4月15日 料理
この店は、これからどうなるのだろうか?俺は、そんなことを考えていた。店内は、前回来た時とあまり変わってはいない。温かな木の香りが私たちを癒しながら、料理を食べることができる。今日、俺たちが座っているカウンターの照明は、わりと暗く設定されていたのだった。前回とは異なる場所に昔の絵画が飾られている。少し変えたのだろうか?カウンター席の一つに、俺と山本さんは陣取り、料理を待っていた。伏阪は、どう思っているのだろうか?山本さんたちが作った無農薬の食材を使うことにプレッシャーはないのだろうか?
伏阪「どうぞ、お待たせいたしました」
最初の一品は、山本さんが出した野菜だった。
山本「いただきます」
山本さんの合図につられるように、俺も声を出す。最初の一口は、緊張と期待が混ざった静寂を破る合図だった。冷たい前菜は、緑の滴が一瞬だけ宝石のように光る。シャキシャキと歯触りを確認しながら、柑橘の酸味が周りを引き締めている。なんだろうか、これは?オリーブオイルの軽い苦味が余韻を残少し。山本さんは、まだ口を開かなかった。この微妙な間を耐えることができない。ついつい、俺の方が口を開いてしまった。
俺 「とても、美味しいです」
伏阪「よかったです!先に次の料理行きますか?」
既に俺の料理は、半分くらい食べてしまっていた。伏阪は、別の料理も既に作り始めている様で、いつでも出せると言わんばかりだった。でも、ここで先に出していいのだろうか?一緒に来ていた山本さんと同じタイミングの方がいいかもしれないな。
俺 「俺も山本さんと同じタイミングで大丈夫ですよ」
伏阪「わかりました。次は、お刺身が出るので楽しみにしておいてくださいね」
俺 「わかりました」
横を見ると、ようやく山本さんは一通り口に含み満足したようだった。少し目を逸らしながら、山本さんが話すのを待った。
山本「次の料理、出してくれるか?」
伏阪はにこりと微笑み、準備を始めた。
伏阪「どうでした?お口に合いましたか?」
山本「少し、ドレッシングの味が濃いかなと思ったけど、今の若者はこれくらいの味付けがいいのかもしれないな」
伏阪「やっぱり、濃いですかね?」
山本さんが食べた感想を話し始めると、伏阪はメモを取り、頷き、時折頬を緩めた。すごいな、これだけこの料理にかけてるのか。俺たち素人ではわからない領域だった。




