2月3日 ゼミ
少しずつ春の気配が感じる朝であった。俺は、F棟という大学の建物の中に入っていた。今日は、大石ゼミの初回授業だった。俺以外に、7人程の学生が椅子に座っていた。一番後ろの席が空いていたので、そこに荷物を置き腰をかけた。すると、後ろから、気配を感じた。
そこにいたのは、黒髪姿の女の子だった。髪の毛は、ちょうど胸近くまで伸びている。まるで、フォンデュで流れるチョコレートのような髪だった。耳にはピアスを空け、体に小さなカバンをみにまとっていた。優しそうな顔立ちで目はパッチリ開いていた。
女の子「北條さんですか?」
小さい声ということもあり、よく聞き取れなかった?
俺 「ん?」
女の子「北條さんですよね」
女の子は、確信したように聞いてきた。
俺 「うん。誰?」
すぐに聞き返した。
女の子「覚えてないですか?」
俺 「いや、全く」
こんな子いたかな?
女の子「えぇ、ひどいですよ」
俺 「て言われてもわかんないしな」
見た目通り、カジュアルな話し方だ。
女の子「じゃあ、ヒント出しましょうか?」
俺 「うん」
女の子「ヒントは、3年生です」
3年生か。でも、敬語を使ってるし、どういうことだろう?
俺 「うーん?」
女の子「まだ、わからないですか?」
俺 「わからないな」
女の子「じゃあ、後で話すんで名前思い出してください」
ちょうど、話を始めた時、大石先生が入ってきた。俺たちは、話をやめた。先ほどの女の子は、俺の斜め前に座った。あんな子、会ったことあるだろうか?俺はよくわからないでいた。大石先生は、挨拶をするなり、プリントを配り始めた。
ここは、経済学部のゼミだ。前から、回ってきたプリントを読んでいると、3月にゼミ合宿を行うということが書いてあった。これに行くと、まためんどくさいことが起きる予感がしていた。
このゼミは、2、3年生合わせても10人程度。だから、周らの奴らもなんとなく名前はわかる。でも、斜め前にいる女の子の名前だけはどうしてもわからなかった。大石先生は
パソコンを今から、取りに行くため、その間にゼミの出欠を考えるように指示された。しかし、そんなことはおかまいなしに、さっきの続きについて話しかけてきた。
女の子「思い出した?」
俺 「わからないな。ホントに知り合いなの?」
女の子「知り合いだよ。失礼だな」
俺 「だって、わからないし」
その後、聞かされた名前は、あまりにも衝撃的で驚いてしまっていた。