4月10日 正論
ここの農園に来てから、約4年が経とうとした。初めて来たのは、俺が大学1年の頃だった。今日の山本さんはどこか機嫌が悪そうに見えた。
山本「久しぶりだな」
俺 「お疲れ様です」
山本さんは軽快に働きながら、苛立ちを晴らそうとしているように感じる。
山本「元気しとんのか?」
俺 「まぁ、それなりにですね」
何歳くらいなのだろうか?おそらく、60前後だとは思うんだけどな。年齢にしては、あまりにも若い。
山本「また、フラフラしてないんだろうな」
俺 「してないですよ」
めっちゃくちゃ若いという感じもないけど、とても若く感じる。
山本「旭は、またサッカーしとんのやろ?」
俺 「はい、戻りましたよ」
最近、旭は、こっちに顔を出していないのか。
山本「お前もそろそろ頑張れよ?」
俺 「何頑張るんすか?」
思わず聞いてしまった。
山本「それをみつけるんですよ」
俺 「頑張れるもんないっすよ」
今の俺には、頑張るモノとモチベーションがなかった。
山本「じゃあ、ここで真剣に働けよ」
俺 「えー。ここでですか?」
思わず驚いてしまった。
山本「暇だろ?お前」
俺 「まぁ、暇ですけど」
暇と言われるとなんだかいい気分ではない。
山本「ならいいだろ」
俺 「何するんですか?」
山本「今、お前らみたい若い奴らと打ち合わせしてるんだよ」
なんだそれ?
山本「それを手伝ってくれよ」
俺 「他の会社の人ですか?」
山本「ああ。なんか、そいつらが店を出すらしくてな」
俺 「店?」
何の話か全くわからない。
山本「そこで俺たちの農園の野菜が欲しいんだと」
俺 「へぇー。いいじゃないですか?」
山本「よくねぇよ。そんなめんどくさいことしたくないだろ」
俺 「じゃあ、開けなきゃいいじゃないですか?」
俺は、正論を突き返した。
山本「向こうがどうしてもって引き下がらないかったんだよ」
俺 「儲かるんならいいじゃないですか?」
山本「ムリムリ。全然儲からないよ」
俺 「わかりましたよ。手伝いますよ」
山本「それがいい。ハハハハ」
なんかよくわからないけど、手伝わされることになってしまった。いつもこうだ。約4年前のGWの時も。あの時は、本当に唐突だったな。あれから4年経つとこうなるんだから。
 




