3月1日 高校時代4
5区を走り出した宮田は、序盤から突っ込んで走る。走り出して2kmの時点で、すでに7人を抜いていた。チームのエースとはいえ、さすがの走りだ。そして、3kmを終えた頃には、さらに4人を抜き、ついに9位まで順位を押し上げたのだった。
宮田は、途中から、片桐という群馬県の高校の選手とずっと並走していた。俺たちは、ゴール地点からテレビ中継を聞きながら、宮田が戻ってくるのを待っている。テレビ越しに映る宮田は、とても楽しそうだった。普段は、冷静で俺たちともあまり話さない。黙々と練習を重ねていき、毎レースで結果を出していた。
たしか、あの日は、宮田が走り出して10分程経った頃に、小雨が降ってきたのを覚えていた。最後のグラウンド周回コースでは滑ってしまう選手もいたくらいだった。宮田は、雨が降ってきてからもスピードが落ちることはなかった。まっすぐ、一歩一歩進んでいく。最後のグラウンド周回コースの時点で6位まで、順位を押し上げていた。
宮田によれば、途中の給水ポイントで並ばれたことを聞いた。並走していた彼は、現在、旭がいる城南大学の陸上部に所属していた。高校では、敵なしで1万メートルの記録も持つくらいだった。あの宮田も彼のことは"天才"と崇めていた。
そして、最後のグラウンド周回の時に二人の勝負が始まった。入ってすぐに、片桐が宮田を抜き去るが、宮田も第ニコーナーあたりで再び抜き返す。しかし、高校敵なしの片桐も意地で追いついていく。まさに、意地と意地のぶつかりあいという感じだった。
最後は、宮田がゴールして勝つことができたが、後ろからきていた片桐が区間賞になった。後々、話を聞くと、片桐は、なんと25番目からのスタートだったらしい。20番目スタートの宮田とは、約50秒の差もあっとか。宮田は、区間2位の記録だっただけに、いかに片桐が凄いのかがわかる。
走り終えた二人は、何かを話していたみたいだった。一方で戻ってきた二人を出迎えていた俺たちは、念願の6位をみんなで喜びあった。あの日以上にはしゃいだいたのは後にも先にもない。それだけ嬉しかったんだろうな。
俺は、走り終えた宮田と握手をしあい、お互いの健闘をたたえあった。宮田からは、いくつかの学校からスポーツ推薦がきていたことを聞いていた。その中で、最も成長ができそうだと思えたのが城南大学だったらしい。当然、卒業して以来会ってない。だから、彼が今、何をしているかはわからない。
 




