2月5日 壊れる
高田の信念は、誰よりも強いように感じた。大学進学に変更した七海や医学部を目指している矢田よりも。俺たちは、歩きながら最近できたカフェを目指した。すると、大きな交差点の信号にひっかかり、信号が変わるのを待っていた。
七海「最近、何してるの?」
俺 「うーん。大学行ったりバイトしたりかな」
俺は、七海から視線をそらせた。
七海「そうなんだ」
俺 「それより、昨日の試験は受かりそうなの?」
七海は、昨日、試験だった。本格的に勉強し始めたのは、他の人より遅いが、猛勉強してこれまでの遅れを取り戻そうとしていた。
七海「たぶんね」
俺 「凄い自信だね」
七海「自信っていうか、受かって当たり前だからね」
これこそ、七海という発言だった。
俺 「そんなに低いところ受けたの?」
七海「いやいや、レベルそこそこ高いよ」
七海がレベルの低い大学を受けるなんて考えられないから本当だろう。
俺 「それなのにすごいね」
七海「誰よりも努力したっていう自負があるから」
俺 「あんま無理しすぎるなよ」
俺は、昔のことを思い出してしまった。
七海「うん、でも頑張っちゃうな」
俺 「あの時みたいに、壊れるのが怖いんだよ」
なぜか、本音が出てしまった。
七海「‥‥」
七海が壊れたのは、3年前のこと。陸上競技大会のリレーでこけてしまってから、七海の全てが変わってしまった。当時、会場にいた後輩から連絡をもらって病院に向かった。俺が、病院に着いた頃には、号泣する七海がまっていた。
当時は、何もかける言葉が見つからなかった。ベット越しに何度も脚を叩き、頭を抱える姿が。結局、部屋に入ることすらできず、ただただ、部屋の外から眺めるのが精一杯だった。
俺 「七海がもとに戻れないなんてなるとね、なんていうか、、、」
その後の言葉が上手く出てこない。
七海「そんなことないよ」
必死に抵抗してきた。
俺 「七海がいなきゃ困るからさ」
七海「フフフ。傑がそんなこと言うなんて珍しいね」
俺 「でもさ、あの時は、ホントにね、、」
ちょうど信号が変わり歩き出した。
七海「心配しすぎだって」
俺 「そうかな?」
七海「私も、あれから大きく成長したんだから、信じてよ」
俺 「たしかにな」
確かに、あの頃の七海は、もういないと言っても過言ではなかった。