



報告

無生の館に宿泊している客の特徴等


守森 秦

年齢は二十代前半

髪は金髪

右利き

特徴は顔につけたたくさんのピアス


遠矢 由愛

年齢は二十代前半

髪は黒

右利き

格闘家、遠矢 重蔵の一人娘


妃莱 桔梗

年齢は四十代前半

髪は黒

左利き

主婦


妃莱 拓人

年齢は四十代前半

髪は茶色(ただし、地毛)

右利き

常にオドオドしている。

妃莱 葉羅

年齢は十五

髪は茶色

右利き

化粧をしているなど、とにかく派手


妃莱 由宇

年齢は十五

髪は茶色

左利き

とにかく地味

影が薄い。


來命 ラナ

年齢は二十代前半

髪は黒

右利き

精神科医

弟の担当医


來命 鎖紀

年齢は十五

髪は黒

右利き重度のうつ病

他人との直接コミュニケーションは不可。

しかしパソコンでは可。篠原 炉唯

年齢は三十代前半

髪は茶色

右利き

非常識な人間が嫌い


篠原 雪奈

年齢は三十代前半

髪は黒

右利き

清楚なお嬢様のような感じ


篠原 羚

年齢は十歳

髪は黒

右利き

ハキハキと喋るしっかりとした子。



「よしっ、できた!」



麗華はペンを持ったまま、んー、と背伸びをする。

コンコンとドアを叩く音がして炉唯の声が響く。



「おーい、オレだ。入っていいか?」



「んあ〜、どうぞー」


「んじゃ、失礼します、っと」



炉唯が部屋に入ってくる。

そして、麗華が口を開く前にいろいろと問題を投げかけてくる。



「警察官っていうのは嘘だったのか?オレを騙したのか?だったらあの警察手帳はなんなんだ?盗んだのか?もう、どうなってるんだ!!」




続く

次回は、麗華が篠原の質問責めにあいます(笑)

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