3月26日 高校時代29
桜が先駆けている。場所によっては、もう満開なのだろうか?俺は、天気予報を見ながら明日の天気を考えていた。明日は、曇りのち雨かぁ。まぁ、雨でも晴れでも室内にいるから、そんなに関係ないか。そんなことを思いながら、窓の景色を見つめていた。
ー3年前 11月5日ー
先生は、ゆっくりと去っていく。俺は、何も言葉が出ずただ黙っているのが精一杯できるかとだった。扉が閉まるとともに、鈍い音が室内に鳴り響いた。どういうことだよ?なんなんだよ。えっ、俺が?もう走れないなんてそんなことあるのかよ?ねぇよな、そんな。俺は、頭の中を整理する。けど、いつものような平常心でいられない。心の鼓動も早くなる。
目の前の天井すら見たくない。俺は、腕で目を隠した。腕を顔に添え、涙で濡れた瞳をぬぐう。拭いても拭いても止まらない。なんだろう、この感じは。俺にとって走ることは日常のはずだった。その日常がなくなると、俺はどうすればいいのか?大学は、どうするんだ?
時間が経つにつれ、涙が少しずつ収まっていくように感じた。俺は、なんとか深呼吸を繰り返し落ち着かせた。とてもじゃないけど、この悲しみから立ち上がることはできない。こんな姿を見られたら、俺はどうしたらいいかわからない。みんなは、何をしているのだろうか。さっきまで、脇谷や井端たちといたのに。アイツらは、ここに来てないのか。まぁ、俺にとっては来てない方がありがたいんだけどな。部屋の静かさを感じながら、俺が怪我した場面を振り返っていた。たしか、あの時、庇おうとして俺が怪我をしてしまった。それでで、間違いなかったっけな?もし、先生のことが本当なのであれば、俺はさっきの場面を何度も何度も振り返るのだろう。
こうなるのであれば、最初から遊ばなきゃよかったし、走ることなんてしなければよかった。俺の心の中には、深い絶望感が広がっていた。もう嫌だ。何もかも。全てを投げ出そうと思った。すると、俺の悲しみを一瞬にして打ち破るような音が、室内に響き渡った。そのノックは、まるで自分にとって悲しみを助長するような合図だった。静まり返った病室に、その音が生命を吹き込むかのような悲壮感だ。ノックの音が消える間もなく、ドアはゆっくりと開かれる。その狭い隙間から、外の光が病室内に差し込んでいた。それはまるで地獄への入り口の様に感じた。室内に入ってきたのは、脇谷と井端と山瀬の3人だった。




